訓練
宜しくお願いします
鹿を倒してから3日くらい経った。
景色から見ても半分くらいは、進んだだろう。
やっぱり転がりながら進めることもそうだが、このぷにぷに、まるまるボディは、登山に向かな過ぎる。
今にして思えば、いくらなんでも、アイツが言ってた一カ月はかかり過ぎだ。たぶん記憶違いか、普通に落下して登っての繰り返しのどちらかだろう。
狸はあの後も良く遭遇した。コイツらどんだけいるんだよって感じだけど、あの鹿と戦った後では、もう緊張しなくなってた。
鹿は今、思い出してもブルッてなる。しかしアイツの電撃魔力を吸収してから体が絶好調だ。4倍位まではデカくなれるし、今までは、物を掴むというより、体内に絡めてるって感じだったが、掴めるようになった。
だから木登りも枝まで伸びて、掴んで、縮むって感じで出来るようになった。 だけど、子供体型は、まだ変われなかった。手足を出そうとすると維持出来ないんだ。
今日までは、体の変化に意識がついていかなかったが、だいぶ慣れてきたので、今日から転がる移動をやめようと思う。そもそも森の中で転がるってのが、非効率過ぎるっ……て話なんだよな。
今日は、さっきの木登りの要領で、木から木へぶら下りながら移動しようと思う。
それっ!
おっ、良い感じ。某映画ヒーローになった気分だ。
しばらく、進んで気づいた。これは、周りの気配を察知するのが難しいな。どうするか。
次は飛んでみるか。
木のてっぺんまで登って、一段下の枝を掴みながら、木々の間に飛ぶ。 自分の体がにょーんと伸びて地面に着きそうになったところで、枝の方に引き寄せる。
バサ、バサッと葉っぱには当たる
勢いよく飛んで行くつもりが葉のせいで思ったより勢いが弱かった。それでも体をいつもより小さくして、空の旅はなかなか良い。
スライムボディは、痛みが無いから、怖くもないな。
気持ち良く空を飛んでいたら、何かが俺をかすめていった!
うぉぉー、危なかった。
かなりの大きさの鳥だ。
俺の知る鷲とかよりもずっと大きい。
アイツがもう一度こっちに来たら食われる。
空中を勢いで飛んでるだけの俺は、回避方法が無い。
小さいままだと一口で食わてしまう。
慌てて元の大きさになるが、まだ相手の方がデカい。
どうする。どうする。
さっきの鳥がぐるーと回って、こちらに再び突撃する構えだ。
俺は体をタオルのようにペラペラに広げて、空気抵抗で降りようと考えた。
鳥は俺の体が変化しても驚くことなく突っ込んでくる。
鳥起こす気流に巻き込まれて、俺の体は思わぬ動きをするが、おかげで鳥の攻撃は避けられた。
ただ降りるどころか風に乗って思わぬ方向へ流されていく。
くそっー。
避けれたのは幸いだけど、風に対して踏ん張れないからペラペラ体が捲れるだけだった。
風の抵抗増やすどころか減ってるじゃん!
ど、ど、どうするよ。
元の体型に戻しつつ考える。
謎の鳥がこちらに向かって突っ込んでくる。
焦るばかりで何も思いつかない。
よし、もう困った時はコレしかない!
俺は鳥が突っ込んでくる直前に再び、タオル状になって広がり、全身に粘着液を出した。
鳥の羽に貼り付き、鳥が急降下を始める。
おぉ、鳥の重さで、落ちてく。
何も考えてないけどラッキーだね。
考えたほうがうまくいかないってなんなのさ……
地面に落下したが鳥は生きていた。とはいえダメージがあるのか、飛び立つ気配もない。
そのまま包んでゆっくりと頂く。
ありがとうございます。
なんだかんだ粘着液が優秀過ぎないか?
もっと使いこなせば凄いこと出来そう。凄いことって何?って聞かれてもわからないけどね。
しかしさっきの鳥はデカい以外、普通だったな。
この世界の生物は、みんな特殊能力があるんかと思ってたわ。
しかし飛ぶにしても、低空飛行出来ないと危険だな。それとさっきの風に流されたせいで、かなり山から離れたっぽいなー
とりあえず木に登って、山を確認。
遠っ!!
なんてこった。
移動は早かったけど、むしろ目的地から遠のいてるじゃねーか。
はぁ〜
やっぱり地道に転がるしかねーか。
コロコロ、コロコロ。
今日こそ、違う移動手段を見つけたかったのになー
コロコロ
なんか他に出来そうな事は無いかなー
とりあえず震えたら声みたいにならないかな。
ボーー、ボーー。
なんか思ったより低音が出た。
しかもここからどうやって発音に変えたら良いかまったくわからない。 うん、ダメだ! 次だ!
タオル状に成れるなら、網みたいになったら、もっと色々出来るのでは。
まずはタオルのようになってみた。ここから網……。これ陸地でやると薄すぎてそもそも立ち上がれないじゃねーか!
空が駄目なら土の中に逃げるのもありじゃね?
ドリルになれるなら逃げれる、火力も出せる、完璧だろ。どうよ。
少し土を少し掘ってドリルが刺さる形を整えよう。
プニッ。
くっ、気合いを入れろ。
プニッ、プニッ
駄目だ、掘れる気がしない……
体を硬くするイメージだ。
プニッ
ダメだ、一生掘れないわ。コレ多分、形だけドリルになっても掘れないな。この愛されボディめ!
俺はなんとなく石を拾った。こ、れ、だ。
石を足元に置いて体を雑巾を絞るように捻る。
解放!!
プルルルルルルッ。
フィギュアスケーターのような回転が出来た。
満点でしょ、ってちがーう!
まったく埋まらなかった。
石にドリルの刃のようにって思ったが、冷静に考えりゃ、その場で回るだけで掘れるなら、アイススケーターは、全員埋まってるな……。
仕方ない……進もう。
俺はとても残念な気持ちで石を拾いながら転がり出した。何故、石を拾ってるかって? そりゃあなんとなくだ。
石が10個くらい拾ったところで、重くなってきたので、吐き出した。
プッ
うん、コレ武器に出来るんじゃ……
イメージは、スリングショットだ。バンド状のところへ石をプッと吐き出し、体の弾性を使って飛ばしてみる。
バキッ!
おぉ、木の幹が、抉れる程度の威力はあるな。
でも準備に時間が掛かる上にこの威力じゃな……
スリングならイケるんじゃないか?
俺は手のようなものを伸ばし先に石を持つ。
グルグルと手を振り回し、石を投げる。
バキッ!
おぉ木に石が埋まったよ。でも狙った木よりだいぶズレたな。
方向性に難有りと――これなら練習すれば、遠距離攻撃としては充分使えるだろう。
でもそもそも移動方法だよ。
石投げても進めない!
そうだ!
バネになれば飛び跳ねながらの移動で早いのでは?
俺は体を再び捻りながら、バネになったつもりだ。
……
どうやってバネになるんだ?
体を捻っても絞った雑巾にしかなれねぇ……
イメージ出来ても、自分の体をどういう風に変化させて良いか全然わからんな。くそー!
跳ねるもの、跳ねるもの、ピンポン玉、トランポリン、スーパーボール、バランスボール、なんの参考にもならん。
俺がもっと賢ければ……
言ってて悲しくなってきた。
いや、スリングで投げるのが石じゃなくて、自分を投げれば良いのでは!?
グルグル、グルグル、ポイッ
ポテッ
すぐ近くに自分の手が、ビローンって感じで落ちた。
飛ばした手に対して、本体が動いてないから意味がなかった。
だが難しいけど、行けそうな気がする。ようは飛ばした先に自分の体を流し込む感じだ。
グルグル、グルグル、ブンッ! ビローン
くっ、投げてから体が引っ張られるまでに体を流し込む時間が足りない。
今度はグルグル回しながら、先に本体を少しづつ移していく。
グルグル、グルグル、グルグル、ボトッ。
うん、やると思った。
本体を早く移しすぎて、投げる前に落ちてしまった。
今度こそ。グルグル、グルグル、グルグル、ブン!
おぉ〜、飛んだ〜。
でもコレ多分……ビタッ!
木にぶつかりました。
ですよね。
こうならないために木の上から飛んだんだし、上に向かって投げれば飛べるだろうけど、それなら木の上からの方が距離稼げるしな。
やはり移動には、足が最高か。スライムよ、何故こんな進化をしてしまったのか。
いや、それを言うなら人間の感覚のままスライムってのが無理あるんだよ。
足をくれ〜、足を〜
足がなくてもな速い生き物っていないよな〜。いっそ一人でキャタピラみたいなのが、良いか。
ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロ
違うな。そもそもコレ多分早くするための発明品じゃないな。安定するけど、速くならないわ。
移動は、一旦諦めよう。
俺が苛立つ以外は一応問題無いしな。
後は戦いのためにも、何か練習しておきたいところだが、最初の狸はどんな特殊能力があったんだろ。よく考えたらアイツこそ角生えてるだけじゃねぇか? よく森で生存競争勝ててるな。
でもコウモリの粘着液みたいに、密かになんか覚えてると良いんだが、アイツいつも、ほぼ戦わずに済んじゃってからな。 今度会ったら尾行してみるか、
鹿は、電撃か、出せたら便利そうだけどな。
フッ! ハッ! グヌヌヌヌゥ!
…………
うん、ただの怪しい奴だな。電撃はまだ出せないのか、出し方があるのか、わからんがいったん忘れよう。
後は、さっきの鳥。
アイツも良くわかんないな。
そもそもスライムの生態もわかんねーんだよな。鳥ばっか食べれば、最終的に羽が生えたりするんだろうか。
うーん、今後の戦いの方針をどうするか〜
スライム防御力が紙だからな。
火力全振りで、足も遅いとかどれだけ尖ってんだよ。
そもそも自分の攻撃で、敵が弱点の側に来るって進化の方向として変だろ。
愚痴っても仕方ねぇ。
とりあえず急ぐ時は、ぶら下り移動。警戒中はゆっくり転がって、ヤバい時は飛んで退避だな。
成長の方向が、全然安心出来ねぇな。先が思いやられる。
〜
とりあえず今回は、スリングで遠距離攻撃覚えたってことでいいか。あまり出来ないことを考えて落ち込むも馬鹿らしいからな。
どうせ俺はスライムとして、この世界で生きていくしか無いんだ。
うーん、執筆の難しさを感じ始めました。
やはり、何事もやってみないとわからないもんですね。
これからも楽しんで書けるよう頑張ります