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やわらかい侵略  作者: 新 絆
スライムの世界
6/18

閑話 どうしたらいいのか

閑話なので、ストーリーに影響はありません。興味が無ければ飛ばしてください。


夜には次話投稿します。

 私は、少し前に子供を作った。

 私達スライムは、雄も雌も無いわ。

 でも性格は、雄や雌らしい性格ってのがあって、子供を作るのは、だいたい雌らしい性格の子達なの。

 

 初めての分裂は少し不安だったが、友達も一緒にしてくれるということで、頼もしい気持ちを感じながら分裂した。


 分裂が終わると、私達は、子供達の自我が目覚めるのを待つため少し離れたところで、子供達を待つ。


 ベテランスライムに聞いたところ、自我があるとはいえ、最初の頃は、自分と似た性格になるし、最初から自分の分身が誰かわかってるみたいだから不安になる必要は無いらしい。


 自分と違ってくるのは、念話を覚えてからだそうだ。


 ウチの子は、今日生まれたスライムの中では真っ先にコチラへ向かってきた。この時から少し違和感はあった。本当に私に似てるなら、不安で動かなそうなのに真っ先に動いてる。


 でも、私の所に来てくれた。きっとお母さんという感じで、くっついてきたのだろう。やっぱり私の分身ってことはわかってくれてるみたい。ホッとした。私は、喜びを伝えるためにお返しにぶつかった。


 これから私はこの子が一人で餌を獲れるようになるまで、面倒を見ないといけない。


 助産係のスライム達が、天井から餌を与えている。

 ウチの子は、コウモリ一匹食べても、目が開かない。


 そんな、まさか、目が……泣きそうになると、ウチの子は、もう一匹食べた。

 これには驚いた。 子供は、一匹でも吐き出すのが普通なのに、ウチの子二匹も食べてる。


 あっ、目が、目が開いた! 良かったよ➖

 また泣きそうになる。けどここは我慢だ。変にこの子を不安にさせてはいけない。


 うーん、でも、私の子供の割に目がキリッとしてない? というか凄い、目を動かしてる。大丈夫なの?子供の目覚めってこんなにキョロキョロするもの?


 ちょ、ちょ、ちょっと!

 どこ行くの!?この子、向こうが巣の外ってわかってるのかしら? ちょっとヤンチャが過ぎない? 全然私の分身じゃないわ……いえ、分身なのは、確かよ。


 今のは良くないわ。ちょっと初めてのことで、動揺しすぎよ。

 しっかりしなさい、私!


 とりあえず、助産係の方たちが止めてくれたわ。

 それにしてもこの子、まだ大きくならない。

 なんでなの? 魔力は充分食べたでしょ。

 

 再び天井から餌を落としてくれた。

 

 あぁ、大きくなってないから、まだ餌をあげてないと思ったのね。その子もう二匹も食べてるから流石に吐いちゃうと思う……食べてるわ……ホント、なんなの?

 三匹なんて私でも無理よ。一体どこに魔力消えてるの?


 とりあえず体が大きくなってくれて良かったわ。


 ホッとしてたら、また外に向かってるわ。

 もう大きくなったから、誰も止めようとしない。止めたいけど、私一人では無理だわ。なんとしても守らなきゃ。


 あの子ホント何してるのかしら、ゴソゴソしてたかと思ったらもう戻ってくるわ。外が見たかっただけ?

 

 戻ってきてすぐに、なんで壁に登ろうとしてるのよ、早くない?それに疲れないの?

 そもそも先に念話を覚えるのよ。もしかしてもう使えるのかしら?

 私は、触れて話しかけてみる。

「聞こえるかしら?」

 聞こえてなさそうね。

 仕方ない。私は子供にわかるように壁に登る手本を見せた。


 やっぱり登れないわ。

 ボトッボトッ落ちてる。かわいいわね。


 それから、あの子はますます、意味不明な行動を取り始めたわ。急に回転し始めた時は、何かの病気にかかったのかと心配したけど、その後の移動の速さには、顎が外れそうなほど程、驚いたわ。

 私達でもあんなに早く移動できるのね。


 その後もあの子は、一人で体をグニャグニャさせて何をしたいのかさっぱりだったわ。


 私はあの子が念話を覚えるまで、餌場の餌を補給しなきゃいけないから、ずっと側には入れなかったけど、餌をとってきた後もグニャグニャしてた時は、さすが呆れたわ。

 何が楽しいのかしら。


 あの子を餌場に連れていった時も困ったわ。初めての時は、私から逃げようとするし、餌場に着いたら五匹も食べたの、五匹よ! あの時は、補給係の皆の冷たい目が痛かったわ。おかげで次の日から私はより多く捕まえなきゃいけなくなったし、ますますあの子との時間が取れなくなってしまった。


 あの子と会うのは、もはや餌場に呼ぶ時だけになってたけど、なかなか念話を覚えないお陰で、会えない時間は埋まってた気がするわ。


 「ご飯よー」、「お母さんが会いにきたよー」って、毎回声をかけても、全く話せるようにならないあの子を見て、私も相当不安だったわ。


 狩りの方もいつか、失敗しそうで、あの子が念話を覚える前に消えちゃったらどうしようかと。


 ある日、あの子が狩りについてきてた時は、嬉しかったわ。凄い魔力を放ってるから、見つかって襲われてた時は、心配したわ。だからもうついてきてほしくはないけど、きっと寂しかったんだと思うの。

 だからもっと私も頑張ろうと思ったわ。


 あの子は食べる量がどんどん増えていくから、もう1日のほとんどを狩りに時間を取られるようになってしまった。

 仕方がないので、友達に壁登りをしようとしたら、それとなく手伝って欲しいとお願いしといたわ。

 その頃私の友達の子は、もう念話を覚えて独り立ちしたの……

 

 

 それにきっと突然、私以外のスライムが寄ってきてビックリしてると思う。

 いや、あの子は……ううん、してるわ!

 私の子だもの。


 でもあとで友達に会ったら「壁登り出来てた」って言われたの。

 なんでよ!

 昨日まで全然だったじゃない!

 うう……、初めての壁登り見たかったわ。


 それと謎のタワーを作ってたって聞いたの。

 それも見たかったわ。

 謎のタワーって何よ。どんな遊びなのか気になるわ。


 ゴホン、とにかくあの子は念話は出来ないくせに他の事はどんどん出来るようになるのはなんでかしら?

 普通は、念話で教えてもらいながら覚えるのに。


 でも、この位まではまだ、私も安定してたのよ。

 ただ全然念話覚えてくれないんだもんだから、不安が限界を超えてきちゃって。


 さらに日が経つに連れて、不安が募ったわ。

 新しい子がどんどん念話を覚えていくのに、あの子は覚える気配もない。

 

 あの子が満足出来るように多くの狩りに参加してたから、可愛がったり、面倒見たりも出来ない。


 私は、狩りに参加してる意味がわからなくなってたわ。

 友達にもたくさん心配されたの。

 代わりに狩りに参加してくれるって言ってくれたこともあったわ。


 でもね、会うのが少し怖くなってたの。

 私の分身のせいで、念話が出来ないのかもしれないと思うと、申し訳なくて……


 餌場に連れてく時も、もう「ご飯よ」くらいしか言えなくなってたわ。

 

 ぐすっ……

 本当にもうどうしていいかわからなくて、友達にも、ベテランの方に聞いてもこんな事無かったって言われて、ついに、私はあの子に、当たってしまったの。


「なんで、あなたは、話してくれないの!」

「なんで、私の声を聞いてくれないの!」

「なんで、念話出来るようになってくれないのよ!」って泣いたの。叫んだの。


 でもそしたらあの子が「えっ?」って驚いた顔してたわ。あの子の驚いた顔初めて見たから、涙引っ込んじゃって、思わずブンブン首を縦に振ったわ。


 そしたらあの子は、急に何かに納得した顔になって、いつも通り餌場に向かったの。

 もうっ、本当に怒ったわ。

 どんだけ、心配してたと思ってるのよ。

 喜びなさいよ、もっと私に話しかけなさいよ!

 あの子は、ただ困り顔になって苦笑いしてたけど、あぁちゃんと通じてるってわかって、本当に嬉しかったわ。


 それから私に声が聞こえるまで、数日掛かったの。

 遅くない? 普通こっちの声が聞こえたら、あっちの声も聞こえると思うんだけど!

 絶対あの子、私に一生懸命話しかけなかっただわ。変な子だもの。


 ようやく遠話にも参加出来るようになって、餌場の狩りから解放されたわ。でもそれは、あの子の面倒を見るのも終わりってこと。

 あんなに嫌だったのに……

 辞めたくないと思うとは思わなかったわ。


 私は、最後の餌場に連れて

「今日が、最後なの。明日からは自分で餌をとってきなさい。明日は、しきたりを教わる日だから広場の近くにいて声がかかったら広場に行くのよ」

 って、独り立ちの教えをしたわ。

 悲しかったけど、泣くのを我慢して餌場から出ていくのを見送ったの。



 そしたらあの子、次の日に、普通にきて

「お世話係って何?」ですって。

 みんな、係は割り振られるけど、お世話係って何よ?

 私も聞いた事ないわよ!

 なんで……独り立ちしてからも心配させるのよ……


 本当、どうしたらいいかわからないわ……

スライムって性別無いと思うんで、結構親の描写悩みました。でもやっぱ感情移入するのに性別っぽさが合ったほうが良いかなと思って書きました。

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