誰も言うことを聞かない
完全に投稿忘れてました。すみません。
甚平に先導されて俺達は村の前まで来たが、ずっと視線を感じる。どうもさっきの猫か仲間かわからないが、監視してるみたいだ。
俺達の目の前には、土壁の塊がそびえ立っていた。
これは村って言うのか?
この壁は城壁というのでは無かろうか?
いや、それよりも土でこんな積み上げて崩れないものなのか?
土壁はかなり高く3mはありそうで、何で固めたかわからないが、やや白っぽい感じでデコボコしている。
「凄いですね。こんな壁の巣を私も作ってみたいです」
「本当に凄いね。こんな壁が作れるなら洞窟じゃ無くても住めるかもしれないね」
フィリアとメリーは凄い興奮してる。確かにスライムは雨風を凌ぎたいわけじゃないし、洞窟である必要はない。でもハンベエ達と共存するなら家は必要だろう。
壁の中はどうなってるのか……俺もドキドキしてるな。
「甚平! そいつらは何だ! オマエまさか裏切ったんじゃないだろうな!」
壁の上から怒声が聞こえてきた。最初からこんな険悪な感じなのか……
「違いますよ! 襲われてるところを助けてもらいました」
「そうか! それは良かったな。それで? 食料は手に入れたか?」
門番のネズミは、仲間が助かったのに全然喜んでいるようには見えない。後ろからでは甚平の表情は見えないが、項垂れている様子から困っているんだろう。
「いや……逃げている間に落とした……」
「ではもう一度探してこい!」
なんだ、この門番は……城壁の上だし、門番ではないのか?まぁいいや。とにかく随分偉そうだな。門番の癖に着物みたいなの着てるし、命令してくるし、腕組んで仁王立ちって――門番ってこういうものか?
「甚平、なんで命令されてるんだ? アイツは偉い奴か?」
「いえ、そういうわけではないのですが……」
やっぱり甚平はどこか悲しそうだ。なんか事情があるんだろう。それにしても上下関係がある訳でも無いのに命令とか村のカーストみたいなもんか?
人間じゃなくても知恵があれば、やっぱりこういう奴って湧くんだな。
「なぁー? 俺達を中に入れてもらえないか? しばらくここに滞在したいんだ」
「許可出来ん! 甚平が連れてきた者など不審者同然だ。許可するわけにはいかない」
「わかった、じゃあ俺達は入らない。でも甚平は村の住人なんだから入れてやれよ!」
俺は諦めて違う目的地を考えることにした。そもそもどうしても滞在したいわけじゃないし、あの門番をみたいな奴が居るとなると滞在しても苦労しそうだ。
「すみません。俺のせいで……」
甚平から呟きが聞こえた。
甚平は明らかに肩を落として罪悪感を感じてくれているようだが、別に甚平のせいだとは思わない。
「甚平は食料調達の責任がある。食料を持ってくるまで許可出来ん」
「襲われたって言ってるだろ? 逃げるのに体力も使ってるし、本来は一人で調達するもんでも無いだろ! 中に入れて調達出来るように体制を作れよ」
「よそ者に指図される覚えはない。さっさと去れ!」
このクソ門番……確かに事情は知らねぇが、せっかく助けたのに、また襲われるかもしれない状況を無視できる訳ねぇだろ!
「てめぇ……」
一言文句を言おうとしたら、カンカンカンと金物を叩く音が村から聞こえてきた。
「警戒音! どこから……」
「ソラ! ナニかクル」
甚平が叫ぶと同時にハンベエも後方を指差して警戒を知らせてくる。後ろを見ると確かに何かが向かって来る。
「さっきの猫種みたいなのが来てるわ」
フィリアの声が頭上から聞こえてきた。アイツさっきので諦めたんじゃ無かったのか? 襲う気があるならさっき逃げずに襲えば良かったと思うんだが。
「あっし達が村に入れないと気づかれたみたいです」
震える声の方を見ると甚平の顔が青ざめている。
「ソラ、左右からもキテル」
なるほど、確認されてる三人で襲いに来たのか。確かに城壁のせいで3方向から来れば逃げ場は無いな。
「ソラさん達は逃げてください。おそらくスライムは襲わないと思います。ここにいると巻き込んでしまいます」
「いや……「大丈夫です。ソラがそんなこと気にする筈がありません。任せておけば問題無しですよ!」」
大丈夫と言おうとしたんだが、フィリアに盛大に被せられた……そもそも防衛蟻の時は率先して助ける感じでも無かったと思うんだが、なんでこうなった?
「コホン……「ソラ、オレは右にイク」」
グッ……また被った。
「じゃあ……「じゃあ、ペコリ左のもらーい」」
……
もう好きにしてくれ。
俺はここで待機してよう。どうせ甚平を守るのは変わらないんだ。
「皆さんありがとうございます。ではあっしは正面の猫をひきつけて時間を稼ぎます」
「ちょ、ちょっと待った。甚平が動くとこちらも振り回される。ここで待機してくれ」
まったく――全然思い通りにならない。さて待ち構えるにしても猫動きが速いからな。どうやって止めるか。
「メリー、甚平とフィリアを任せていいか? 俺は正面のアイツを追い払うよ」
「大丈夫だよ」
メリーが請け負ってくれたので、フィリアを渡らせるとフィリアが軍人みたいになってた。
あの装備って女王蟻でも作れるの?
まぁフィリアは女王らしいことしてないから良いのか。
俺は体をグルグルと振り回して、上空へと飛び出した。
空から襲えばビビって逃げると思うんだけどどうかなー
地上を見るとハンベエと猫が接触するところだった。ハンベエは蹴りで迎撃してるようだが、猫も機敏に避けて先へ進もうとする。
ハンベエも即座に切り返して後ろから再び蹴りを繰り出してる。一進一退な感じだけど、猫が突破するにはハンベエを倒さないと無理そうだな。
一方でペコリの方は姿が見当たらない。相変わらず神出鬼没な奴だ。このままだと猫が甚平に辿り着いてしまう。甚平との距離が半分くらい縮まった所で、猫が急ブレーキした。
なんだ?
猫がキョロキョロしてるようだが……猫は突然ビクッと体を反応させると急に反転して逃げた。猫がいた場所にペコリか姿を現す。
アイツ……完全に消えてるじゃん。でも猫に気づかれてるのは、殺気と言うより食欲に負けたペコリの視線に気づいたからじゃないかな。
ふふっ、笑えてきた。
さて俺ももう少しで猫に飛びかかれる距離に近づけた。地上を見ながら紙飛行機型で、背後から忍びよる。
警戒心が強いのか、俺の追う猫も後ろを気にしてるが、流石に空からとは思ってないだろう。
「今だ!」
俺は猫の目の前に現れるつもりで飛び込んだ。
猫は気づいて横飛びで避けようとするが、俺は体を伸ばして絡めとる。なんとか猫の体半分くらいを包み、そのまま捕獲した。
ジタバタと暴れる猫だが、体半分を掴めば流石に逃がすことは無さそうだけど……何故が食べようと思えないんだよな。
「暴れないで。君は話せるかい?」
猫は体をビクッとさせ毛が逆立った。
「アンタ、スライムなのに話せんのかい?」
そうだった。
そもそもこっちが話せないと思われるってことを忘れてた。
「話せるよ、練習したからね」
猫は俺の体をぷにぷにと叩きながら聞いてきた。
「それでアタイを食べる前に何が聞きたいんだい?」
「いや、逃しても良いよ。あそこのネズミを諦めてくれるんならね」
……少し沈黙が続く。
うーん、自分の体に埋まってるから表情が読めない。食べられるかも知れないのにそんなに悩むようなことなんだろうか。それとも猫は賢そうだし、騙す方法を考えてたりするのかな?
「アンタは、あのネズミとどんな関係なんだい? あの村に住む気なのかい?」
いや回答してよ。
「村にはさっき断られたから無理かなー」
「ふーん……良いわ、諦めてあげる。でも今だけよ。そもそもネズミの区別なんてつかないわ。だから一度、離れたらあの子だけ見逃すなんて器用なこと出来ないわ」
なるほど、猫から見るとネズミはみんな同じに見えるのか……捕食関係があるとそういうもんなのかもしれない。
甚平達が猫の区別がつくのは服のおかげか?
猫達は中華風な半袖のシャツみたいなのを羽織っている。今捕まえている猫は青だが、左右の猫は赤と緑だった。
野生でそんな目立つ服は、問題ありそうだが……
「まぁ、それでいいよ。君達もどこかの村とかに住んでるの?」
「アタイ達は一人で過ごすの。他の人が近くにいる所なんかで寝れないわ」
その割には三人で行動してるみたいだけどな。
「そう、とりあえず離すから監視せずに遠くへ逃げてね。せっかく逃したのにまた捕まえる事になるのも悲しいから」
俺は掴んでいた体を離すと猫にぷにぷにと叩かれて離れていく。ある程度離れたところで、ふっとこちらを向いて話しかけてきた
「アタイはアズール。山猫族。アンタは?」
「俺はスライムのソラだ」
「そう。ソラね。また会いましょう」
凄い笑顔でそう言われた。
次会う時って、また戦わなきゃ行けなくなるんじゃ……とは聞けなかった。




