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やわらかい侵略  作者: 新 絆
森の世界

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刻む者、刻まれた者


 湖の毒素は消えたものの、湖の周辺に広まった毒素はそのままなので、辺りの様子をみんなで見回すことになった。


 思ったより広範囲に広がっていて完全に解決することは難しく、数日の間は様子見のために湖の側で過ごした。


 時間が経つにつれ、毒素は薄まっているようなので、完全な解決は時間の問題としてフォスティ達と合流することにした。


 戻ってみると足に異常が出ていた川蜥蜴(スピュタリル)族の彼は、既に回復していて、ハンベエと3人で槍の訓練をしていたらしい。


 安全な場所に避難してもらってたはずなのに、何故かフォスティとハンベエの二人はボロボロだ。


「無事に戻られて良かった。俺達の問題なのに全て任せてしまって済まなかった」


 フォスティは深く頭を下げてきた。

 その目は本当に感謝していると強く訴えかけてきた。

 

「近づいたら身体がおかしくなるんだ。仕方ないことだよ。湖の魚はかなり死んでいたけど、これから水は綺麗になると思うから安心してくれ」


 フォスティは笑顔で頷いている。

 フォスティの顔はいままで、どこか険しい感じがずっとしてたけど、初めて素顔を見た気がした。


 それだけ種族の危機を感じ続けていたんだろう。ただ……こちらの湖には、化物みたいなスライムがいるんだが、伝えられなかった。


 みんなで元の湖へ戻ることにしたが、湖の周りは毒素が残っているので、帰りも陸地で歩いて戻る。


 それにしても俺は巣を守るために知識を得よう旅立った訳だけど、湖のスライムと仲良くなって湖に住めば解決では?と思ったんだが、メリーに呆れたような顔された。


「僕達はそれでも生きていけるけど、他のスライムは、湖を泳げないんだから、そのうち食べるものが無くなるけど?」


 確かに!

 自分基準で考えすぎてたー


「それにハンベエ達はどうするのさ? 見捨てるの? やっぱりソラはもう少し考えたほうがいいよ」


 おっしゃるとおり!

 スライムしかイメージしてなかったよ。

 ハンベエ達は住めないじゃん……すみません。もう少し考えます。


 湖がダメだとしても、誰かがあの湖スライムになって、住処を守れば――ダメか。水だけ飲めば満足なんてスライムそうそう居ないだろ。それにそこから動けなくなるんだった。


 今回は、住処を守り続ける方法にはならないけど、やっぱり外の事を知ることで、何か思いつく可能性はあると思う。


 次はどこに行こうか。

 やっぱり話せる人がいる所へ行きたい。


 湖に戻るとフォスティ達にお礼をしたいと言われ、彼らの住処へお邪魔することになった。


 フォスティ達の住処は、湖の壁の穴を広げて住んでいるため、潜らなければいけないがハンベエがかなり恐かったらしい。


 まぁ、泳げないのに潜るのは確かに怖いかもしれない。一方でフィリアは楽しそうだったが……


「ソラに守られてるのに、なんで怖がる必要があるの? 何かあってもソラが助けてくれるからなんの心配もしてなかったよ」


 だそうだ。

 過剰な信頼がプレッシャーなので、もう少し心配してほしい。


 フォスティ達の住処に来るのは二度目だが、やはり不思議な空間だ。水の中なのに空気がある。


 通路を進んでいると、目の前に川蜥蜴(スピュタリル)族の女性が立っていた。

 

 どことは言わないけど大きいなー。川蜥蜴(スピュタリル)族は、リザードマンって感じだけど哺乳類なんだろうか? そんなことを考えてたら目があった……ガン見してすみません。気まずい……な。

 

「皆さん、こんにちは。私はアストリッド、この湖を助けてくださってありがとうございます。奥に宴の用意をしていますので、是非楽しんでください」


 アストリッドさんは、深くお辞儀をすると「こちらです」と奥へ進むように手で促すと、そのまま歩き出したので、俺達もついていく。


 奥の部屋が見えてくると、声が聞こえて、小さな影がこちらに走ってくる。

 

「父上! ご無事でよかったです」

「ハンスお客人の前だ。挨拶しなさい」


 フォスティの足に抱きついた子供はこちらに視線を向けた。


「おはつにお目にかかります。守り人代表の子、ハンスともうします」


 少し舌足らずな感じはあるものの、丁寧な挨拶と共に胸に手を当ててお辞儀するハンス。まるで物語の貴族か何かみたいだ。


「初めまして、スライムのソラです。こっちがメリー、あっちがペコリ。ゴブリンがハンベエ。俺の頭に居るのが防衛蟻のフィリアです」


 皆も挨拶をすると部屋まで案内される。部屋はやや緑っぽい明かりで照らされていた。


「この前来た時は入り口までだったけど、中は明るかったんだね」


 メリーは感心したようで、興味深そうに壁を見てる。


 よく見ると光ってる壁は、何かまだら模様のように光ってる箇所と光ってない箇所がある。

 

「……苔?」


 つぶやきが聞こえたようで、アストリッドさんが教えてくれる。


「そうです。湖の穴には大体生えています。湖の中だと光らないんですが、少し乾かした後で壁に擦り付けるとこのように光ります」


 へぇ~、不思議な苔だな。なんか発光する成分が含まれてるのかな。


「話も良いが、そろそろ食事にしよう。ペコリ殿が既に食べ始めてしまった」


 ペコリを見ると確かに既に食べている。スライムはこういうマナー的な文化皆無だからな。

 

 俺は頷くとフォスティが音頭をとる。


「では、湖を守ってくれた勇敢な戦士達にかんぱーい」

 

 みんなで乾杯して食事を始める。

 初めてお酒を飲んだが、なんとも言えない味がした。アルコールのせいなのか、魔力的な何かが変なのか。


 食事は、土で出来たテーブルに生の魚や虫などがたくさん置かれている。人型の生物でも流石に調理するって概念は無いんだな。


 みんなでワイワイするのは、こっちに来てから初めてだな。こういう生活が続けられると良いんだが、どこに行っても強敵なモンスターがいるからな。


「ソラ殿改めて感謝を。 もし今後困ることが合ったら是非我らを頼ってください」


 いつの間にかフォスティが隣に来て突然深く頭を下げている。


「感謝は沼地でも受け取りました。そもそもペコリが助けてもらったからここに俺達は来ました。お互い様ですよ」


「いえ、我らは滅亡する可能性が高かったのです。我らは、強いものが守り人に選ばれ、老いるとその経験を元に族長になります。我らを守ったソラ殿は、我らの守りひ人代表です」


 ええー! 種族違いますけど!? またいきなり祀り上げられてるんだが、何故だー

 

「いや、俺達はここに残れませんし、そんな恐れ多い立場は受け取れません。友人として接してください」


「……わかりました。ソラ殿がそうご命じになるのであれば、そうさせていただきます」


 なっ、なんか、そういう事では無いんだけど……

 えぇ……


「ソラはまたリーダーになるの? 凄いね」


 メリーさんは黙ってて。そう念じて視線を送るが、言うだけ言ってどこかへ行ってしまった。


「ソラが偉いのは当然です。防衛蟻の王様ですからね」


 はっ? なにそれ? 初耳だが?


「ソラ殿は既に色々な役目を追っているのですね。それでは我らだけ守って頂くわけにもいかないのは当然ですね。では、今は友人として宜しくお願いします」


「……うん、宜しくね……」


 どうしろと。ハンベエに助けを求めて探したら既に酔い潰れていた……


 ドサッと音がして、目の前を見るとフォスティも寝ている。

 

 周りを見るとフォスティ以外の皆も酔い潰れてそこらには飲んだくれが死体のように転がってる。子供達も寝たみたいだ。


 多分もう夜もふけたんだろうな。俺はどうするかな。いつも夜はエサ探しとかに行ってるし、湖でも探索するかな……

 

「ソラさん」


 湖の中を探査しようと外に向かってたら後ろから声をかけられて振り向くとアストリッドさんがいた。


「どうしましたか?」

「少しお話しませんか?」


 なんだろう

「構いませんが……」


 アストリッドさんは、ニコッと笑うと部屋の方へ戻っていく。俺はあとに続くと部屋をそのまま抜けて階段を登った。結構な段数を登るとそこには大きな部屋があった。


「そちらに座ってください」


 俺は言われる通り椅子の上に乗ったが、テーブルの下に隠れてしまいアストリッドさんが見えない。


「ぷっ、それでは会話できませんよ。テーブルの上に上がって頂いて構いませんよ」


 どうやら指し示したのはテーブルの上の事だったらしい。そりゃそうだな。恥ずかしい……俺はテーブルの上に改めて乗るとテーブルの上には、模型のようなものがあった。

 

「これはこの辺りの森になります。湖を中心に1キロくらいでしょうか。何かの異常があった際に方角などを共有するためにあります」


 うん、模型は繊細な感じで凄いけど、湖と森だけしかない。これ……意味なくない? 地図みたいなの書けば良いじゃん。そういう文化なのかな?


「これで共有出来るんですか?」


「えぇ、ここの印が日の出と日の入りを示しています。森の範囲は、私達が狩りをする範囲なので、どの方角の道中どこまで進むと脅威に出会うかというのがわかるそうです」

  

「私は女ですから住処に問題が起こらない限り、森には出れません。住処を守ることが役目ですので。だからこれまでに何を見たのか、どんな事があったのか? 教えてくれませんか?」


 俺はスライムの巣のことや、旅に出た理由、ハンベエやフィリアと旅をしている理由などを話して聞かせた。


「ふふっ楽しそうですね。私も男に産まれてたらソラさんについていったかもしれません。スライムが話せることも驚きでしたし、主人の話では大きくなったり、木から木へ飛び移ったりするそうですね。主人も相当驚いたみたいですよ」 


 主人……?

 

「アストリッドさんって結婚してるんですか?」


 予想してなかったので、ビックリしてしまった。そもそも誰かの奥さんと二人っきりってのは――スライムだから良いのか。

 

「あらっ、言いませんでしたっけ? 私はフォスティの妻ですよ。」


「あぁ、じゃあハンスのお母さんでしたか。ハンスは賢い子ですね」


 あの子の挨拶本当にちゃんとしてた。


「えぇ、主人みたいになると、訓練ばかりで困ってますけどね。ソラさんは次はどこへ行くんですか?」


 次は何にも情報無いんだよなー

「何も決まってません。他に住んでる人が居るとか知ってる場所とかありませんか?」


 アストリッドさんは少し困った顔をして、口を開けたり、閉めたり、何か言いづらそうだ。


「何か?」


「いえ、心当たりがある場所はあるにはあるんですが、おすすめできません」


 どうも話を聞くと、支配蜘蛛(ラーンドラガ)族という人型の蜘蛛らしい。一度捕まると逃げられないため、危険ということでフォスティ達は近づかないように注意しているらしい。

 

 アラクネみたいなイメージかな?


「そうですか。ご心配ありがとうございます。気をつけて行ってきますね」


 アストリッドさんの苦々しい顔が印象的だった

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