本当に湖探してる?
「あそこの水はダメだ。何か危険だ」
フォスティ達は、舌でそういうのを感じることが出来るらしい。
「そうか、じゃあどうする? 放っておいてナマズとは共生するのか?」
フォスティ達は皆難しい顔をしている。まぁ自分達を捕食する生物との共生とか嫌だよな。
「共生したとしても、あの湖の“何か“がこちらに来ないとは限らん。やはり原因を特定するか、こちらには来ないという安心は必要だ」
そっちね。
確かに水はこちらから流れてるから大丈夫だと思うが、違う危険生物が逃げてくる可能性もあるしな。
「とりあえず陸路で行くか?」
「そうだな。まずは現地に行くとしよう。ソラたちは皆来てくれるのか?」
俺は周りにアイコンタクトすると、みんな当然といった顔をしていた。
「そこの……えー、ゴブリンの名はなんと言ったかな? 武器はあるのか? 君はスライム達と違って武器を使うんじゃないのか?」
「ツカウ……一応ナイフならモッテイル」
ハンベエが出したナイフは、だいぶ錆びてボロボロのナイフだった。
「ではこれをやろう」
シュン、シュン
フォスティが何やら尻尾を振っている。
「ぐっ……」
カラン、カラン。
フォスティのうめき声と同時に後ろから柄に緑色の鱗がついた槍が落ちていた。
「ハンベエ殿、武器はこれを使ってくれ。我の誇りだ」
フォスティは、槍も拾って軽くはたくとハンベエに突き出した。
「アリガトウ」
ハンベエは嬉しそうに笑う。今まで持ってた武器は、ボロボロだったし、思い返してみればゴブリン達がちゃんとした武器を持っていた記憶もない。
「ハンベエは、槍が使えるのか?」
「フォスティ達をマネる位なら……」
そう言いながら“ブンブン”と槍を振るが、ハンベエよもう少し離れてくれないか……怖いよ。
「よし、じゃあ行くとしよう。フォスティ達は、陸地の移動も特に問題無いでいいのか?」
「あぁ、あまり長距離を歩くことは無いが、問題無いだろう」
湖に向けて進み出すと、フォスティ達がついてこない。いったいどうしたんだろう。ハンベエは、よほど槍が嬉しかったらしい。振り回して、草を狩っている。……小学生かな?
「ソラ、ソラ、もう良いでしょ?」
そしてフィリアも何やら騒いでいる。
何故かみんなの緊張感が無くなっている気がする。まるで遠足みたいだ……これから危険かもしれない場所へ行くってわかってる?
「ソラ! なんで答えてくれないの?」
おぉ、考えごとしてたら、フィリアが俺の頭に移動してきた。
「なんて?」
「もぉ、せっかくゆっくり話せる時間が出来たんだから話を聞いてよ!」
どうやら俺の頭をペチペチと叩いて不満を顕にしているようだが、いつゆっくり話せる時間が出来たのか……
「ソラ達は、そんな移動の仕方でずっと進むのか?」
あっ、フォスティ達が追いついてきた。
「何かまずかった? 俺達はいつもこうなんだけど」
フォスティ達はまた固まってしまった。
口あいてますよー。大丈夫ですかー
少しの間眺めていると、現世に帰ってきた。良かった。
「そっ、そうか……先ほどの言葉を翻すようで申し訳ないんだが、俺達はそんなに早く移動出来ないんだ。 というかスライムってそんなに早く移動するのか……」
なんかショック受けてるみたいだけど、なんで?
「いや、別に気にしないよ。とりあえずフォスティ達に先頭を歩いてもらって俺達が合わせるよ。周りの警戒は――ハンベエ!」
「大丈夫。マカセロ」
ハンベエを呼ぶとすぐにカッカッといつものエコロケーションを飛ばしてくれる――フォスティどうした?
「ソラ何かいるぞ! 気をつけろ!」
……
……
何かいる気配は無い。
「ハンベエ、近くに何か危険を感じるか?」
「イヤ、感じない ガ もう一度 カクニンしよう」
カッカッ
「ソラ! まただ、何かいるぞ!」
……それはハンベエ君のエコロケーションではないだろうか? それにハンベエから何か出てるってわからんもの?
「フォスティ……それは多分ハンベエのエコロケーションだね。周りを警戒するのに便利な技だ。 一応俺も使えるぞ」
カッカッ
「……そっ、そうか。 急に不思議な音を聞いたので警戒してしまった。すまない」
そんなに申し訳なさそうにされるとこちらも悪い事した気分になるな。
「気にしないよ。慣れないことがあれば誰でも警戒するさ。変に大丈夫だろうと思い込むよりよっぽど良い」
フォスティは苦笑いだ。でも本心で良いと思ったんだが、気休めだと思われたかな。
俺達は再びフォスティ達のペースに合わせて歩き出す。
「ソラは、食べ物は何が好き?」
食べ物? この体になってから魔力の多寡で味が決まってる気がするから何でも良いって言えば良いんだけど……
「鹿かなー。角から雷出してくるやつ」
「放電鹿なんて食べるの? 雷当てられて殺されない?」
「当たったら死ぬだろうね……でも襲われたから仕方なくだよ」
フィリアは今まで話す時間が取れなかったのを取り戻すかのように質問攻めだった。
「ソラはこれから何がしたいの?」
「世界の色んなことが知りたいかな。俺自身が色んなことが出来るようになるためにもね」
「凄いね。今も強いのにまだ強くなるつもりなんだね」
いや、強くなりたいというか、自分の体のことを知りたいだけなんだけど――スライムって生物として変な感じなんだよな。
体内の液体は、変化するし、変質するし、大きさ変わるし、どういう生物なんだろう。
「――ソラ? ソラ?」
「あぁ、ごめん考えごとしてた」
「悩みごと?」
「いやちょっと気になっただけ」
「そうですか。じゃあもっと構ってよー」
フィリアさん俺の頭は太鼓じゃないよ。
「ふふっ、わかった。でも森は危険だし、これから危ない所へ行くんだから、余り気は緩めすぎるなよ?」
フィリアは小さいからなのか、さっきから何かがフィリアに向かって飛んでくるのをはたいてるんだが、何が飛んできているのかが確認出来ない。
しかも攻撃されるまで、気配を感じないんだ。
「わかってます。ちゃんと気を張ってますよ。これでも防衛蟻の女王ですからね」
女王ではあるんだろうけど、宿なし、部下なし、って自称女王を騙ってる奴みたいな気がするけど。
「ソラ、女王ですよ」
心を読まれた!?
「もちろんわかってますよ。フィリア様」
また頭を叩かれる。様付けが気に入らなかったらしいが、叩くの楽しんでない?
「ハンベエ、こっちに来てもらえるか? 少し聞きたいことがある」
ハンベエはこちらを振り返ると、サッとこちらにやってきた。相変わらず足音がしないで、この速度は凄い。
ハンベエともフィリアへの攻撃が何なのか?話し合ったが、ハンベエもわからないらしい。
フィリアは、ようやく自分が攻撃されてることを理解して、今更頭の上でゴソゴソしていたが――まぁいっか。
「フィリア少し移動方法を変えよう。ハンベエの肩に移ってくれ」
フィリアがハンベエの方に乗ると、俺も小さくなってハンベエの肩にのる。なんかフィリアの視線を感じるが、無視して、フィリアを包み込む。
「ひゃっ」
俺はフィリアの体をスーツのように包み込み体全体を守ることにした。
「ハンベエに警戒は任せた。俺はフィリアを守るよ」
ハンベエの肩に移っても、謎の攻撃はたまに飛んできたが、どうやら蜘蛛の糸のような何か粘着力のあるもので、引き寄せようとしてるようだ。
俺の体を度々引っ張るような攻撃がくるが、飛んできているものは、サイズも違ったりするので、何かが追ってきているというより、複数の敵っぽいことまではわかった。
謎の攻撃の対処に追われているうちに、森の雰囲気が変わってきた。今までの地面は、土というより、葉の絨毯みたいだったが、どうも少し地面が土っぽくなってきた。しかもベチャとしてるようだ。
木もまばらに生えていて、隙間から空が見えるようになったのに、なんか全体的に暗く感じるのは何故だろう。
木が減ってきて、ハンベエお得意の木と木を渡り歩く方法も使えなくなってきた。
ベチャ、ベチャとみんなが足音を立てて歩く。
ペコリとメリーは、泥の中をゆっくり歩いてるが、まったく汚れてない……スライムって便利だな。
「こんなベチャベチャな所に湖ってあるもんなの?」
メリーに聞かれるが知らんがな。
むしろ俺も知りたい。
せっかく上も開けてることだし、空から見るか。
「フィリア、口閉じとけよ」
「えっ?」
俺は体を近くの枝に伸ばして、縮む勢いで空高く飛んだ。必然的にフィリアも飛ぶ。
「きゃああああ」
フィリアの叫び声を聞きながら、近くの湖を探すと今のまま進めば、明らかに木が無くなっている所が見えた。
そのまま地上に降りるとこのまま進めば湖がありそうなことを伝える。
「ソラ二度とやら゙ないで!」
フィリアは泣きながら怒る。
「ごめん……フィリアも空飛べるし、平気かと思ったんだけど、鳥にめちゃめちゃ襲われたのは怖かったよね」
「空もこわい゙ー 自分で飛ぶのとは全然違うがら゙ー」
ハンベエの肩の上で、フィリアと話している間に目の前には、池なのか、沼なのか、緑っぽいものがたくさん浮かんでいる場所にたどり着いた。
ここがあのナマズの古巣なのか……?




