逃げてきた理由
陸に戻るとフォスティ達に注目されたので、簡単に状況を話した。そもそもどういう状況だろうが、仲間を殺した犯人だと分かれば、報復間違い無しだろう……と思ったのだが。
「なるほど。違う湖から来て水質が合っていないと言うことか……湖の底を縄張りにしていると言うことだな?」
あれっ……思いの外受け入れてるのは、どういう感覚なのか……
「そうだね。 お腹空いてるみたいだから近づかない方がいいと思う」
メリーの話に頷きながら何かを考えているようだ。
「とりあえず、元の住処に帰って頂くために、その通って来た道を探すべきだと思うんだけど、どうですか?」
俺もフォスティ達が今まで通り生きていけるようにしたい所だけど、どうですかね?
「そうだな。総出で当たろう。ただ底の近くは捜索出来ないが……」
「底は僕達でやります」
えっ……メリーさん、なんでそんな危険に立候補を……
「ソラと僕はもう面識あるし、少なくてもスライムはもう食べようと思わないんじゃない?」
えっ、アイツそんな頭あるかなー。頭悪そうだったけど。
「じゃあ底は俺達が回るとして、ハンベエとフィリアは、水の中は厳しいだろうから、ペコリを連れて周りを探索してくれ」
俺達と川蜥蜴族と一緒に穴を探し回った。
この湖の壁は妙に穴がいっぱい空いてて、なかなかそれらしい穴が見つからない。そもそも湖と繋がってるなら近くに湖があることになるけど、それなら誰かしら知ってたりしないのかな……
《見つからないねー。どの穴も行き止まりで川蜥蜴族の巣みたいな感じだね》
皆で探すとなって川蜥蜴族の巣に行くことになった。巣は湖の壁の穴に住んでるのは、メリーの言った通りなんだが、中にはいると途中から水が侵入してなかった。なんか空気を運んで貯め込むとか言っていたが、かなり不思議な空間だった。
川蜥蜴族は水中生物なのに会話できないのは、変だなと思っていたが、そもそも水中での活動が得意とはいえ、陸上生物らしい。
巣穴は、そこそこ広くてワンルームの部屋が六部屋と六畳位の部屋が一つあるだけだった。
川蜥蜴族は、尾を自由に変化させる種族で、必要に応じて部屋を拡張するらしいが、この湖に来たのは数年前らしく人数が全員十人程度だった。
《そうだな。壁の穴もだいたい住人がいるから申し訳ないな》
穴を捜索すると当然穴の中に入るわけだが、そこには住人がいる事がほとんどで、遭遇した時がなかなか気まずい……
亀だったり、ドジョウみたいのだったりするんだが、デカナマズに知性があったせいで、どの生物も話せるんじゃないか……って疑念があると“すいません”ってなりますよね。
《ふぅー、見当たらないし、一度戻るか?》
メリーに呼び掛けるが、返事がない。
《メリー? 何かあったか?》
さっきまで普通に話してたのに、どこに行った。
辺りを見回しても見当たらない。どこかの穴に入ったのか?
《メリーー、聞こえたら返事してくれー》
先程までメリーが居た辺りで、穴の一つ一つに念話を飛ばしていく。
《マジかよ。無事なんだろうな》
よく見るとメリーが探してた辺りの穴の上に、粘着液が付着していた。
《こっちもついてる……なんのために?》
穴に入るのに粘着液が必要な訳がないし、そもそも一つならともかく、あっちも、こっちも粘着液が使われるなんてことあるだろうか。
《もしかして、捜索した印か?》
俺は穴に粘着液のついてない穴を探す。きっとその境にメリーがいるはずだ。探してみると思ってた以上に、捜索済みだった。念話出来てるから近くだと思ってたけど、結構な距離が離れてしまっていたようだ。
ようやく印の無い穴を見つけた。
この辺りの穴のどこかにメリーは入ったままということだろうか。
《メリー、今行くからな!》
《ソラ〜》
穴に飛び込んだ瞬間、念話が聞こえてくる。前から凄い水が暴れてるような現象が近づいてくる。
《ぶべらぁー》
避ける暇なく轢かれて弾かれた。体がグルグルと回りながら前後左右がわからなくなるほどだ。
《ソラ、ごめん。気づかなかった》
俺達は、魔力視を使わないと水の中では見えづらい。なにせ水でできてるようなもんだしね。
《この穴の先は、何かあったか?》
《この穴は、ずっと続いてるからここから来たんじゃないかな》
《そうか。じゃあここから先はフォスティも連れて行こう》
俺達は地上へ戻りペコリ達とこれからどうするかを話し合った。
「とりあえずフォスティ達が帰ってきたら、穴の向こう側を調査しに行きたいんだが、ハンベエとフィリアはどうする?」
「オレは待つ」
「私はソラについていきたいわ」
ついてくるのか……怖くないのかな
「でも水中でも敵はいるんだぞ?何かに襲われて俺から離れれば、死ぬぞ? フィリア泳げないだろ?」
「でもせっかく一緒に来たのに、みんなみたいに戦えないし、お役に立てないし――せめて一緒にいたいです」
なんて断りづらいこと言うんだ……とはいえ、水中で戦闘になったらフィリアに気を配るのは難しくなる。
「と、とりあえずフォスティ達を待つか」
「ソラ誤魔化すのは良くないよ。連れていけないなら連れていけないって言わないと」
メリーさんそんな言いづらい事……
ほらっフィリア泣きそうじゃん
――――――――――――
フォスティ達が戻ってきたが、やはりそれらしい所は見つからなかった。
「そうか、ソラ達が見つけてくれたか。ではあとはあちらで何が起きてるか調べるとしよう。ソラたちはどうするのだ?」
「俺達も行くよ。一応言われたのは、俺だし俺達にしかわからない何かがあるかもしれないしな」
「承知した。ならばこちらは二人で向かうとしよう」
「ソラ、フィリアは俺が連れてくよ」
「……大丈夫なのか?」
「大丈夫!」
ペコリが満面の笑顔で答えてくれるが、どうしてもお前が食べないか不安なんだ……
「わかった。フィリアもそれでいいか?」
「ハイ♪ ペコリ引き続きお願いね」
ペコリの頭にOKの文字が出た。
お前……いつの間にそんな技術を……
「おい、行くぞ」
俺達がやり取りしてるうちにフォスティ達が湖に飛び込んでしまった。慌てて俺達も追いかける。
穴の所へ俺達が案内すると、フォスティ達はなんの躊躇いもなく穴に侵入した。
水の流れは、向こうに流れているらしく泳ぐのは容易い。
フォスティ達は太い尻尾を使って泳いでいた。
なるほど、ああいう泳ぎかたもあるんだな……
俺も試しにやってみるが、意外と簡単だ。こちらの方が静かに泳げている気がするし、ペースを合わせるのも楽でいい。
かなりの時間泳いだが、まだ新たな湖にたどり着く雰囲気は無い。暗く、景色も変わらず、何か感覚が変になってきた。
まだ着かないのか……そんなことを考えていたら、前方にうっすら魔力光がチラついてきた。おそらくもうすぐ湖があるんだろう。
……
なんか……水の様子が変な気が――粘っこい?
《なんか水変じゃないか?》
《そうなの? 確かにさっきまでと違う感じはするけど……》
《確かに不味くなったね》
思ってた反応は返ってこなかったが、フォスティ達が急に引き返してきた。
なんだ?
俺達の後方を指差したように見えるが、今までの速度が何だったのかという勢いで、俺の横を去っていった。
《フォスティ達帰っちゃうね。なんか見つけたのかな? 僕達も帰るで良い?》
うーん、なんか危険があったのかもしれないけど、俺達まだ湖の中入ってないからな……
《僕ちょっと見てくるよ》
悩んでいるうちにペコリが、勝手に湖に向かってしまう。
《バカペコリ! お前だけなら止めないが、今はフィリアもいるんだ、一度帰るぞ》
どういう感覚してんだよ、まったく。
また独断専行でスライムビーみたいなのに会っても困る。本当は俺だけでも少し情報を得たかったが、俺が行くとペコリにブーブー言われそうだ。
俺達は、無事に帰ってフォスティ達から戻ってきた理由を聞いたんだ。
やはり向こうの湖は、危険だったようだ




