思ったと想う
思ったと想う
「少しだけ話を聞いてやる。何故去らない? 俺達を喰うのが目的だろ?」
突然の発言に聞こえているのに、理解出来なかった。
喰う? 何故そんなことを言う――ペコリが何かしたか?
俺はペコリを見る。
「はぁー? 僕、関係無いからね!」
ペコリが珍しく怒っている。これは本当だろう……では何故? それはともかく、ペコリよ。疑われるのは、普段の行いだと思うぞ。
「いや喰うも何も、君たちがここに住んでるのは、襲われて時に初めて知った所だ。こちらはそんなつもり無いよ」
リザードマン達は、何が気に入らなかったのか、さらに怒気を増した気がする。
「話すスライムとは珍しいと思っていたが、なるほど、納得だ。誤魔化し方まで上手いな」
えぇ……何故そうなる。
何言っても嘘扱いだな……こういう時は理屈じゃかえって悪化するんだっけかる
「なんで嘘だと思うのかわからないが……一旦、俺の言葉を信じたつもりで話をしてくれないだろうか? 話を聞いても、気に入らないなら会話の意味も無いだろう?」
何やら気に入らない提案だったらしい。取り巻きのリザードマン達が騒いでる。リーダーは、“ドン”っと槍を地面を突くと周りが静かになり、こちらを向いた。
「話せ」
空気が固い……
「俺達は、そこのペコリを助けてくれた人にお礼を言うためにここに来た。そして今去れないのは、湖の中に仲間が落ちて戻ってこないからだ」
メリーの存在は、知らせると人質になる可能性もありそうだから伏せたかったが、もう素直にぶつかる以外の方法が思いつかない。
「つまり、恩人はあなた達だった。理由はともかく仲間は無事だった。ありがとう。 そして湖の仲間が助かれば、“去れ”と言うなら去ろう。恩人の頼みなら、何か手助け出来ることなら手伝おう」
「俺達の状況は以上だ。あとは信じないで戦うも良し、信じて仲良くなるも良し。君たち次第だ」
空気がピリピリしてる。言葉のとおり戦闘になるかもしれない。だがメリーを早く助けたいんだ。これ以上会話で時間を使ってる場合じゃない。
「ふむ、では君の言うとおり信じたとすると、これから君たちは何をする?」
リーダーは、顎に手を当てて本当に不思議そうに聞いてきた。
「仲間を助けに湖へ入る」
あれっ? なんか空気変わってきた? 顔の険しさは変わらないが、どこか違った表情をしている。
「君たちの誰が湖の中に入るんだ? そこのゴブリンか? とても泳げるようには見えないが……」
心配してくれているのか?
「助けに行くのは俺だ。信じてくれるなら早く助けに行かせてくれ」
……
「わかった。許そう。ただし俺も同行する。仲間を攻撃されても困るからな。それと他のものは、ここで待機していてもらおう」
「……わかった」
俺はペコリをチラッと見る。目を離すとじっとしていない代表だ。
「フィリア。ペコリについててくれるかい? ここを離れられて、彼らの疑いを深めるのは避けたいんだ」
「任せて」
フィリアは飛んでペコリの上に乗る。
ペコリもウン、ウンと頷いている。
「先に一つ確認したいことがあるんだが、いいだろうか?」
リーダーを再び警戒させてしまったようだ。
「なんだ?」
「俺が湖に入ったら君たちからどう見えるのか教えてほしい。それによって仲間の危険度を知りたい」
彼は頷くと顎で先へと促す。
俺は彼と湖に入り、一度上がった。
「うーん、そもそも今みたいな泳ぎ方なのか?それなら見え方も何も動いてるのは丸見えだが……」
俺は上がるときにウォータージェットのように後方に水を押し出して泳いだ。
「いや、泳げるなら上がってきてる。あくまで沈んでいく俺がどう“見えたか”だ」
「それなら近くにいれば、匂いでわかったが、見た目ではまったくわからなかった。おそらく数メートル離れれば、我々ではわからなくなるだろう」
良し。
だいぶ無事の可能性は高まった。
「ありがとう。では助けに行こうと思うが、その前に……俺はソラと言う。君達には名前はあるか?」
「川蜥蜴族、守り人代表のフォルンスティーギだ。フォスティと呼んでくれ」
フォスティは、名乗ると手を差し出してきたので、俺も手を伸ばす。
うん、スライムと握手って結構シュールだね。
「ではフォスティ行こう」
俺とフォスティは、湖へと飛び込んだ。まずは湖底を目指すが、ウォータージェットをするとうるさいことに気づいた。このままでもゆっくり沈んでいるが――どうするか。
とりあえず形を変えて魚のような雫のような形になってみる。少しは早くなった気がする。次に水のを吸い込み、後ろから静かに出してみるが、やはり音と言うより泡が気になる。
水を吸い込むが、そのまま溶かすことにした。相変わらず水を溶かすのは、理解が及ばないが、吸い込むだけでも早くなった。
湖の中は、透明度がかなり高い。魚もチラホラ見える見た目は普通の魚だが、魔力が宿っている。気をつけよう。
だんだん暗くなってきた……
《メリーいるか? 助けに来たぞ》
俺は念話で話しかける。これなら水の中でも聞こえるだろうと思ったんだ。
《メリー! どこだー》
しばらく探してると小さく声がした。
《ソラ、こっち。壁の横穴に隠れてる。近くになんか敵っぽいのがいるから気をつけて》
敵? やはり見えにくいとはいえ、何かに襲われたのか……無事で良かった。
沈むのは簡単だったが、横移動は難しい。仕方ないが、後ろから水を吐き出すことで移動した。出来るだけ静かに……
目の前に壁が見えてくると壁穴はすぐに見つかった。
メリーは魔力を抑えてたようで、魔力視には、引っかからなかったので良かった。
《メリー、居るか?》
《ソラ、そっちは無事?》
俺達は自然に体を寄せ合う。
《こっちはペコリが蜂に襲われたのを撃退した。助けに来るのが遅くなってすまなかった》
メリーは首を横に振りながら笑顔で答えてくれる。
《大丈夫。絶対来てくれると思ってたから。それより槍を持った奴が襲って……》
メリーが言いかけて、突然後ろに回った。
《ソラこいつ等だよ。襲ってくるから気をつけて!》
なるほど。
どうやらフォスティ達は、陸に上がった奴以外にも居たようだ。
《メリー、彼は大丈夫だ。 事情は陸で話すから一度上に上がろう》
そう言って穴の外に出ようとしたら、フォスティの表情が怒りに変わっていた。
なんだ……何を怒って――うぉ!
フォスティが槍で襲ってきた。なっ、なんだ急に
《メリー、まずは上に逃げるぞ!》
俺はメリーを後ろから押すようにして、一気に後ろに水を吹き出す。泡が大量に巻き上がるが、気にしてる場合じゃない。
《メリー! 水を前から吸って、後ろから吐き出せば進む!》
《わかった!》
二人で急浮上するが、水圧で体がブルブルと震える。周りの生物もこちらに気づいて、去っていく。
俺達は一切減速せずに、水面から飛び出した。
空高く飛び上がってしまったが、とりあえずの危機は脱したか?
《ペコリ! フォスティが上がってくると襲ってくるかもしれない。警戒だけはしてくれ!》
ペコリは話を聞いてるのか、あまり警戒してくれてるように見えないが、フォスティが上がってくるより先に合流出来た。
「ソラ! やはりお前たちは、敵だな!」
フォスティが陸から上がって来て叫んできた。突然過ぎる。なんでそうなった。俺はメリーが何か知ってるかと見るとメリーが1歩前に出た。
「先程は、どうも。敵というのは、先程の横穴の奥にお仲間がいたからでしょうが、僕達は関係ありません。 ちゃんと仲間たちを確認しましたか?」
「また賢しいのがいるな。お前たちの話はもう聞かん!」
フォスティの剣幕も相当だが、メリーもなんかいつもも違う……なんだ。
「聞く、聞かないの話なんかしてねぇーんだよ! 仲間をちゃんと見てやったのか!って聞いてんだよ! こっちに襲いかかる前に、仲間を気遣えないお前にどうこう言われたくねーわ!」
メッ、メリーさん……どうしちゃったの?
なんか違うどころか、初めて怒っているのを目の当たりにしたんだが。
「いいか。こっちは訳も分からず襲われるのも腹立つが、仲間が死んでるの見て、助けるより先に俺達をまた襲おうとか考えてる時点で、仲間を理由に戦いたいだけだろーがよ! 仲間が大事なら先に悼んでやれよ! 何やってんだよ!」
……
風の音がうるさい……皆、気配を消してる。フォスティの仲間すら微動だにしない。
……
おいフォスティ、この空気なんとかしろよ。
「……もっともである。すまなかった。仲間を引き揚げてくる」
……
フォスティは静かに湖の中へ沈んでいった。




