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やわらかい侵略  作者: 新 絆
森の世界

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殺意の恩人

殺意の恩人

 違和感を感じて湖の中を覗いたが、光が反射してあまりよく見えない。角度を変えてなんとか見えないかと試していると後ろから声をかけられた。

 

 「ソラー、これが変なのだよー」


 ペコリが見上げる視線の先には、木の幹に黒ずんだ壺ので包まれているようなものがあった。


 ――つまり蜂の巣ってことだろ。


 恩人探しだって言ったのに……。

 クソッ、目を離すとすぐこれだ。

 

「ペコリ、離れろ。今すぐだ」


 俺の声に、ペコリはきょとんとした顔をしたまま一歩も動かない。こいつ、恐怖より食欲のほうが勝ってるな……!


 ブブブブブッ――!


 一斉に飛び出してきた。あのときの刺客と同じ、鋭い槍を持った巨大な蜂だ。三匹……いや、五匹か。こっちに気づいた。


「全員、湖へ逃げろ!」


 叫ぶと同時に、頭の上に乗ってるフィリアをドーム状に包み込みながら水面へと跳び込んだ。冷たい水の感触とともに、全身が一気に沈む。視界が揺らぎ、横から誰かが飛び込んだ音が聞こえた。

 

「ハンベエ息を止めてろ。すぐ助ける」


 スライムの俺は水中でも自在に動ける。沈んでくるハンベエにダイバースーツのように体にまとわりつく。周りの水を取り込みつつ、足の裏からブシュッと水を押し出し推進力をつけながら、俺たちは反対岸へと滑るように移動した。


 振り返れば、水面では蜂が何匹もホバリングしながら刺突の機会をうかがっている。


「ハンベエ、フィリア、大丈夫か?」


「オウ」

 

 ハンベエは少し声が震えてる。水に沈んでいくのが怖かっただろう。俺だって息もできずに沈むとなれば怖い。

  

「大丈夫よ! でも、あの蜂……水面に来るのを待ってるみたい!」

 

 フィリアは、最初から心配してなかったのか普段と変わらない。

 

「メリー、ペコリ、無事か?」


 俺は周りを見渡すと、ペコリは湖に入らず逃げ回っているようだ。アイツ……少しは学習しろよ。


 残るメリーを探して、俺は水の中を覗くとゆっくり沈んでいくメリーが見えた。スライムは呼吸してないから死ぬことは無いと思う。先にペコリを助けないと。

 

 俺は水面を探してる蜂に向かおうとするが、水中にいる状態で戦ったら時間が掛かりそうだ。


「ハンベエ、俺が水面を動けるようにフォローするから水面を移動出来るようになったら、蜂の周りを逃げ回ってくれ」


 まずはハンベエを水面に立たせたい。

 俺は足回りを厚底ブーツのようにして空気を取り込む。

 体が少しづつ浮かんでくる。


 浮力が足りない。厚底の空気を10センチくらいまで膨らますと水面まで上がってくる。


「クッ」

 

 ハンベエはバランスを取るのに苦戦してるようだ。俺はハンベエの羽をスーツから出してバランスを取りやすくする。


「ウン、イケるぞ」

 

 バランスが安定した所で、ハンベエが蜂に向かって走る。水面がピシャピシャと音を鳴らす。蜂までもう少しというタイミングで、蜂たちがこちらに気づいた。

 

「ハンベエ、蜂を振り払え」


 ハンベエが手をブンブンと蜂に向かって振るうが当たらない。ハンベエは水面の蜂を無視して、ペコリの元へ向かう。

  

「ペコリ!!」


 俺達が追いつく前にペコリは蜂に刺された。


「ソラ……」


 クソッ、間に合えよ。

 俺はハンベエの手に体を集め始める。

  

「ハンベエ投げろ!」

「オゥ!」


 ハンベエが蜂めがけて俺を投げつける。俺は蜂に近づくと水を蜂に向かって勢い良く吹き出した。効果があったのか、蜂がペコリから離れる。


「ペコリ無事か?」


「うーん、お腹空いた」


 相変わらずでホッとする。ペコリなんか少し縮んでる気がするが、今は蜂に集中しよう。俺はペコリを追いかけてた二匹の蜂に水をかけ続けていると、蜂が突然落ちた。


「ペコリ食べていいぞ」


 俺はペコリの返事を待たず、ハンベエの方を見る。

 

「ハンベエ後ろだ!」


 後ろからさっきの蜂が追いついて来ていた。

 ハンベエは振り返ると先程と同じように叩き落とそうと腕を振るうが、蜂はハンベエをそのまま通り過ぎた。


「ペコリ、来るぞ」


「任せとけー」


 ペコリは何かしようと体をぷるぷるさせている。


「なんだ? ペコリふざけてる場合じゃないぞ」

 

「違うよ、さっきのソラみたいに水を飛ばそうとしてるんだよ」


 何も出てないが……アレか? ペコリはまだ水を取り込んだことが無いからか?


「ペコリ出来ないなら後にしろ、お前は蜂を食べれば良い」


 ペコリに腕を伸ばすと粘着液で張り付けた。

 そしてそのままペコリをぐるぐる回して蜂を殴りつける。ペコリは蜂にぶつかるとそのまま体内に取り込む。


「グッ……」


 ペコリが二匹まで取り込んでくれたが、最後の一匹に刺された。

 

 力が抜ける……

 

 誰かの声が……聞こえる……

 

 何も……でき……ない……


 

「はっ!」

「意識が飛んでた」


 目の前にはハンベエがいて蜂を踏みつけてた。


「ハンベエ助かった」

「オレもタスカッタ」


 二人でフッと笑うと俺は蜂を食わせてもらう。

 消化すると吸われた魔力が返ってきた。


 蜂の群れは散り、森には再び静けさが戻った。


「ふう……なんとかやり過ごしたな」


「ねえソラ……メリーは?」


 あっ……


「湖の中だ、助けに行かないと」


 急いで湖の方へ向かう。

 

「ソラ待って、僕も行く」


「いや、ペコリ泳げないだろ? それにハンベエだけ残すと何かあった時に一人でなんとかしなきゃいけなくなる。ペコリはハンベエについててくれ」


 正直、ペコリを残すとまた蜂にちょっかいを出しそうなので怖いが、水の中で逸れられたら二匹探す羽目になるからな。


「ふ〜ん、わかったよ」


 ペコリは素直に従ってくれたが、何考えてるかわからない。

 

「ハンベエ、ペコリを頼むな」

 

「大丈夫ダ」


 ハンベエは、力強く頷いてくれた。あとは任せても大丈夫だろう。俺は、今度こそ急いで湖に向う。


 キラッ

 

 そのまま飛び込もうとしたら、水面が光った。


 シュ


 何かが飛んで来て、体を縮めて躱す。


「なっ、なんだ!?」


 俺は光った辺りを見ると、水面が揺れて少し泡が出ている。俺は体を元に戻して、襲撃に備える。


「誰だ!」


 声をかけた瞬間、湖の水面が不自然に波打った。


 ドボン。


 水面に顔が現れた――恐竜の顔に見える。

 異世界に恐竜? マジで? 湖に住むような恐竜っているの?


「――何もせず、ここから去れ」


 無骨な男の声だった。


「もしかして少し前にスライムを助けてくれたか?」


「違う。“騒ぎを止めるために排除した”だけだ。 スライムは既に死んでると思ったが――生きてたか」


 その瞬間、水中から勢い良く何かが飛んで来た。今度は一度だけでなく、複数飛び出て来た。


「こいつ……殺る気だ!」


 飛んで来た何かを躱して、攻撃が落ち着いた隙に後退して、ハンベエ達に合流する。


「水中だと攻撃方法が無いな。何かいい案は無いか 出来れば争わなくて済む方法の方がいいんだが……」


 俺はチラリと二人を見るとペコリがびっくりした顔をしていた――なんだその顔は?


「ソラ、話カケレバ、水ノ外に出テクルト思う」


 話しかければ出てくる? なんで? それとペコリはなんでニヤついてんだよ。


「アイツは、去れト言っタ。 話セバ追いイ払イニ来ル」


 ハンベエ、心を読んだみたいに、俺の疑問に答えてくれた。


「なるほど」


 ハンベエの言い分は正しい。この距離なら攻撃されても問題はないだろう。


「えっーと、湖の中の君。俺達はここを去る訳には行かない。話し合う気はあるか?」


 再び湖から飛んで来た。近くに落ちたものを見ると、槍だった。それも緑色の鱗がついたまるで、生物の一部のような不気味なものだ。


「俺達は争う気は無い。攻撃を止めてくれ」


「ならば去れば良い」


 クソッ!

 

 堂々巡りになってる。しばらく攻撃と回避の繰り返しが続いていた。倒すにしてもいい案が思いつかない。


 ザパッ。


 突然、湖から複数の水飛沫の音がすると、陸に5人の恐竜ではなく、リザードマン?が現れた。


「少しだけ話を聞いてやる。何故去らない? 俺達を喰うのが目的だろ?」


 先頭のリーダーらしき男が、好戦的な笑みを浮かべて話しかけてきた。

  

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