ペコリの行方
ペコリの行方
儀式の終わりかと思った、その時だった。
空に浮かぶ黒い点――しかも、真っ直ぐこっちに向かってくる。
王女候補はもう飛び去ったはずなのに……まさか、敵か!?
俺は構える。何か特別な能力とか使われたらまずい。すぐ逃げられるよう木に手を伸ばす構えをとった。
あれはフィリア様では?
なぜ帰ってきちゃってるんだろう……
「ソラ様!!」
恒例の突進を受けた。
そして何故か体をたぷたぷされている……
《フィリア様は、遠くで自分の拠点を作らなければいけないのでは?》
フィリア様は笑顔で答えてくれた。
「えぇ、遠くへ行くわ!ソラ様について行くの。 無事儀式も終えたわ。見ていてくれた?」
《えぇぇぇぇ、どどどういうことですか? 儀式は見てましたけど、何かあったってことですか?》
「ふふっ、何もないわよ。私がソラ様について行くのは、もう決めてたもの」
フィリア様は、儀式の興奮が尾を引いてるのか、テンション爆上がりだ。
《うーん、でも危険かもしれませんし、何処かに落ち着くわけでもないので、フィリア様の目的が達成できないのでは?》
「ふっふっふっ、目的は、ソラ様についていくことだから問題ないわ!」
……
はっ? 防衛蟻たちは、拠点の範囲を広げるために、王女達を見送ったはずでは……
「王女様! 何故こちらに!?」
ほら、護衛隊長さんっぽい蟻もびっくりしてますよ。
「私は、ソラ様と共に行き、見聞を広げ防衛蟻の世界を広げるのです。拠点は、他に飛びたった妹たちが、きっと役目を果たします!」
「わかりました。王女様の思うがままに」
わかっちゃうの? えっ、フィリア様拠点作らないってことだよ? ダメじゃないの?
「ソラ様! 許可も得ましたし、問題無いですわね」
いや、俺は許可してませんよ。
王女なんて連れて戦いになったら困るじゃん。
《フィリア様、危険です。守りきる自信もありませんし、俺が死ぬかもしれません。連れていけません……》
「ソラ様が私を守るつもりがないなら、それでも構いません。フィリアは、ソラ様についていければそれで充分です」
断りづらい。どうするか。
じゃあ放っとく――ってわけにもいかないよな。
《フィリア様の言い分はわかりましたけど、仲間たちの意見も聞きたいので、拠点で待っていただけますか?》
「無理です」
即答ぉー、なんでよ?
「儀式が済んだのに、元女王の拠点に入ると叛意を疑われますので」
もうコレ、断ったら人として酷くない?
いや、俺スライムだけども……
《わかりました。一緒に行きましょう。正直に申し上げますが、困っています。ですが安全な場所が無い生活は辛すぎると思いますので……》
「はい!」
えぇー、困ってるって聞いてた? 結構勇気出して言ったのに、その喜び全開な返事はなんですか……。
「ソラー!」
ん? メリーが帰ってきたみたいだ。
「お疲れ様。メリー。 ペコリはどこにいた?」
メリーは渋い顔してた。
「ペコリは見つからなかった。結構、食べたあとっぽい地面とかあったんだけど、近くに居る気配が無いってハンベエが……」
「ハンベエもお疲れ様」
「スマナイ」
ハンベエも苦しそうな顔をしてた。
心配ではあるんだけど、どうしても危険な目にあってると思えないんだよな。
「大丈夫。あのペコリだから、そのうち帰ってくるよ。
まぁ、もう日も暮れるし、今日はゆっくりしてくれ。明日から俺も探すから」
「わかったよ。ただソラに一つ聞きたいんだけど、なんでソラの上にフィリア様がいるの? 儀式は?」
俺はフィリア様を降ろすと、何故か胸を張って得意げだった。
「あぁ、儀式は無事終わったんだけど、俺達について来るつもりみたいなんだ」
「ソラ様、内緒話ですか? 出来れば私もお話に参加したいです」
あぁ、そうかフィリア様には通じないんだった。
話すときに念話みたいに、魔力を飛ばせば良いのかな?
《そうですね。内緒話ではありません》
フィリア様の言葉は、俺達に通じるのは何故なんだろうか――話してる言葉は、分からないのに意味が通じる。
《「これは通じますか」》
メリーとフィリア様が、凄い顔でこちらを見てくる。
『ソラ様「ソラ、今の何?」ですか?』
《「どう聞こえてるの?」》
「声が二重に聞こえるよ」
フィリア様がうん、うんと首を縦に振ってくれている。
二重か、念話みたいじゃなくて、念話が出ちゃってるのかな。もっとも声で魔力を出す感じで……
「どう? 聞こえ方変わった?」
「? 普通に聞こえますね」
「ソラ様! 私にも言葉がわかります!」
おぉ、成功だ。結構簡単だったな。
このあとしばらくは、みんなで念語の練習をした。ハンベエが大変そうだったけど、言葉が片言なのに意味がちゃんとわかるようになったのは、面白かった。
翌朝を迎えて、俺はペコリを探し始める。
取り敢えず周辺をエコロケーションで、近くのメリーと同じ反応を探すが、まったく見当たらない。
次は空からだ。
俺は自分を上に打ち出し、蟻喰鳥の目に作り変える。おぉ、よく見える……何か動いてるものが凄いわかるようになるな。
ん?
スライムが居るな。こっちに向かって来てるが早いな。ペコリか?
俺は地上に降りたら、メリーに怒られた。
「また一人でやってる!」
もちろん謝ったが、暇だったし、フィリア様が起きてきたら面倒……一緒に行くことになると危険だからね。
「ペコリっぽいスライムが向こうから来てるから、迎えに行こう」
「わかったよ」、「ワカッタ」
3人で迎えに行くと、ペコリが見えてきた。
俺と同じように枝に腕を伸ばして、枝から枝へ飛び移る移動方法だ。アイツ自分で早く移動出来るじゃねか!
「ソラ! 逃げろー」
えっ、何、何?
後ろを見ると何かが飛んでこちらに向かってくる。
俺達は、ペコリが近づいてくるのを待って一緒に逃げる。
「何から逃げてるんだ? このまま蟻たちの巣に誘導して大丈夫なのか?」
「蜂! 溶けない槍を持った蜂!」
珍しい。ペコリがこんなに慌てるなんて……
「タブン スライムビー ダナ」
なにそれ? スライムを狙う蜂ってこと?
「スライムビーってどんな奴なの?」
ハンベエの説明によると、溶けない槍でスライムを吸う蜂らしい。じゃあ、防衛蟻たちは大丈夫かな。
俺達は拠点に戻るとフィリア様が大号泣して騒いでた。
「ソラざま゙ぁ、私を置いてい゙ったのかと思いましたー」
なるほど、それは怖いかもしれない。
「すみませんでした。今時間がないので、説明は後程。護衛隊長殿!」
俺は、大声で護衛隊長を探す。
こちらに向かってきた蟻に事情を説明し、迎撃方法を知っているか確認した。
「それで? 蟻たちでスライムビーは、撃退できますか?」
「あいつらはスライムしか襲わないので、分からないのです。すみません」
「なるほど、では蟻たちに被害は出ないと分かっただけでも良かったです」
俺は振り返り撃退体制を整えるように支持を出す。
「メリーとペコリは石を集めて、遠くから攻撃する準備を、ハンベエは、俺の傍で一緒に戦ってくれ」
俺自身も一応石を持ちつつ、戦い方を考える。
槍はともかく体は、溶かせるだろう――それにスライム達なら刺されたら、まず槍を溶かす。でも溶けない。その間にやられるって感じだろうか。
なら飛びつけばいいんじゃないかと思うんだが……
隣を見るとハンベエは、ナイフを持って構えていた。
やる気は充分って顔だ。頼もしい。
森の方から何かが来る気配がする。
「来るぞ!」
森から姿を表した蜂は、拳くらいのサイズで、大量な数を想像していたが、3匹だった。
「先手必勝」
俺は回転移動で蜂に迫る。
俺は回転しながら蜂に突っ込む。思ったより速い――こいつ、こっちを見て構えてる?
槍は馬上槍みたいな形で、先が注射の針のようだ。
俺は以前覚えた風魔法で体を持ち上げ、移動の勢いを落とさないまま蜂に飛びつく。
「喰らえぇぇ」
俺に向かって槍を差し込んできたが、そのまま体を貫通させて、蜂の体にまとわりつく。
ブブブっと羽が大きな音をさせ暴れる。
しかし一度包んでしまえば、離れないのは容易い。槍もリーチが長すぎて叩くことは、出来ても指すことは出来ないみたいだ。
俺はコイツが止まるまで、他を援護できない。
ハンベエの方は、ペコリとメリーの方へ向かってる蜂につきまとっている感じだ。そこへ二人の投石が飛び交う。
蜂は上空から、急降下する形で狙ってるみたいだけど、ハンベエが上手いこと、邪魔してるお陰で浮上、降下を繰り返してる。
こっちは終わった。
「ペコリ! お前も蜂喰いたいだろ?」
俺はペコリに向かって腕を伸ばすとペコリも腕を伸ばしてきた。俺はペコリを掴むと砲丸投げのようにペコリを振り回して、上空へぶん投げた。
ペコリは俺と同じで、槍に貫かれたものの、そのまま蜂の体に取り付いた。
「メリーはどうする?」
メリーは体を横にブンブンと振った。相当、嫌だったみたいだ。
「じゃあ俺を投げてくれ」
メリーはペコリと同じように俺を飛ばしたが、方向がだいぶズレている。このままじゃペコリがヤバイ。最後の蜂は、ペコリを横から刺そうとしているため、俺に気づいていなかった。
気を引くため、蜂石を投げつける。くそっ、外れた――でも蜂が俺に気づいて手を止めることには成功したが、飛ばされた勢いで蜂達を通り過ぎてしまった。
あぁー、急がないとまたペコリに意識が向いてしまう――俺は早く落下するため、体を膨らませた。
なんか、思った以上にデカくなったんだが……
大きくなった結果、上昇する勢いは消え、蜂とペコリかなり近くなっていた。
俺はペコリを掴む。
「ペコリ、俺を引っ張れ」
俺もペコリを引くとお互い引き寄せられ、蜂の頭上に近づくと蜂は俺の方に槍を向けてくる。
俺は残りの石を全部落として、蜂の攻撃の意識を逸らすと、そのまま蜂の頭に突撃して、体を元のサイズに戻した。
最後はペコリか、俺がちょっと危なかったけど、二人とも無事で良かった。
俺は落下しながらふぅっと気を抜いた。
下には、笑顔のメリーとフィリア様が待っていた。
取り敢えず下についたら、ペコリに説明させて説教だな。




