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やわらかい侵略  作者: 新 絆
森の世界

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31/40

三匹と一体

 洞窟を出れば、いつもの景色が見えるはずだった。

 だが――そこにあったのは、三つの影。


「メリー!? ペコリ!? ……先生まで!? 何してるんだよ!」


「ソラについていくつもりだけど?」とメリーはむっとした表情で言った。

 

「皆を守りたいのはソラだけじゃないんだけど」

 

 横でペコリは黙ってうなずいてる。

 君は絶対嘘だね。なんでも頷いてるだけでしょ。

 しかも今何か食べてるでしょ。なんか気が抜けちゃうよ。


「……先生、まさかとは思うけど、ついてくる気?」


「ソウダナ、オレモ、モットマナビタイ」

 先生は、ゴブリンの子供達に言葉を教えていたときに、先生と呼んでたあのゴブリンだ。まさかそんなに、勉強にハマっていたとは。


「でも危ないよ? ご飯だってスライムみたいになんでも食べるってわけにいかないし……」


「ダイショウブ、カリデキル。ソレトソラ、オレニモ、ナマエクレ」

 えっ?名前?今ですか!?

「うーん、勉強好きそうな武将……半兵衛、とか?」

「ハンベエ……イイナ」

 

 気に入ってもらえてよかった。

 マジで今から旅立つ気分じゃなくなってきてしまったけどね。

 

 ふと、視線を感じて見ると、メリーがこちらを睨んでる。

 なんか怒ってる?いや、怒ってるよね。

「ほんとに一人で行こうとしたんだね」


「だって危ないし……巻き込みたくないし……」


「ふーん」


 ふーんって。いやいや、そんな冷たく流さなくても。


 メリーは肩の力を抜いて、少しだけ寂しそうに笑った。

「蛇の時も一人で戦いに行っちゃったもんね」


 いや、あの時は、だって……

 納得してもらえる理由が思いつかない。

 気まずい。何か――言わないと。


「ソラ、また一人で美味いもの食べに行く気だな」

 相変わらずペコリが空気を読まずにぶち込んでくるが、俺はホッとした。

「ペコリ、前もそうだったが、美味いものを食べに行くわけじゃないぞ」

 

 先生もなんとか言ってくれ。

「先生……」 、「ハンベエ!」

 ん?

「せんっ」、「ハンベエ!」

 あっ、そうだった。

「半兵衛は、ペコリがこんな感じだけど、ついてきて大丈夫か?」

「ペコリ、イツモ、ゴハン、モンダイナイ」

 

「……ほんとに来るつもりなんだな、みんな」


「そうだよ」とメリー。「美味いものは僕も喰う」とペコリ。「オレ、ベンキョウ、スル」と半兵衛。


「うーん……でも道中、たぶん大変だよ?」


「知ってるよ」とメリーは少しだけ得意げに言った。「だから、手伝うの」


 ……これ、もう断れないやつだ。


 空はもう、薄く白み始めていた。

 洞窟の外、朝の冷たい空気の中に、四人分の気配が並んでいた。


「……じゃあ、行きますか」


 俺が一歩踏み出すと、三人も静かに後に続いてきた。

 誰も何も言わなかったけど、その足取りは、しっかりと揃っていた。



 歩き出したのはいいけど、どうやって行くか?

 ハンベエは良いとして、スライムの二匹だよな。

 

「なぁ、メリーとペコリは、回転以外に早く移動する方法って知ってる?」

「ソラ何言ってんの?回転が一番だよ?」

 メリーさん、そんなドヤってるけどこの森の中で転がるのは無理でしょ。

 

「移動方法? それは……」

「食べれないぞ、ペコリ」

 ……ペコリには、最早聞くまでもなかった。

 さっきまでの感動が飛んでいったよ。

 

「仕方ない……ついて来れないなら巣に帰ってもらうからな!」

「ほ――本気だぞ」

 なあなあで、旅路がゆっくりになり過ぎても困る。

 一緒に行きたいけど、目的があるんだからな。

 

「行くぞ!」


 俺はいつも通り、枝に手を伸ばして動き出す。

 後ろを気にせず進む。


 とりあえず森から出るのを目標にしようかなー

 それとも山の付近で新しい洞窟を探すか……

 あれこれ考えながらある程度進んだので、後ろを振り向いてみるとメリーがまさかの転がりながら、ゴブリン達みたいに木から木へ飛びつくように移動してた。


 ……回転移動めちゃめちゃ難しいのに。

 なんであんな事できるの?

 回転好き極まってんな……


 ペコリは、ハンベエの背中にくっついてた。

 ……お前は自分で歩けよ。


 森の奥の方から魔力を感じた。

 この形は……

 

 俺は枝から降りてつぶやく。

「やばいのが来た……」

 多分ペコリ達はあの鹿の恐ろしい電撃攻撃を知っらないだろう。


「ハンベエ! 電撃を放つ鹿と戦ったことはあるか?」

「ワカラナイ。デンゲキ、ナニ?」

 そうか、言葉がわかっても意味が通じなきゃ意味ないな。

 3匹とも俺の後ろについて、隠れてくれた。

 まぁ1匹は、もともとハンベエに隠れているが……

 

「メリー、ペコリ、気をつけてくれ」

 俺は声を潜めて言った。


 二人はキョトンとしていた。

「なにが?」

「あいつ美味そうだね」

 こういう時のペコリは無視だ。

 

「電撃だ。あの鹿は角から雷のような光を放つ。くらったら終わりだ」

 メリーは眉をひそめた。


「へぇ、すごいじゃん」

 すごいで済んじゃうんだ。

 でもこれがスライムなんだよなー

 

「粘着液を体に纏えば防げるんだ。だから二人は角が光ったら粘着液で体を包むのに全力を注いでくれ」


 たがそれでは、ハンベエが食らってしまう。


「ハンベエ、君は粘着液が出せない。電撃を食らったら終わりだ。絶対に近づかないでくれ」


 ハンベエはうなずいた。覚悟を決めている。

 森の木々がざわめく。

 鹿が姿を現した。


 大きな角を構え、光始める。

 電撃の気配が森に広がった。

 「メリー!ペコリ!粘着液を出して!」

 メリーとペコリは粘着液で体を包む。

 その後ろには、ハンベエが隠れていた。


 光が徐々に大きくなる光景を見ながら俺はこのあとどうするかを考える。

 前回は、捨て身で突っ込んだけと、近づいてからも手間取った。出来れば二匹で突っ込みたい。


 移動を考えるとメリーだが、ワンチャン、ペコリなんとかしてくれないかな。

 

 ピシャーン


 雷鳴のような音が鳴ると同時に俺は突っ込む。

 前回と同じ展開だが、この速度だと次の攻撃に間に合わない。

 

「ペコリ、俺より先に倒したら鹿喰っていいぞ」

 言うと同時に弾丸のようなものが、俺のすぐ横を通過した。

「危なっ!」


 弾丸の行方に目をやると、鹿の頭を包んだペコリがいた。


「……マジかよ。いつの間に」

 どこかで跳ねて……いや、あいつ、ずっとハンベエの背中にくっついてたはずじゃ…… 


 ドスン。

 鹿の体が倒れた。

 ……

 森に静けさが戻った。

 ただ目の前のペコリが、消化に一生懸命なのは言うまでもない。


 ふぅー、前回戦った時は、死んだと思った位だったけど、ペコリのおかげで楽勝な感じだったな。

 

「ペコリ悪いんだが、角だけ俺にくれ」

 角を食べ続ければ、俺も電撃出せるんじゃないかと思うんだけど。

「角が一番美味いのか? ヤダ、僕が喰う」

「いや違うんだけど……まぁ、わかった。お前が倒したからお前のものだ」

 ペコリは、満足顔だ。

 いや、本当に角が一番とか無いよ?あとで怒るなよ?


「ソラ、ところで今はどこに向かうとか決まってるの」

 メリーの方を向くとハンベエが震えてた。

 

「メリーちょっと待ってくれ、ハンベエどうした?」

「ナンダ、サキホド、アラシ、ソラハ」

 アラシノソラ――嵐の空――あぁ雷ってことかな。

「さっきのは雷だな。嵐の時に空から落ちてくるのと同じだな」

「アレ、チニオチル、モエル」

 ハンベエは、何かを思い出してるのか震えが止まらない。

「あぁ、そうだな。だけど雷は必ず燃えるわけじゃないし、俺達の粘着液には、効かないから大丈夫だ。ハンベエも雷からは俺達が守ってやるから安心しろ」


「ソラタチ、モエナイカ?」

 ん?もしかして、俺達がこれから燃えるかもしれないと思ってるのか?

「燃えない燃えない。雷が落ちて燃えるのは、当たった時の熱で燃えるから、こんなに時間経ってから急に燃えたりしないよ」

 

「ソウカ……ヨカッタ。オレ、ナニモデキナイ。ソラタチ、タタカッタ。オレダケ、イキル、ユルセナイ……」

 ……そうか、責任を感じてくれてるのか。

「大丈夫。旅は助け合いだ。これからハンベエに助けてもらうこともあるさ!」

 

 話を聞いていたメリーも賛同してくれる。

「そうだよ。スライムで難しい事はハンベエにやってもらうしかないんだからね」

 ……

 ペコリ何してるんだ?

 ペコリは、鹿の脚を持って、ハンベエの横に無言で立っている。

「…………」

「ドウシタ?」

「食べるか?美味いぞ」

 おぉ、あのペコリが、他人に飯を分けてるだと!

 だけど、顔をもう少し作りなさい。なんでそんなに嫌そうなのさ。

 

「ソレハ、ペコリ、テガラ、ウケトレナイ」

 ハンベエ手柄とか誰に教わったんだ?

 ペコリさん嬉しそうな顔止めなさい。君どうせ手柄の意味わからないでしょ。


「ハンベエ、ペコリが珍しく自分の大事なものを分けてるんだ。ここは受け取ってやってくれ」

 やっぱりその方が色々まとまるよね。

 えーとっ、ペコリさん良いんだよね?それ涙ですか?


 ペコリは物を置いて、離れていった。

 何か思ってたのと違う感じになったけど、俺間違ってないよね?

 

 

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