表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やわらかい侵略  作者: 新 絆
森の世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/40

巣立ち

巣を出る時が近づいてきた。でも、なんかまだピンときてないんだよな。


「目的を考えろって言われたけど、確かに何しに外に行くんだろう?」


ふとそんなことを考えた。


 知恵が欲しい。だから外の世界を見てくる――確かにそう言ったけど、じゃあ具体的に何を探すのか? 敵? 仲間? 新しい住処?


 知恵って欲しいって願って手に入るもんでもないな。

 正直、どれもピンと来ないな。


「まあ、行ってみなきゃわからないよな」


 だけど目的考えてからって言われちゃったからなー


「まずは一歩踏み出そう」

 というわけで巣の中を彷徨くことにした。


「ソラ!」

 あっ、母さんだ。久しぶっ……

「ぶほっ」


「あんた全然会いにこないから心配したでしょ! 何も知らない内にリーダーになって、今度は出ていくってどういうこと!」


 あぁ、そういえば帰ってきてから、ずっとゴブリンのそばに居たから1回も会ってないや。


「いや、その、リーダーは……うん、俺も気づいたら……っていうか」

 詰まった。何を言っても許してくれそうにない。


「ごめん……」


「ゾラ〜ッ! いかないでぇえええ〜!」


 うわ、泣いた。泣き崩れた。床が濡れてる。スライムなのに泣きすぎだろ。

 ていうか体の水分大丈夫なの? 溶けてない??


「いや母さん、俺……帰ってきたらちゃんと話すから」


「話なんてどうでもいい! 一緒にいようよぉ〜〜!」


 ぐずぐずと抱きつかれたまま、俺はゆっくり言った。


「俺は外に出るよ。でも母さんを守るために、帰ってくる」


 ピタリと母の動きが止まる。涙でぐしゃぐしゃの目で、俺を見る。

 

「……戻ってくるの?」

「そりゃあ、戻ってくるよ。リーダーだもん」

 

「巣が嫌になったんじゃないの?」

 えっ? 何が?

 やっぱり話を聞いてなかったか。

 母さんは、不安そうにこちらを凝視してくる。

 

「違うよ。みんなのこと、守りたくて出てくんだ」


「……ソラ……」


 なんか納得してくれた……と思う。たぶん。泣きやんだし。


 ……が、そのあとも、「いっしょにいこう?」だの「リーダーなんてやめちゃえ」だの、

 なんか母さん病んでないか?このまま置いていくのつらいなー。


 でも、まあ――これがウチの母さんなんだよな。

 よそはよそ、ウチはウチだ。

 

 母さんにも挨拶するつもりだったけど、さっきので良いだろう。目的を考えなきゃだけど、やっぱり先に挨拶を済ませよう。

 次はゴブリンたちと話すか。


 ゴブリン達は狩りに出てなければ、大体は勉強&寝室&食糧庫にいる。慣れたとはいえ、単独行動するとスライム達が、『癖で』みたいな感じで、喰おうとするから危険だ。


「やぁ、みんな元気?」

 軽いノリで入って行くと、なんか空気重くない?


「ソラ、イク、ダメー」

「ソラ、デテチャウノ」


 おぅ……子供達の突撃を受けた。

 なるほど、これは母さんと同じパターンかな?


「出てくけど、ちゃんと戻ってくるよ」

「カリシニイク?」

「イツ、カエル、カ?」

 みんなこんなに話せるようになって……

 お父さんは感慨深いよ。お父さんじゃないけど。


「うーん、お勉強しに行くから、しばらくは帰らないかな」

 子供達は、話しながらも俺を殴る、蹴る。

 君たちもう少し戯れ方ってもんがあるんじゃないかな?


「ソラ、コトバ、ハナセル……イカナイ」

 どうした?良くわからないぞ。

 

「ソウダ、イカナクテイイ」 

 おおぅ、君たちの間では伝わるのか……

 言葉って難しいな……

 

「ソラ、イカナイ! ワカッタ?」

 とりあえず引き止めてくれてるんだな。

 

「ソラは行かなきゃいけないんだ。君たちの気持ちは嬉しいんだけど、皆が知らないことを勉強しに行くからね」

 ゴブリン達は、まだ1人称を理解できない子がいるから自分を呼ばないと通じないのが少し恥ずかしい。


 ゴブリンの子供達は、不満を訴える為か大人達の元へ走っていく。


ソラ、ココヲ、オレタチ、デテイク」


「えっ!? どうした? 住みにくいのか?」


「チガウ……ソラ、イナイ、スライム、コワイ」


「ああ……なるほど。他のスライムが君たちを襲うかもしれないって、不安なんだね」

 

「大丈夫。司会者と進化スライム達に守ってもらうから問題ないよ。スライム達も物が近づくと反射的に食べようとしちゃうだけで、本当に食べたりはしないと思うしね」

 食べないと思う……けど、そこはスライムを信用してないのは俺もだけどね……

 ここで不安にさせても仕方ないよね。


「ソウカ、セワニナル。アリガトウ」

 おぉ!リーダーも言葉めっちゃ使えるじゃん。

 お父さん感動……このネタはもういいか。


 さて、皆にちゃんと挨拶しよう。

 部屋の中にだけ通じるように、グループ念話で話しかける。

 俺も負けずに成長してるんだ。

「さて、ゴブリンのみんなは、ソラが外へ行くのを知ってるみたいだね。確かに外に勉強しに行く。だけど必ず返ってくるよ。この巣のリーダーは俺だから!」

 俺は手を天に突き上げる。

「それまでの間、この巣は君たちもスライム達と協力して守ってくれ。君たちも大事な仲間だからな!」


 ゴブリン達がみんな一斉に頭を下げた。

 えっ!?怖い。急に畏まるじゃん。

 まぁ、ゴブリン達は、スライム達と違って真面目みたいだからこれで良いのかな。頭を下げられたままゴブリンたちの部屋を後にした。


 さてあとはペコリとメリーかなー。ペコリはまぁ会えなくても良いとして、メリーは、ゴブリン達と一緒に居ると思ったんだけどなー

 メリーは挨拶したいけど、探す時間がなー

 目的も考えなきゃだし――あっ、探す必要無いじゃん。


「えっー、メリーさん、メリーさん、リーダーが探してます。広場へ来てください。」

「繰り返します。メリーさん、メリーさん、リーダーが探してます。広場へ来てください。」

これで広場に行けば解決だね。


 広場へ向かうと司会者が渋い顔していた。

 なんか嫌な感じがする……引き返そうかな。

 

「これっ、ソラ!何故戻る!」

 司会者さん、一人を呼び止めるのにグループ念話止めなさいよ……あっ、俺もしたわ。

 

 司会者にぷるぷると触れる。、

 正直、こういうとき接触しないと話せないの気まずいいよ。遠くから静かに話したい。

 

「いやーなんか言われそうな雰囲気出してたから」

「お主目的は定めたのか?メリーを探してる場合か!」

 

 そんなこと言われても挨拶大事じゃん。目的見つけろって言ったのアンタだし、俺は別に無くても――いや、無いのは困るか。でも外出てからでもよくない?

「まだ決めてませんよー、でもちゃんと考えてるんですよ? でも別れの挨拶必要でしょ?」


 司会者は、不思議なものを見るような視線を向けてきた。「別れの挨拶って何するんじゃ?どうせ戻ってくるのに必要なのか?」


 え゙っ、スライムまさかの別れの挨拶って考え方ない……マジか。

 確かに――そういえば勝手に行方不明になっても誰も心配しない種族だったわ。久々にスライムギャップを感じるぜ。

「いや、まぁ、俺がしたいから必要なんですよ」

 気まずい。今更いらなかったとか言えないし……


「まぁ良い。待ってる間にしかと目的を定めよ」


 適当に返事を返して考える。

 でもさっきの会話で思った。目的無いと帰るタイミングどうするって話だよな。


 真面目に考えよう。

 一つはスライム達を引越しさせる場所を見つけたいな。

 二つ目は、賢い種族の棲家を見つけるとかかな。

 でも賢くてもこの世界のこと知ってるとは限らないから、色んな場所を見て回ろう。


 ところでなんでメリーさんは来ないの?

 そして何故か広場には、スライムの海が出来てるんだけど、この子達はどうしたの? 


 ぴとっと背中を誰かが触れた。

「ソラ、そろそろ日が昇る。出発の時間じゃ」 

「司会者?」

「目的は定めたか?まぁどっちでも良い。ズルズル延ばしても良いことは無い。日の出と共に旅立つが良い」

 

 えぇ!目的拘ってたように見えたのに良いのかよ!

「目的は決めましたよ。賢い種族を見つけて話を聞いてきます」

 

 というかもう日の出か。

 メリーに挨拶出来ないのは残念だが、今日旅立つのは、もともと決まってた事だ。仕方がない。


 でもメリーはなんで来ない?

 えっ、俺が出てくのに何も思ってないんだろうか……

 それは寂しいな。

 

 俺は少し気落ちしながら、壇上から降りた。

 すると広場を埋めてたスライムが、二つに割れて通り道が出来る。 


「おぉ、モーセみたいだ」

 

 ん?よく見るとスライム君達、なんか潰れてるっていうか凄い詰まってるね。そこまでして道作ってもらって悪いね。


 洞窟の出口から少し光が差し込んでくる。

 俺は出口に向かって歩き出す。

 後ろを振り向くとさっきまで広場でギチギチだったスライム達が、見送りしてくれるようだ。


 ただ今度は通路にギチギチだ。

 相変わらずよくわからない種族だな。それとギチギチ詰まってる光景は、ちょっと怖い。

 別れの挨拶の文化はないみたいだけど、見送ってくれてるならきっと寂しいと感じてくれてるんだろう。

 

「じゃあいってくる!」

 

 俺はゆっくり光の射す方へ歩き出した。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ