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やわらかい侵略  作者: 新 絆
スライムの世界

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25/40

コミュニケーション

ゴブリンの巣に戻ってきた俺は、まずどうしてもやりたいことが出来た。


「11号、回転大好き君、話がある」

「なに?」

「なんですか?」


「キミ達も俺のように名前をつけないか? 特に回転大好き君は、名前が無いと大変呼びにくい」


「「確かに」」


 同意が得られて良かった。また食い物の話になるんじゃないかと不安だったよ。


「ソラ?でも僕は11号って名前だろ?」


 おっと、まさか偵察隊の呼称が、名前だと持ってるとはびっくりだ。

 

「違う。それは偵察隊の時にどの位置の報告かを知るための呼び方だ。個人を特定するものじゃない。」


 11号は何も伝わってなさそうな顔で、

「ふ〜ん、そうなんだ」


 うん、絶対わかってない。

 まぁこの際わからなくてもいいだろう。

「だから自分で呼ばれたい名前をつけてくれ」

「自分でつけるの?」

 


 俺は頷く。

「じゃあ僕はご飯!」

「うーん、僕は……」


 回転大好き君が、何も動じず会話続けようとしてるが俺は割り込んだ。

「待て待て待て待て、ご飯? 名前がご飯? 本気で?」

 俺は、慌てて問いただす。

「そうだよ。皆が僕をご飯って呼んでくれたら、美味しそうでしょ?」


 いやいや、美味しそうってどんな名付けだよ!

「待て、美味しそうというのは分かったが、オマエが美味しそうになってどうするよ? 食べられたいのか?」


 あっ!じゃないよ。そんな目を見開いて、いま気づきましたみたいな顔やめなさいよ。


「11号が食べるの大好きなのはわかった。もうオマエはペコリっでいいだろ。いつも腹減ってるみたいだし」


 ペコリは、嬉しそうにバウンドした。

「僕、ペコリ。ソラ、ペコリだよ」

 うん、ペコリだな。

 そりゃあ、今俺が名付けたからな。

 

 仕方がない奴だ。だけど素直に喜んでる姿を見ると悪くないね。

 

「ペコリ宜しくな」

 俺は手を伸ばす。


 ペコリは何かわからないまま、俺の真似をして手を伸ばす。

 俺は握手して手を話す。

 ペコリは、意味がわからないって顔をしてる。まぁ握手なんてスライムには無い文化だからな。


「ソラー、僕は?」

「いや、なんか自分で決めろよ」

 

 回転大好き君は、膨らんで不満そうな顔した。

「なんでさ! ペコリばっかズルい!」


 そんなこと言われてもなー。ペコリは一生食べ物の名前で考えそうだったからな。回転大好き君は、やっぱ回転にまつわる感じかなー

 

「じゃあ君はメリーとかどう?」

 メリーって女性名っぽい気がするけど、まぁ本人が嫌がれば他のにすれば良いからいいよね。

 

 俺が告げるとブツブツつぶやきが聞こえる。

「メリー? 僕メリー…… うん、いいね」

 

「ソラ、僕はメリーだよ」


 なんで二人とも俺が名付けたのに自己紹介してくるんだ?

「あぁ、メリー宜しくな」

「それで?ペコリもメリーは、これからどうするか決めてるのか?」

「ご飯!」

「どこか適当に行こうかと」


 ペコリは安定のメシ推しだな。メリーも早速どこかへ飛んで行きたいのか。


「そうか、少し手伝って欲しいことがあるんだけど?」

「美味しもの探すのか?」


 いや、ペコリ食い物から離れろよ。

「そうじゃない。ちょっとゴブリン達と交流が図れるようにしばらくここに住もうと思うんだ。その交流のために二人ともここに残って手伝って欲しい」


「まぁ僕は特に行きたいところがある訳じゃないし良いよ」

 

 メリーと話すと安心するな。問題はペコリだ。

「ペコリ、一応言っておくが手伝ったら美味しく食べていいとか無いからな」

「無いのぉ!!」

「ねぇよ。交流した相手を喰うなよ。」


「はぁ、じゃあペコリは、帰って良いぞ」


 ペコリは何故か膨れてる

「どうした? 自由帰って良いって言ってるだろ?」

「そうやって、またソラだけ美味しいの食べるんだ」


 何故、そうなる。

 空いた口が塞がらない。


「そんなことはないよ。さっきも言ったろ?ゴブリンと交流がしたいんだ」


「ふーん、わかった」

 でたな。

 絶対わかってないやつ。

 まぁいいだろう。


「それでな、ゴブリン達は俺達と話すことができない。というより彼等が何を言ってるかわからないのが問題だ」


 そう。こっちの意思は伝わるんだ。向こうの言いたいことがわからないことが問題だ。


「だから言葉を作ろうと思う」

 

 ペコリとメリーは二人とも目が点だ。

「言葉を作る? 言葉って美味しい?」

「今話してるじゃん?」


 ……

 ペコリを相手にしてると話が進まない。

「確かに俺達は話ししてるが、メリーは地面に言葉を書いて話せるかい?」

「書く?それは無理だよ。僕達は念話でしか話せないんだから」


 まぁ俺達スライムからすればそうなるよね。でもそれは文字というのが無いからだろう。そして無ければ作るしかない。

 

「そんなことないさ」


 俺は地面の小枝を拾ってあいうえお表を書く。

 

「コレが“あ”と読む。こちらが“い”。つまりこれらを覚えれば、地面に書いても会話は出来ると言うことだ」


 コレは凄いだろ?文字の発明なんて驚きだろ?


「「ふーん」」

 二人揃って意味わからんって感じだ。

 嘘だろ……俺の中ではかなり衝撃的には閃きだったのに。


「ごほんっ、まぁそのうちわかるだろう。要はこれをゴブリン達にも教えて、意思疎通したい訳だ。だから一緒に覚えてくれ」


「ソラが考えたからには、なんか面白くなるんだろ?まぁやってみるよ」


「ありがとう」 

 メリー!良い子だなー。今後とも宜しくな。俺は内心喜びつつも冷静にお礼をした。

 

「言葉って食べれないんだね……」


 おぅ、安定の返しだな。大丈夫なんだかんだ、オマエはやってくれるんだろう?

 

「じゃあペコリは帰るか?」

「やる……」

 すっごい不満そう。そっぽ向いてどうして欲しいのか……いや、それを聞いたら食い物の話になるだけだから聞かないけども。

 

翌朝。

 俺はゴブリン達を集めていた。広場にはゴブリンが集まっている。雄も雌も子供もいるが、広場に全員は入れなかった。その辺りは、今後の課題だな。


 ゴブリン達は、みんな興味津々でこっちを見ていた。


「さぁ、これからお前たちに"言葉"を教える」


 俺が宣言すると、ゴブリン達はざわざわと低い声で鳴き始めた。とはいえ、俺には何を言ってるのかはさっぱりわからない。だからこそ、今日の授業が必要なのだ。


 その後ろでペコリとメリーも並んで見学している。


「ゴブリンたちに教えるんだ?」

「ご飯まだ?」


 いや、お前らの反応の温度差が激しいな。


「教えるのはこれだ」


 俺は昨日作っておいた木の板を地面に立てた。そこには、俺が丁寧に書いた【あいうえお】が並んでいる。


「これが“あ”だ。これは“い”だ。これを覚えれば、お前たちは俺たちと“文字”で話せるようになる」


 ゴブリン達は、板の文字をじっと見つめている。中でも一番年長っぽいゴブリン──仮にリーダーと呼ぼう──が前に出てきた。


「ア……イ……ウ?」

「おぉ!そうだ!今のは“あいう”だ!」


 意外と飲み込みが早い!


「うわぁ、上手だね」

 メリーも感心している。


「お肉が出てくる魔法の言葉?」

 ペコリ、それは違う。


「……まぁ、覚えたらご褒美に肉は用意しようか」


「覚える!!」


 途端にペコリのやる気が爆発した。ゴブリン達もざわざわと嬉しそうにしている。なるほど、報酬制度は有効だな。 


「じゃあ、まずは“あ”を皆で言ってみよう」


「アー!」

 「アー!」

 「アーー!「ギャー」」


 広場中に不思議な大合唱が響いた。

 一部普通に叫んでる奴がいるな……

 うん、けどまぁ、全員すぐに出来るとは限らないし、ちょっとシュールだけど悪くない光景だ。


「よし、次は“い”だ」


「イー!」

 「イー!」

 「イーー!「ギャー」」


 なんだろう……音楽の練習みたいになってきたな。


 俺は地面に文字を書く係、メリーは板の文字をなぞって指導する係、ペコリは──


『にく〜♪』


 普通に念話で話してやがる。

 ……

 まぁ、テンション上げ担当ということで。


「よし、みんな、今日はここまでだ!次回は“うえお”をやる!」


 ゴブリン達は一斉に拍手(正確には手をバタバタさせる)して喜んだ。

 意外と楽しんでくれてるらしい。これなら順調に進みそうだ。


 こうして、俺たちの異文化交流の第一歩は、ゆっくりとだが確実に進み始めたのだった──。


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