共食
ゴブリン達がジリジリにじり寄ってくる。
正直怖い。
めちゃめちゃ怖い。
武器を手にしてないし、さっきまでの流れで急に襲ってくるとは思わないんだけど、コイツら一撃で核を狙ってくるから接近するの怖すぎるんだよな。
こちらが警戒して、警戒されても困る。
仲良くなるチャンスかもしれない。
けど怖い。怖いもんは怖い。
悩んでモジモジしてる間に目の前まで迫ってる。
あっ、周囲を見回してたら、目の前のゴブリンに掴まれてる。
もうどうにもならん。
攻撃されたら全力で回避だ。
よくわからんが、周りのゴブリンみんなに持ち上げられてる。
えっ? ちょっと、皆さん?
なんだこれ?
そのまま上に飛ばされた。
おぉ! これは胴上げだ。ゴブリンに胴上げの文化があるのかー
どうも、どうも。
こうなると是非とも話したいけど、この子達「ギャギャ」しか言えないから無理かなー
「ギャギャギャギャ」
「ギャギャ」
おいキミ達、このまま連れて行く気か?
落ちても怖くないけど、一応降りとくか。
俺は着地の瞬間小さくなって、ゴブリン達の手から溢れ落ちた。
「ギャギャ!」
「ガギャギャギャ!」
ゴブリン達は、突然殴り合いを始めた。
ちょっ、ケンカは止めて。誰のミスでも無いよ。
俺は殴りあってるゴブリンの間に挟まって緩衝材の代わりをする。
ほら、大丈夫だよ。
俺は、問題無いよって気持ちを込めて笑顔を向けてみる。暗いから俺は見えないが、コイツらには見えるんじゃないかと思うんだが、伝わったか?
今度は、俺を殴ったやつが皆でボコボコに……
嘘だろ。全然分かり合えない。
俺はもう一度間に挟まり、全員の攻撃を受け止めて、離さない。
止めなさい。まったく。
ゴブリン達は、俺から腕を抜こうともがく。
「キミ達、せっかく助かったのに暴力は止めなさい」
ゴブリン達は、うんうんと首を縦に振る。
うん、分かればよろしい。
俺はゴブリン達を解放する。
……
えっ? 今、伝わったね。
「会話出来る?」
「ギャギャ」
「ギャギャギャギャ」
……わかんねぇ。
結局、俺の言葉はわかるけど、向こうの言葉は「ギャギャ」しかない。
そもそも俺の念話って話してないのに、会話出来る意味がわかんねーんだよな。
一方通行で通じても意味ないし、コイツら話せないし、言語を使うってのは、やっぱり難しいんだなぁ。
その点、防衛蟻達は話せて良かった。
アイツらは何語を話してたんだ?
なんで俺は、意味がわかったんだろう?
とりあえず話を戻そう。
「巣になんで連れてきた?」
「ギャギャ」
ゴブリン達が手招きしてる。
ついていくと、中には少し苔が光って明るくなっていた。それと俺が岩を砕いたせいで、だいぶ隙間が広がってる所が増えてしまった。申し訳ない。
入り口から下った道を歩いていくと、少し開けた場所に出た。広場から繋がってる場所が、5箇所見える。
「この先はどうなってるんだ?」
「ギャギャ、ギャギャギャギャ」
うーん、説明してくれてるのかもしれないが、わからん。
「すまないが、キミ達の言葉はわからないんだ。ちょっと先を見てきても良いか?」
それぞれの入り口は、すぐに行き止まりで部屋のようになっていた。奥の2つは、行くのを嫌がられたが、おそらく一つは、さっき見た子供たちのの部屋だろう。
というか単純に狭いな。人数に巣の大きさが合ってない。コレが理由で、俺達の巣を襲ってたのか?
各部屋に繋がってる広場にの中央に連れ戻されると俺についてたゴブリンが叫んだ。
「ギャギャー」
すると奥の入り口の一つからネズミやら狸やらを皆で運んできた。どうやら食糧庫だったようだ。
どうやら食べろということらしいが、これはどのタイミングで食事に手をつければいいんだ?
カッカッ、カッカッ、カッカッ
悩んでたら例の太鼓みたいな音がなった。そういえばこの音の真相もまだわからんな。
「ギャギャー」
「ギャギャギャギャ」
ゴブリン達が騒ぎ出した。皆外へ飛び出していく。
「ど、どうした? なんかあったのか?」
「ギャギャー」
聞いてもわかんなかった……
とりあえずついていこう。
「ソラー! いるんだろう?」
あっ、11号達忘れてた。
というかヤバい。あいつならゴブリン喰っちまう。
「11号待機! 待機だぞ! 何も喰うなよ?」
「おっ、いるじゃん。喰っ……喰わないぞ。だ、だ、大丈夫」
おい、全然大丈夫そうじゃない。
「マジで喰うなよ、今からそっち行くから待機! 待機だぞ!」
巣を出るとゴブリン達が、11号達を取り囲んでいた。
「待て待て待て、違う違う違う!!」
俺は慌ててゴブリンたちの前に飛び出した。
「ギャ?」「ギャギャ?」
ゴブリンたちは一瞬動揺したが、まだ警戒を解いていない。
「11号! 動くな! 頼むからお前も動くな!」
「え、あ、う、うん! わかった……!」
微妙に半透明の体がプルプルと揺れてる。緊張してんのか、お前。
ゴブリンたちは、俺が割って入ったことで少しずつ威嚇の手を緩め始めた。
が、完全に信用したわけじゃないらしく、まだ周囲を取り囲んだまま、鋭い目つきで11号を睨んでいる。
「よしよし……。えーっと、みんな、こいつは俺の仲間。友達。敵じゃない。わかった?」
慌てすぎてこっちの意思は伝わるの忘れてた。
「ギャ……? ギャギャ……ギャ?」
ゴブリンたちが互いに顔を見合わせ、小さく鳴き声を交わしている。
さっきまで殺る気満々だったのが嘘みたいに戸惑っている。
「ギャギャギャ……ギャ……」
それでも、ゆっくりと武器を下ろし始めた。
どうやら、なんとか誤解は解けたらしい。
「ふぅ……助かった……」
「ソラ何食べた?」
相変わらず食うことしか考えてねぇな。コイツ何しにしたんだよ。11号よ、隣の回転大好き君が、ビビリ過ぎて放心してるぞ。
「まぁゴブリン達に食事は振る舞ってもらったな。それで?お前は何を食べたんだ?」
「あぁ、さっきまでは大きな蛇がいたから食べてたんだけど、ゴブリンがうるさくてまだ……」
11号は全て言い終わるまでに慌てた顔をしてた。
それはそうだろう。さっきまで喰うなって言ってた本人に向かって何を喰ってたか話してるんだからな。
「11号よ、蛇は、俺とゴブリン達が倒したんだ。お前は何も手伝ってないくせに食ったのか!?」
「いや、戦いは見てたけど倒したのはソラだろ? なら俺が食べてもいいだろ?」
えっ?
何故?
どういうこと?
このルールわからないの俺だけ?
「だって、ソラが倒したのは、俺の食事だろ?」
はっ? 何だそのガキ大将理論は!?
「アホー!! そんな決まりないわ! お前はしばらく罰を与えるからな!」
「まぁ……無事で良かったけどな」
俺は溜息をつきながら周囲を見回す。
ゴブリン達はまだ完全に警戒を解いてはいないものの、緊張はだいぶ緩んでいる。
「ギャギャ……」「ギャギャギャ」
数匹が近寄ってきて、俺と11号を交互に見比べている。
何言ってるかまったくわからないが、やはりまだ不安は残ってるようだ。
「大丈夫だって、さっきも言ったろ? こいつは食べない。たぶん」
「食べない食べない! ……たぶん」
「お前が言うな!」
俺は11号の頭をポヨっと小突いた。
まったくアレだけ注意しても食べそうで怖い。
「まぁ、とりあえず蛇が他のに喰われるのは癪だから俺も喰うことにするけど、ゴブリン達は蛇喰うのか?」
「ギャギャ?」
何やら首を傾げているが、これは言ってる意味が伝わらないのか?
「えっと、ゴブリンは蛇食べれるの?」
今度は縦に首を振ってくれた。
「そっか、じゃあ暗いけどあの蛇放っとくと他の奴に喰われちゃうから、捌いて巣に持っていかないか?」
「ギャギャ?」
また首を傾げてこっちを指差してる。
うーん、あの指の意味は何だろう。俺……
俺のモノみたいなことかな?
「俺は、キミ達が捌いてる間に一部を食べさせてもらうから、自由に持っていって良いよ」
「ギャギャー」
ゴブリン達は、飛び跳ねて喜んでる。
なるほど、担がれてすっかり忘れてたけど、この蛇俺の獲物だと思って手を出さないでいてくれたのかもしれないな。
俺は蛇の頭の方から3分の一くらい頂いた。
ゴブリン達も3分の一くらい中心を捌いて持ち帰った。
あとの3分の一は、11号と回転大好きスライム君の腹の中だ。
許すまじ……




