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やわらかい侵略  作者: 新 絆
スライムの世界

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21/39

襲撃

 前回のゴブリン発見の事件から7日間が経った。やっぱりスライム達は、もう気が緩んでしまった。


 それにしてもゴブリン達はまったく動きが無い。諦めたのか、襲撃の準備を進めているのか。


 俺自身は、限界が近い。毎日気を張ってるし、スライムは睡眠を取らないせいか、精神的な体力が全然回復しない。だんだん体の動きが鈍くなってる気がする。


 しかし気を抜いてる場合ではない。

 俺の勘でしかないが、ゴブリン達は絶対諦めてないと思う。それにアイツらがすぐ動かなかったことで、こちらも対策は出来た。


「ソラ、ゴブリンらしき反応がある」


 やっと来たか。

 

「わかった。みんな気づかれないことを最優先にしてくれ。問題無さそうなメンバーは、そのままゆっくり後退してくれ」


 今この巣の周りは、鳴子のような罠を張ってある。

 激しくぶつかると音を出す植物とツタを使って張って用意した。


 小動物に引っかからないように、そこそこの高さに張っているが、草むらに紛れているから引っかかるだろう。

 

 仮に気づいたとしても、通るのに邪魔だから排除されれば、監視場所の近くに、激マズ木のみをぶら下げてある。これで切られた時は、木のみが落ちることで、警戒が出来る想定だ


 巣の中の防衛もある程度問題ないだろう。

 この巣は、入り口がそこまで広くない。

 広場まで通路は徐々に広がるとしても、入り口からしばらくは3人で歩ける程度の幅しかない。


 入り口から5人程度歩ける幅になったあたりで、粘着液でコーティングされた石の山を作ってある。これを2段構えにして、後方には投石部隊だ。


 それに投石部隊の間に、痺れ茸スライムと岩石スライムが控える。これでなんとかなると良いんだが。


 俺も後方で、ゴブリン達を待つ。

 今まで戦ったことはあるが、集団戦を率いるのは始めてだ。ここで負けるわけにはいかない。

 

 洞窟は、ゴブリンが近づいてるとは思えないほど静かだった。


「ゴブリンがもう直ぐ巣に入り……」

 カッ、カッ、カッ


 偵察部隊の念話が途切れると同時に、太鼓の縁を叩くような音が聞こえてきた。これは前の偵察でも聞いた。ゴブリン達の何かの能力って事だ。


 ゴブリン達が、防壁の石を駆けあがろうとしている。

 

「投石開始!」

 俺の前と上から投石が開始される。


 ギャッ、ゴッ

 

 ゴブリン達は、石を駆け上がって転んだところへ投石が降りかかっていく。


 ヨシッ! 狙い通りだ。人数も思ったより少ない。これならいける!

 

 とりあえず前にいるゴブリン達は盾を持っていたようだが、転んでくれたおかげ役に立ってない。


「ギャッギャッギャッ」


 前が転んでるのを見て、洞窟の壁側を蹴って石を飛び越えてくるゴブリンが現れた。


 森の移動も似たような方法で移動してたな。


 ギャー、ギャー


 投石してるが、やはり蟻達と違ってなかなか倒せない。とりあえず3体くらいは倒したか。


 投石部隊は、天井に投石役と石の補充役に分けて配置。石補充は数珠つなぎになったスライムで、石をリレー方式で運んでくれてる。


「投石やめ」 

 グギャ、グギャ


 ゴブリン達が2列目の防壁を越えてくる。奴ら動きが静かだな。というかなんか軽く浮いてる?

 走り方がちょっと浮遊してる感じだ。

 

 ガンッ、ガンッ!

 

 岩石スライムとゴブリン達が激突した。

 ゴブリン達は棍棒で岩石スライムを叩いてるようだが、スライムらしからぬ音が洞窟に響く。

 

 ブワッ!

 岩石スライムにゴブリンか集まってるところに黄色い粉が舞った。痺れ茸スライムの痺れ粉だろう。岩石スライムは平気らしい。


「ギャギャギャ」

 

 痺れ粉で動けなくなったゴブリン達が悲鳴をあげている。


「突撃!」

 ゴブリンに待機していたスライム達が襲いにかかる。


 後ろのゴブリン達が、粘着液から抜け出して前に進んでいるが、彼方此方に石がくっついたままだ。


「ギャー、ギャー」


 一匹のゴブリンが何か大声を出した。

 

「ガギャ、ガギャ」


 周りのゴブリン達がザワザワしてると思ったら後ろのゴブリン達が、退却を始めた。


 マジかよ! アイツらに退却って考えがあるなんて、追いたいが、あの速度に追いつけるのは、俺くらいだ。


 くそっ! また失敗だ。これで対策してることもバレた。諦めてくれるなら大勝利だが……


 次はどこまで対策する。諦めさせる方法はあるのか……

 

「ソラ! どうする?」


 はっ! 司会者の声で我に返る。

 ダメだ。ネガティブになりすぎるな。

 まだ今回の戦いは終わってない。諦めずここで追いかけよう!


「あとは任せた、司会者!」

 

 俺は回転して勢いよく転がる。

 岩石スライムを踏み台に、防壁を飛び越えた。


 洞窟を出ると草に踏み入るゴブリンの姿が微かに見えた。

 俺は、そのまま森の入り口まで進み、木の枝へ飛びつき追いかけた。


 ゴブリン達は木を蹴り飛ばしながら移動してる。たまに距離がある時の動きがやはり不自然だ。

  

 やっぱりアイツら少し浮いてやがる。

 というか背中に黒い小さなコウモリの羽みたいなのが生えてるんだが……

 俺の知ってるゴブリンのイメージとどんどんかけ離れてくな。


 俺も木の枝から木の枝に飛び移りながら追いかけるが、ゴブリン達も後ろを確認してるから追いかけてるのはバレバレだろう。


 何も考えずに追いかけ過ぎた。

 っていうかさー、アイツら全員で迎撃しにきたら俺やられるっぽくない?


 自分で言ってゾッとした。

 軽く思いついたら、凄く納得してしまった。

 俺は体を小さくして、最後尾のゴブリンが辛うじて見える程度の距離をとってから再び追いかけ始めた。


 少しビビったおかげで冷静になれた。

 慌て過ぎてアドレナリン出まくってたわ。


 先ずは、アイツらの巣と人数がわかるのが一番良い。

 次に出来るだけ生態を知りたい。今のところ飛行は移動の補助のようだが、もっと飛べるんだろうか?それにあの謎の音も何をしてるのか?


 カッ、カッ。


 やっぱり、あの音がした。俺は身動きせずに周囲を伺う。

 ……

 特に何もないな。

 少なくて攻撃では無さそうだけど。じゃあ何?って話なんだよな。威嚇音とかなのかなー。

 

 それに様子見してる間に、ゴブリンも見失ってしまった。一応、警戒しながらゆっくり進んで行く。


 明らかに目の前の森の雰囲気が変わった。

 木がバカでかい。目の前の木は構造ビルのような高さだ。いや、目の前の木だけが特別って訳じゃ無さそうだ。


 木の枝もだいぶ高い。

 地面から体を伸ばしても届かないな。


 それに霧がかってるみたいに、景色が薄っすら白い。

 

 とりあえず木の上に登ってみる。

 上まで登ってみたら当たり前だが高い。

 今までの森より倍以上高い。

 背の高い木の森の方は、雲がかかってるみたいだった。


 ……

 

 えっ? 森って急にこんなに木のサイズ感変わるもの?この世界だから? 誰かに話聞きたい。


あっ、違う。そんなこと考えてる場合じゃない。大自然のスケールに感動して、思考が逸れてた。


 ゴブリン達はこの奥に住んでるんだろうか? 今までの森よりもなんか敵多そうだけど、アイツらは大丈夫ってことだろうか。


 でもそれなら明らかに植生が違う場所にあるスライムの巣をなんで襲う? 意味わかんなくない? 普通に考えて今の住処に問題があるから他人の住処を狙うんだよな。


 そう思うとこの辺りまでに住処がある可能性高い気がするね。


 うわぁ、こんなところにコウモリがいる。洞窟のヤツらより小さいけど、襲ってくるかなー


 俺は腐葉土を食べながら歩く。

 なんかデカい鳥も飛んでるように見えるが、アレは襲ってくるのか? 強そうだな。


 左右に植生の違う森を見ながら散歩していた。

 しばらく歩くとなんか前の方が少し開けてるように見える。


 近づいてみると、少し斜面になって降っていた。降った先には、少しだけ広場のように開けていて、日が差し込んでる。


 広場の奥には大岩が見える。

 岩がお互いが支え合ってるように立っている。

 その周りには柵っぽいものが見えた。


 ゴブリンの巣、アレじゃね?

 でもここからだと広場に出なきゃいけないから、バレバレだな。反対側に回りつつ、アイツらの動きを見よう。


 移動しながら様子を見てると、ゴブリンが出てきた。

 やはり住処だな。

 とりあえず気づかれないように、小さくなって待機する。


 カッ、カッ、カッ。


 アイツ口を開けているみたいだが、あの音って口から出てんの? 威嚇ならもっと激しい感じになるよな? 威嚇でも攻撃でも無いとすると、本当になんなのかよくわからない。他に動物が音出すのって求愛とか?

 

 でも何かを襲ってる時にするもんじゃねぇよなー


 まったくわからん。

 さて、大分ゴブリン達の巣には近づいた。

 これからどうやって人数を確認するか……

 

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