守りたいもの
偵察隊とも少し話し合い、連携の大切さを話した。
報告は前回同様の番号制のまま、俺のことは『ソラ』と名前で呼んでもらうようにする。
「えー、じゃあ俺もソラって呼んでくれ」
「名前って何? 美味しい?」
何故、同じ名前にしたくなったんだよ。誰かわかんなくなるだろうが!
そもそも今から名前をつけたところで、俺が覚えられない。
そしてお前らも絶対忘れるだろうが!
ふざけるなって話だ。
だから今まで通り番号でゴリ押した。
再び、偵察隊で偵察を開始した。
前回の偵察で失敗して人数が減ってしまった為、各グループから1名出してもらい、今度は、11プラス俺で偵察を行う。
今度は2人1組で、木の上に必ず待機する形で偵察してもらう。また、今回は扇の中心までは、俺と移動する。あとは各自の方向に進み、念話の遅れで、大体同じ距離になったら待機という形だ。
「1」
「何もありません」
「2」
「普通」
「3」
「特にないかな」
今回は、定期的な報告と、互いに目が届く距離での偵察を徹底させた。どちらかに異変があっても、異変自体は、こちらに知らせられるようにだ。
2度も犠牲を払って、何も無しというわけにはいかない。前回より各隊の間が開いてるから抜けてくる可能性もある。
ゴブリンの目的は何なんだろう?
なぜ、スライムを狙う? 食うわけでも、縄張り争いでもない。それにしては……執拗すぎる。
防衛本能みたいな理由だとしても、偵察隊ばかり狙われてるのも気になるな……
奴らは、明確に俺たちを倒すべく偵察隊を狙ってると思う。理由はわからないが、現時点でしっかり迎撃しないと巣まで来る気がする。
みんなは頭が悪いんじゃない。考えないだけだ。俺は、人間の感覚があるから考えられる。でも、スライムの感覚が多分違う。だから俺は、みんなが全力出来る環境を作るのが役割だ。
日も暮れた。前回の感じから言えば、ゴブリンは夜になってから攻めてくる。しかも偵察を標的にしてる筈だ。
念話が飛んでくるが、ノイズだらけだった。
「が……が……」
くそっ! やっぱり念話が出来ない何かがあるのか!
俺は木の頂点から全力で、空を飛ぶ。
「行くぞ、下からついてきてくれ!」
俺の相方に伝言して急ぐ。おおよその距離を飛んだら魔力視を使うと、ニ匹の魔力体と薄っすら一体分の魔力が見えた。
アイツら一体で、偵察隊狩ってたのか……能力がなんなのかわかんないが、まずは仲間を助けるのが優先だ。
俺は薄っすらしている方の魔力体に突っ込む。
「ギィィ」
くそっ、想像以上の速さで避けられた。
ゴブリンって移動速いのかよ。
俺の知ってるゴブリンはもっと遅い印象なんだが。
ゴブリンはそのままこちらの様子を伺っている。
俺は仲間二匹をチラッと見た。
特に問題は無さそうだ。良かった。
カッカッ
なんか太鼓の縁を叩いたような音がした。
一瞬、ゴブリンから気が逸れた隙に、ゴブリンが撤退していく。
くそっ、仕留められないにしろ、最低でも抗戦して情報が欲しかった。
それに身軽過ぎる。
イメージでは、もっと雑にな草をかき分けて進みそうな感じなのに全然違うじゃねーか。
ゴブリンは木を蹴って跳ね、木から木へ音もなく移動していく――まるで忍者のようだ。
あっという間に遠ざかっていく。
追跡したい――が夜は無理だ。
あの暗殺者みたいなフクロウがな。
気配なく来るから厄介すぎる。
仕方ない朝まで待機して、撤退だな。
みんな中心に向かって、少しだけ撤退するように促した。
他のメンバーは、特に何もなく無事だったようだ。俺は、相方がゴブリン以外に襲われないように急いで戻る。
「11番すぐ戻る。木の上で待機していてくれ」
返事が無い。
急げ、何かあったかもしれない。俺は急いで、来た道を戻ると相方は、木登りをしてる最中で、狸2匹と戦ってたようだ。
「俺が片方の狸に飛び込む! 狸が11から目を逸らしたらそっちはお前が襲え!」
俺は木を登り始めていた狸に横から突っ込み、その勢いで狸を木から引き剥がして飛んで行く。相変わらず、角でなんとかしようジタバタしてる時間はヒヤヒヤする。
こちらが倒してる間にアッチも終わったみたいだ。
襲われてヒヤヒヤしてると思ったが、呑気に話しかけてきた。
「美味しかった。夜は食べ放題かもしれない」
心配したのにこれか〜 まぁ知ってた。
スライムは恐怖心とかやっぱ無いんだな。
そして俺と離れた短い時間で何を食べたんだろう。俺も食いたい。
「とりあえず木の上で、朝まで待機しよう」
「はい、帰りにまたご飯食べよう」
うん、食べるけども、なんか君が言うとそれしか考えてなさそうに聞こえるね。なんで偵察隊に選ばれたんだろう。
日が明けた。
偵察隊、全員の無事を確認して巣に戻ることにする。
相方と一緒なので、歩いて帰るため草に埋もれてなんも見えない。
「うぉっ」
目の前の草むらを書き分けて、角が突撃してきた。
とっさに核を逃してそのまま取り込む。
それにしてもこの狸多いな。
この前のネズミみたいに異常発生してるとか嫌だぞ。
大量に襲われたらネズミの比じゃないくらい恐ろしい。
「ソラ、なんか食べた? 俺は虫しか出なかった」
「あぁ、角生えた奴食べたぞ」
「ズルい、アイツ美味い! 分けてくれ」
いや、見ればわかるじゃん。
俺らバックとか無いんだから持ってないよ。
「おーい、ソラ、無視すんなよ〜」
なんか急に馴れ馴れしくなった気がするんだが、気のせいか?
「どこに持ってると思ってんだよ。全部喰ったよ」
俺は、雑に答えてそのまま進む。
何やら後ろから何か聞こえるが、無視だ無視。
ようやく巣について、偵察隊が揃った。
ちなみに待ってる間も、頂戴、頂戴と11番はうるさかった。勘弁しろよ。
さて本題に戻ろう。ゴブリンは群れじゃなかった。でも偵察隊を狙ってるってのは、確定だろう。最初の時は、二箇所襲われてるんだ。一匹ってこともないし、俺が聞いた事件でも相当数いなくなってるはずだ。
そうなると目的はココだと思う。ゴブリン達は、たぶんスライムの生態として偵察隊がいることを知ったんだ。そして適当ということも知ってるんだと思う。
今回は二匹で組ませたから、虚をつけた所までは良かった。でも奴らも知恵があるみたいだし、今回のことで警戒されると二匹でも厳しいかもしれない。
そうなるとゴブリン共は、次にどう動くのか。
そして俺達は、どう動くべきか。
もう今日は考えてたばっかだな
……誰か代わって欲しい。
まぁ、誰も代われないよな。
スライム達は、危機感抱いてないんだし――仕方ない。
もし奴らに知恵があるなら、今回を受けて斥候を増やし、偵察隊の壊滅を狙ってくるだろう。でもそれが出来るなら最初からやるのでは?つまり斥候は増やせない理由がある? じゃあ諦めるか? ここまでスライムを襲った後にそれは無いだろう。となれば、警戒すべきは強行突破だな。偵察を無視して、巣を襲撃。
あり得るだろう。
こちらとしては、偵察を強化するのは有りだが、襲撃を即断するかわからないし、時間が掛かれば、自由奔放なスライム達は……飽きるだろう。
とれる手段は……
「ゴブリン達に、ここを襲わせようと思う」
「なんで? こっちから襲えば?」
「今まで通り偵察してればいいんじゃ無い?」
「そもそも、なんでこんなことしてるの?」
直感的なスライム達の意見は、あまり参考にならない。
でも納得はしてもらえないと、守れない気がする。
「相手の巣も人数も分からない。今まで通りで偵察隊が犠牲になるのは嫌だ。 偵察隊はこの近くで、お互いをフォローしながら守りたい。出来るか?」
みんな顔に?が浮かんでる。
「つまり偵察は、ゴブリンが来たって分かれば良い。巣が防衛準備をする時間は稼がない」
これ以上、偵察で犠牲者を出したくないんだ、わかってくれ。
「「わかった」」
スライム達は短絡的だが、素直なところがとても良い。俺は、みんなを絶対に助けたい。あとは、防衛する各グループの話し合いの結果次第だ。
少しでも自分達が守れる案を出しといてくれよ……
ゴブリンとスライムの戦い。この物語以外の世界ではどういう弱肉強食の世界なんだろう。




