奴隷狩り蟻
蟻の世界意外と書くこと多かったな
あれからもう一度、奴隷狩り蟻と遭遇した。
しかし一度、経験したおかげで、同じように吹き飛ばして特に問題は起きなかった。
今は、目的地に着いてコロニーの完成待ちだ。
そして俺の上には、女王と王女がご機嫌にくつろいでいる。
「お母様、ソラ様の上は気持ち良いですね」
「そうだな。我は初めて安心してくつろいでる気がする」
なんだ、これ?
俺は、椅子か?
でも確かにスライムの上に寝れたら超気持ちよさそうなウォーターベッドになりそうだな。
「ソラ様」
《なんでしょう?》
「そろそろ私の名前は決まりました?」
「あっ、我の方はどうだ?」
えっ? なまえ……? そんな話あったな……
忘れてたよ。いや、というか護衛しながら名前考えるって真剣に護衛してたら無理だろ。
《いや〜、護衛任務をしてましたので、まだ考えてませんね》
なんか言い訳してるみたいで、罪悪感があるのはなんでだ。
「そうですか……」
王女はどこか寂しそうだ。
「それはそうだな。しかし今はコロニー完成待ちだ。少しは気を抜いて、我の名前を考えてくれて良いぞ」
女王は、腕を組んで、偉そうに言う。
げっ、のらりくらりかわそうと思ったのに……
「そうですね。それがいいです。ソラ様、こうして近くにいるんですし、お話ししながら私の名前を考えてください」
「王女よ、我が先だからな。」
「何故ですか?私が先にお願いしたんですよ」
あぁ、また始まった。なんでこの二人そんなにいがみ合ってるの。出会った頃は、二人とも気品みたいなのがあったのに……
《まぁ、まぁ、名前なんて考えるというより、思いつくものですから、どちらが先かなんて運みたいなもんですよ》
「そうか……我が先が良いんじゃが……」
女王様、小声なら聞こえないと思ってるかもだけど、丸聞こえだよ。お母さんなんでしょ? もう子供に譲りなさいよ。
その後もしばらく、女王と王女は、なんだかんだ、言い合ってた、それを聴きながら周囲を気にしてると、護衛隊長さんがやってきた。
「ソラ殿、そろそろ交代です。食事を探してきてください」
《ありがとうございます。 それでは、女王様、王女様降りていただけますか?》
「『嫌です』じゃ」
なんでハモった。仲良しかよ。
嫌って言われても二人を乗せてたら獲物を捕まえられないんですけど……
…………
俺は無言で、圧をかけてみた。
「仕方ない、王女降りるぞ」
女王は、首を振りながら渋々って感じだ。
「嫌です」
王女は、顔をプイッとした。
「このままではソラ殿が食事出来ないのだ。困らせるでは無いわ」
それは、そうだけど、説得力無いよね。
「お母様には言われたくありません」
同意! 激しく同意!
だけど、正しいのはお母様ですよ、王女様……
「それに、ソラ様も巣の中で食事されれば良いじゃないですか?」
それは無理ですわ〜 全然足りないもん。
「なるほど、ソラ殿それでも良いか?」
女王様ニヤニヤするのやめようね。
《申し訳ないのですが、たぶん全然足りませんので、自分で取ってきます。なので、降りていただけますか?》
ふぅ〜 やっと解放されたよ……
女王、王女コンビ日に日にパワーが増してる気がするわ。
とりあえず木に登って、ある程度の位置を覚えて行う。
さて、適当に巣から離れながら探そう。
途中、見つけた動物を狩りながら、少し落ち着いた。
よし、この辺りで試すか。
あの蟻喰い鳥も三匹以上食ったし、コウモリの感じからして、何か目覚めてる気がするんだよな。
とりあえず、手を伸ばして「はっ!」
……
なんも出ないね。
どうにかして新しい事は出来ないだろうか。
ザッ、ザッ、ザッ
また、出たよ。
これはまた蟻だな……
やり過ごせ……「警戒ー、警戒ー」無いね。
あっという間に、奴隷狩り蟻達に囲まれた。
「また、スライムだぞ、今日は、多いな」
「防衛蟻達の護衛といい、スライム厄日だ」
なんか好き勝手言ってるけど、それ同じスライムだよ。
でも、ちょっと多いな。
コイツら俺の倒し方知ってるのかな。
「かかれ!」
全方位から蟻達が迫ってくる。
ここは、やっぱ一点突破だね。
出来るだけ、回転数を上げて、目の前に突っ込む。少し回転し過ぎたせいか体が熱い。
「吹っ飛べ!」
えぇぇぇぇー
叫んだ瞬間、俺の体が浮き上がって、転がってる勢いも合わさって吹っ飛んだ。
「逃げたぞ!」
「いい、追うな!」
そんなバカな、まさか俺が飛ぶとは……
とりあえず止まりたいが、そこらの木にぶつかるの待ちだな。
《ぶへっ》
ふぅ、予定通りだな。
完全迷子コースだけども、とりあえず風を起こせたって事だな。これは魔法って事なんだろうか?
さっきは、回転を早くするために、体内をグルグルしながら、俺はさっきの感じを思い出しながら一つ、一つ再現していく。
おっ、ここだ、回転を加速しようとした時になんか、熱くなるぞ。これで転がり出さずに前にぶつけるつもりで。
《はぁっ》
うん、たぶん出た。
確かに風だな。蟻達が舞い上がってたけど、扇風機よりは強いって感じだろう。
次は回転しないでも溜められるかだな。
体内の魔力を動かすイメージで……
めっちゃ体内動いてる。
魔力じゃなくて物理で。
なんでだよ!
人間なら血液を動かすとか、心臓からとかなんかあるんだろうけど、こちとら体内全部、液体だっつーの!
どうやって魔力と体内の感覚を分ければ良いんだよ……
まぁ、考えても仕方ない。
とりあえず体内動かして、魔力を使えば良いか。
今度は、溜めずにやってみよう!
体内で、弓を引くように後ろから前にぶつける!
《はっ!》
つい、声出ちゃうな。でも風も出てるから良いんじゃないか。
問題は使い道だな。飛び上がるといっても割と低かったからイマイチだし、蟻飛ばすのも、危険度が少し下がるのはありがたいけど、その程度だよな。
とりあえず戻る方向を確認しよう。
また蟻に遭遇するにしても、次は食べないと次の休憩まで持たないだろうな〜
木の上から確認したら、迷子になるほど離れてなかった。良かったと思ったが、そうなるとさっきの大量の奴隷狩り蟻も近くにいるってことだ。
やっぱり申し訳ないけど、餌になってもらおう。
幼虫を攫うっていうのが、味方しにくいよね。
森の中をゆっくり歩く。今度は、囲まれスタートは、嫌だな。と思ってたら、草が顔出した瞬間、ムキムキな蟻さんと目が合った。
「警戒ー、警戒ー」
奴隷狩り蟻の一匹が逃げながら叫んでる。
あらっ、運が悪い。
手を伸ばして、そのままいただきます。
気づかれちゃったかな。
とりあえず逃げた方向に、木を登って枝を渡って進む。
うわぁ、やっぱり囲もうとしてるね。こういうの鶴翼の陣っていうんだっけ?連携が凄いな。
とりあえずVの字で取り囲みに来てる蟻達の一番下の部分に風魔法をぶっ放す。
「うわぁ〜」
「蟻喰鳥か!?」
蟻達が騒いでいが気にせず、舞い上がった蟻達を一斉に、吸収する。木の枝から蟻達の間に飛び降りる。
体を捻り、雑巾を絞ったかのような形で、陸地に降りた。
《吹き飛べ》
風を放つと同時に、体から力を抜いた。
全方位に風が吹き、蟻達が舞い上がる。
おぉ、良い感じだ。
浮いてる内に出来るだけ吸収する。
拾いきれず、地面に落ちた蟻達に立ち向かってくる者と逃げ出す者に分かれ始めた。
立ち向かってくる者を一斉に吸収しようとして、万が一核に攻撃されると厄介だ。ここは、一度逃げる蟻達を追う。
追いながら、後ろからくる蟻達をつまみ食いする。
しばらく追いかけると、地面にボコボコ穴が空いていた。
巣だ。
巣を襲撃する前に、後方の残り少ない蟻達を一掃しよう。
防衛蟻達と違って巣穴がたくさんあるな。
試しに蟻穴に風を吹き込んでみる。
うん、小さい声が聞こえる。まだいるな。防衛蟻のことを考えると壊滅させとかないと危険だよな……
まずは木の枝を無理やり突っ込んで、穴を塞ぐ。
一つだけ残した穴に体を突っ込んで、侵入していく。
おぉ、暗くてなんも見えね〜
とりあえず、部屋という部屋を探らないと。
なるほど、王女の、言ってた通路の感触ってのがなんとなくわかった。全部がツルツルってわけじゃないんだな。多分、大事なところに近いほど、ツルツルにしてるんだ。
巣穴がすげぇ複雑だ。
こりゃ、壊滅は無理かもしれない。
うぉ、なんか刺さった。
これ……木だな。
自分で塞いだ穴に来ちまった。
こっちか……、あっちか……、そっちか……
しばらく彷徨った。
迷ってる間に、出会う蟻達。
「喰らえー」
「死ねぇー」
うん、流石にただ刺されても痛くも痒くも無いんだよな。なんかごめんね。
今まで一番広い部屋を見つけた。
「このスライムめ無礼だぞ、出ていけ!」
あぁこの人が女王か。そうするとこの周りの少し小さい蟻は奴隷なのかな……
「女王を守れ!」
「かかれ!」
わからないけど、普通に女王の味方なんだね。
可哀想とは思うけど、仕方ない……よな。
見逃して防衛蟻たちが、殺される方が嫌だ。
ふぅ……
女王蟻は、吸収できたし、多分壊滅はしたと思う。むしろ迷ってる時間の方が、長かったかもしれない。
最後は、風を出して、風が抜ける方に進んで、ようやく、穴から出た。一生あのままかと思ったぜ。
あっ、もう夜だ……
やべー、絶対護衛隊長に怒られる。奴隷狩り蟻達と戦ってたってことで許してくれないかな。
とりあえず腹一杯だし、風の魔法も使えたから満足だ。
二度と蟻の巣穴を深く入るのはやめよう。
夜は、怖いからゆっくり戻ることにした。
ようやく魔法っぽいものが出せました。
もし誤字、脱字とか、こういう書き方が読みにくいとかありましたら教えてください