護衛スライム
本日2話目です。
前話は閑話ですので、読まなくても話は繋がります。
避ければそちらも読んでください。
今日より、また行進が始まった。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ
一糸乱れぬとはこういうことか。と感心する。
女王様と王女様は、働き蟻に担がれている神輿のような物の上で寛いでいる。神輿は、板の上に四方に柱が付いていて屋根があるだけのものだ、
一方で俺はその隣を歩いている。大きさが違いすぎるため、歩いているというより、進んで、止まってを繰り返して周囲を警戒している。
王女様には、小さくなって一緒に神輿に乗りましょうと言われたがとんでもない話だ。そんなことしたら護衛にはならないし、絶対目的地着いたら護衛隊長辺りに、刺されると思う。
初日は、ちょこちょこ、小動物っぽいのが、現れたが護衛隊達に追い払われるか、倒されていた。俺の方は、たまに餌を探しに、列を離れたりもしたが、防衛蟻達は、列が長いため、上から見ると割とすぐ見つため合流には困らなかった。
この蟻達は夕方になるとまた、休憩所として仮コロニーを作り、明日の朝に備えるらしい。 俺は寝ないので、辺りをプラプラすることにして、翌朝に戻ってくるつもりだった。
しかし、休憩所の護衛はいるものの少数だし、適当に餌を探してたため、蟻達の巣がどこにあるかわからなくなってしまった。スライムは、蟻達の言う通りバカなのかもしれない……
しかも夜になると、気配が薄い獣が増えて、かなり警戒しないと、自分も危険なのである。蟻達と遭遇するまでも夜はゆっくり進んでいた。やはり、俺は考えなし過ぎるな……
特にフクロウのような顔した奴がヤバい。まったく音も気配なく、俺の核を直接狙いに来る恐ろしい奴だ。しかも躱しても、掠っても、追撃してこない。一撃必殺狙いらしい。倒せてもいないから、しばらくするとまた襲われるが、それが同じ奴なのか? 違う奴なのか?とにかく情報が何も残らない暗殺鳥だ。恐ろしい。
とりあえず朝になったら上に上がって蟻達は探すとして、それまでは、体を動かす練習をしよう。
朝になった、木に登って周りを見渡したが、見当たらなかった。もうこのままキノコ探しに戻ろうかな。
でもそんなことして、女王達に嫌われたるのもな。
少し飛び回って探そう。
しばらく木の枝を飛んでは、木の上に登りを繰り返していると、あのアホ鳥……じゃなかった蟻喰鳥を見つけた。
上空でグルグルと飛んでるところを見ると、何かを見つけたらしい。
とりあえずアイツを捕まえて、俺の朝飯にしよう!
ググッ……ビョーン。
木を使って空を飛ぶ。紙飛行機型になるのも慣れたかもしれない。
蟻喰鳥が滑空を始めた。
風で蟻達が舞い上がってる。
「うわぁー」、「食われるー」
浮き上がった蟻たちが騒ぐ。
まだ間に合う!
空中の蟻達をパクッと喰おうした瞬間、俺は顔面目がけてダイブ! そのまま顔を掴んだまま、消化を始めて、頭が無くなった体だけが落ちる。
あぁ! 俺の朝飯!
俺は飛んだ勢いが衰えず通り過ぎた。
一生懸命手を伸ばして、枝をを掴み地面に降りた。
急がないと、朝飯が無くなっちまう。蟻達も餌を確保するのが早いからな。
木の枝を飛び回って蟻達の元に辿り着いたが、蟻たちは鳥を既に担いでいた。
あー! 俺の餌持ってかないで!
急いで、蟻達の元に着いたが、既に蟻達は自分達のものだと譲ってくれる気配がない。
くそー、遅刻した罰ってことか。
「ソラ殿! どちらにいらしたのですか! 危うくロイヤルボールを食べられるところでしたよ!」
あぁ……、護衛隊長めっちゃ怒ってる。
しかも返事するのに、自分から怒ってる人に触れるのも嫌だな。スルーしたいけど、それはそれで、怒られるかな?
「ソラ殿?」
おっと、怒られたくなくて、現実逃避してた。
ピョーンと体を触れる。
《すみません。晩御飯探してたら迷子になってました》
護衛隊長、そんなに口開けたら顎外れちゃうよ?
「ま、迷子になるとは、スライムってやっぱり……ゴホッ、すみません。つい本音が。」
うん、本音が、じゃないよ。なんのフォローにもなってない……まぁいい、女王様に会いに行こう。
「ソラ様〜 お待ちしてました。」
王女が手を振ってこちらに歩いてくる。
王女よ、出歩いていいのか?
護衛の意味を考えた方がいいと思うが、というかコロニー統率するんだよな?大丈夫なのか?
王女は体全体で、私に飛び込んできた。
うん、これはかわいい。
《王女様、遅れてすみません。ですが、出歩くとせっかくの護衛が台無しになりますよ?》
王女は顔を上げて笑顔をなげかけてくる。
「問題ありませんよ。ソラ様が見えたから出てきたのです。何かあればソラ様が、助けてくれるでしょ?」
期待が重い!
《さぁ、そんなこと言わずに戻りましょう》
体の上に椅子を作って乗せて歩く。
《さぁ、王女様向こうへ》
「いやよ、このまま進みましょう」
王女よ、早く戻ってくれ、女王様の目が痛いよ。
《王女様、申し訳ないですが、この形を長時間続けるのは無理です。お戻りください》
王女様が渋々戻っていく。
「ソラ殿。よ…良ければ、我も乗せてもらえないだろうか……」
女王まで、そんなことを。しかもそんな真っ赤になるほど恥ずかしいなら言わなきゃいいのに……
《女王様、先程の格好は長時間出来ません。目的地に着いた後、巣作りを待っている間で良ければ、乗せましょう。》
「約束だそ! ふ〜ん、ふふんっ」
「お母様ずるい!」
「お前は先程乗ってたではないか!」
「先程は、ほんの少しではなかったではないですか! ソラ様も私の方が乗せたいに決まってます!」
「そんなわけなかろう! 我は女王だぞ。我の方が絶対乗せたいはずだ!」
いや、そんな二人してどっち?みたいな目で見られても、どちらも乗せたいとかないよ。
なにその、溺愛された末っ子みたいな扱い。
人間の時にされたかったわ。
《お二人とも乗せますから、喧嘩やめてくださいよ》
うむ。じゃないよ、なんで満足そうなんだよ。
王女様は、その手があったか!じゃないでしょうよ。
本当にこの引越し、危機感ある儀式なの?
でもまぁ遅刻は、怒られなさそうで安心したわ。
ゾロゾロ、ゾロゾロ、ゾロゾロ
なんか行進みたいな音がするな。自分達の音か?
「警戒ー!、警戒ー!」
違うらしい、なんか来るのか?
「奴隷狩り蟻だ! 幼虫達を守れ!」
なにその物騒な蟻、そんなんいるの? 奴隷って何よ。
「ソラ殿、奴らは幼虫を攫って自分達の巣の働き蟻にするんだ、一時こちらは離れてくれていい。後方の幼虫達を守ってくれ!」
女王様が指示を出してきた。
了解という意味で、敬礼して後方を目指す。
わぁお、向こうも多いな。
しかもなんかみんなムキムキじゃない?
あんなんで剣とか槍とか振るう感じなのか。
どう対抗しよう。
とりあえず石を取り込みながら近づく。
敵は、一斉にダダダダッとこちらに駆けてくる。
先頭には、スリングショットで、石でぶつけて行く。
石が先頭の蟻にぶつかり、後ろを巻き込みながら吹き飛ばす。
んー、これだと連射出来ないから全然減らない。
「打てぇー!」
パン、パパンッ。
防衛蟻たちも、銃で応戦しているが、銃が弱いのか敵は、当たりながらも進撃してくる。
防衛蟻たちは、銃の効果が薄いと知ってるのか、下がりながら陣形を整えてるみたいだ。
じゃあ俺はとりあえずあの進撃を遅らせよう。
以前やったスリングの要領で、手をグルグル回す。
そのまま手先の方を少し大きくして、伸ばす。
手は右側の方へ伸び、そのまま円を描くように横殴りで蟻達を吹っ飛ばして行く。
「なぜ、スライムが防衛蟻達を守ってるんだ」
「スライムにら構うな! 進め!」
敵は吹き飛んでもなんのダメージも無いのか、普通に立ち上がってくる。
繰り返せば倒すことは出来そうだけど、全部倒すのには時間掛かりすぎるよな。
銃声が響く中、敵の蟻数匹が、防衛蟻たちに突撃する。
鉄砲隊が立つとその後ろから、盾をもった蟻たちが突撃を食い止めた。そして盾を貫くように内側から槍の先で敵を貫いた。
「殺せー、誰も何も奪わせるなー!」
空気が殺伐としてきたな。
スライムは食事気分で戦ってたから、緊張感が違うな……
どうしよう。
俺ももう少し役に立たないと。
近くの木の枝を掴んで上に飛ぶ。
クッション程に横に広がって、そのまま敵の塊に覆いかぶさる。蟻をそのまま体内に取り込んで、その場で回転する。
プップッ
回転の勢いを使って、取り込んだ蟻達を飛ばす。
敵は思ったより遠くに飛んで、スライムの体内で回されたからなのか、立ち上がってこない。
核を攻撃されないか心配だったが、体内が洗濯機みたいになるからそんな余裕は無いようだ。
これならいつもの回転移動しながら倒せる。
移動でそのまま敵を轢く。
そのまま体内へ入ってもらい、上空へ飛ばすを繰り返す。
主力っぽい奴隷狩り蟻達があらかた片付いたのを確認して、後方の防衛蟻たちの方を振り返る。
あちらの敵も片付いてるみたいだ。
良かった。
「おぉー!」
「ソラ! ソラ!」
歓声が凄い。照れる。
人を守るってのも良いもんだな。
まぁ守ったのは、蟻だけど……
蟻の修正調べましたけど、蟻を攫う蟻って本当にいるそうです。自然界恐ろしいですね。