蟻の休憩所
本日もソラ君は、スライムボディに翻弄されてます。
宜しくお願いします
穴の前まで来て、女王様は何も言わずに穴に入っていった。穴は手首くらいのサイズだろうか。少し狭そうだ。
とりあえず女王様は中に入ったし、俺はこの辺りでプラプラしてればいいのか?
「ソラ様」
声をかけられ振り向く。王女様は首を傾げていた。
「ソラ様は中に入らないのですか?」
えっ、入れると思います? 俺キミ達の10倍位デカいんですけど……
「ふふっ、そんなお顔もされるんですね。ソラ様でも怖かったり?」
ん? いや、怖いのはどちらかと言うとアナタ。
じゃなかった……
もしかして女王も王女も入れて当然だと思ってる?マジ!?
《怖いというか、大きさが違いすぎて入れないというか》
「またまた、ご冗談を。スライムなら穴の大きさなんて関係ありませんよね?」
そうなの!? でも確かに、今までの体の感じからして行けるのか? どうも人間的な恐怖が拭えないな。
《確かに、なんの問題も無いかも知れません。ただこんな狭いところは初めて入るので、怖いは、怖いかもしれません》
「ふふっ、ごめんなさい。空すら飛んだスライムが狭いところを怖がるのがおかしくって。大丈夫ですよ。入り口からの通路を越えれば、少しは広くなります。少なくとも私達は中で、立って移動しますから」
それ、なんのフォローにもなってないよ。
中で核を狙われたら確実に死ぬよ。
王女様は、俺の手を引くようにして、巣穴に入っていく。俺は誘われるがままに、穴に体を突っ込んだ。
あれっ?思ってた感じと違う。
もっとぐぐっと体押し込んで、身動き取れないみたいな、体捩ってやっと進めるみたいなの想像してた。
でも特に狭いとか無いな。と言うか普通に歩いてる感じと変わらないな。
でも、目に映る景色は、狭いし、暗いし、体の感覚と視覚情報が一致しなくて気持ち悪っ!
少し広いところに出たけど、多分、俺が来たことで、この広間と後ろの通路がスライムで水没してる。
このままだと後から来る蟻が突っ込んで来たら問答無用で、消化しちまうな。どうするか。
ふと、空を飛んでる時に小さくなったことを思い出した。俺はあの時のように縮んでみた。すると握り拳くらいまで縮めた。
「ソラ様! 小さくなれるんですね! とても可愛らしいですわ」
なれますよ。なれると思い出したの今だけど……
わざわざ言わなくてもいいだろう。
ぐすっ……泣きたい。
《ありがとうございます。王女様はこの暗さでも見えるんですか?》
蟻は確か目が悪いって話だったと思うし、見えてないだろうけど、話題を変えよう。
「いいえ、見えません。道は、通路の感触や匂いでわかります」
ウチの巣も暗いが、巣穴はもっと暗いな。魔力視を抑えながら見れば、王女達の姿は見えるな。
王女様と談笑してたら女王に呼ばれた。
「ソラ殿? ですか?」
《そうですけど……》
「あぁ、すまない。小さくなっていてビックリしたんだ。ソラ殿、コチラへ」
《わかりました》
女王に連れられ、奥へ歩いて行く。通路は、スロープのように緩やかに降っている。歩いて行くと途中で、空気の流れが変わることが何回かあった。見えないが、おそらく部屋があったんだろう。これ、本当に数十分で掘ったの?
「ここだ」
《ぐっ》
女王の足が止まったが、見えないからぶつかってしまった。巣穴について考えている間についたらしい。
「ふふっ、ソラ殿は柔らかくて気持ちいいの。さぁ、これを見てくれ」
目の前には、光る丸い玉が何個か転がっていた。
これはなんだ……
「我らが目的地へ無事付けたら、これがソラ殿へのお礼だ」
《これは、なんですか?》
「これはロイヤルボールと私達が呼んでるものだ。蟻喰いどもは、我か王女、もしくは、これを狙ってくる。これは、王女を育てるための餌でな、特別魔力を込めて作るんだ。私達にしか作れない最高の食事だと思っている。ソラ殿も絶対気に入ってくれるであろう」
これは魔力と何で出来てるんだろうか?
少し怖いな。
しかし、魔力の塊をくれるのか。これは確かにありがたい。この蟻達も魔力が大事で、狙ってくる奴らも魔力っ目的ってことか。わかってたつもりだけど、想像以上に魔力が重要なんだな。
《ありがとうござます。しかし、これは王女様の食事ということですよね? 王女様が困りませんか?》
これが理由に女王になれませんでした、って言われても困るんだけど。
「問題ない。用心の為に余裕を持って作っている。それに無事辿り着けば、これからも作るのだから心配無用だ。我らは、この引越しで被害が無いことの方が重要なのだ」
なるほど、儀式って言ってたし、引越しがよっぽど重要なんだな。護衛は、もうやるしかない感じだし、せめて拘束時間だけでも安心出来る材料が欲しいところだな。
《ところで目的地には、どのくらいで着く予定なんでしょうか?》
「ここから三日くらい歩いた先に着く予定だ、 その後二日程で巣を作りあげる」
二日で巣を作るかよ。って思ったけど、そもそもこの避難場所も数十分の出来だと考えれば、二日で出来る巣は、凄いんだろうな。
《では、ここを出て三日間程、私が護衛をすれば良いということですね。》
「いや、すまないが巣が出来るまでだ。そこまで進めば、ロイヤルボールも作ることが出来るからな」
巣を作る間も護衛するのか。まぁ、いまさら中途半端に護衛引き受けてもモヤモヤしそうだから良いか。
《問題ありません。後は護衛の仕方を、護衛隊長殿と話させて貰えば良いですかね?》
女王様は、いい笑顔だ。
「話? 必要ない。ソラ殿は常に私の側で護衛してくれれば良い」
護衛隊長は話をするって言ってたんですけど。でも女王が一番守りたいんだから、それで良いのか?
いやでも話は必要だろ。
《護衛隊長殿の意見は、必要ですよ。私一人で守れない状況になるかもしれませんし、私がやられた場合のことも考える必要があるでしょう。私は、まだ生まれたばかりで、知らないことも多いですからね》
「ソラ殿の意見はわかった。話してくれば良い。しかし生まれたばかりというのは信じられない言葉使いだがな」
確かに! 周りに同じスライムしかいなかったから年齢と成長の感覚バグってたが、言葉使いは、成長の早さに関係なさそうだ。でも今更子供みたいな喋り方で誤魔化すのは無理あるよなー
《そうなんですか? 巣では皆こんな感じで話してた気がします。 スライムはそんなもんなのかもしれません》
「なるほどな。我らの中でスライムは、あー、ソラ殿には申し訳ないのだが、頭が悪いという認識でな、ソラ殿に会うまで話せることも知らなかった」
女王は、バツの悪そうな顔をしていた。
蟻達の認識では、蟻を食べたり、食べなかったり、木には登る、山は登る、石も食べるしで、何も考えてない生物に見えているらしい。話もできないから、そういう知能もなく、なんとなく生きてるのだろう。という認識だったようだ。
というか変な印象の半分以上は、あの進化スライム達の奇行のせいでは?と思わなくもないが……まぁ良いだろう。
《まぁ、スライムは蟻達と違って個性的ではありますね。ルールを守ってる以外は個人の自由って感じです。会話については、複数と話すためのグループ念話ということも出来ますが、外敵の警告が遅れないように外での使用は禁止されてるので、こうして触れてる方としか話せませんね》
「そうなのか、自由だから我らから見ると何も考えてないように見えるが、本当は、各々が好きなことをしてるから行動に違いがあるということだな。良くわかった。我々はスライムという種族への認識を改めなければいけない。それは脅威であり、頼もしい友でもあるということだ」
俺は別に馬鹿だと思われても気にしないけどね。
「それはそうと、今日は、我の部屋で一緒に寝ようではないか」
はぁー?
この人何言っちゃってんの?
ダメに決まってんでしょうが!
女王がそこらの男と一緒に……違うか。俺、スライムだから男とか無いのか……うそっ、ちょっとショックなんだけど……
「冗談じゃぞ? 期待させたか?」
女王は満足気にコチラを見ている。
はっ?
くっそー、そりゃそうだ。
いくらスライムでもあり得ないよな。
て、ていうか蟻に期待とかしてないし!
俺、ノーマルだし……
そうか、スライムだからって俺の心は男なんだから男のつもりでいいよな!
体がどうとかそんなの問題じゃないよ。
この後、護衛隊長殿と今後の話をしたけど、結局女王様が、我の側だの一点張りで、俺はそのまま側にいることになった。
明日からは移動だ。
敵もそうだが、違う意味でも先が思いやられるな……
少しづつ物語を書く難しさを感じております。
頭の中にはもっと面白いイメージがあるのに文章はイマイチ……
頑張ります。