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憧れの先輩のパパ活現場を目撃してしまった僕、大人のお姉さんに拾われる。  作者: 二上圭@じたこよ発売中
一章 どう、お姉さんのヒモにならない?

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44 私が……

「あっ、あのときの少年!」


 少し遅れて僕に気付いたさっちゃんさんが、人差し指をぴしっと突きつけてくる。


 ユエさんはとろんとした目で彼女を見やると、不思議そうに首を傾げた。


「あれ、さっちゃん。うちのツバメくん、知ってるの?」


「うん。昨日、下着を見られたっていうか」


 さっちゃんさんは両手で自分の顔を覆いながら、妙に恥ずかしそうに続ける。


「こう、私の使用済みのブラを、少年が顔にね」


「え、そんなエッチなことしたの!?」


「下着のほうが風で飛んできたんです!」


 まるで浮気を咎めるかのような目で睨まれ、僕は慌てて弁明する。


「ツバメくんの浮気ものーっ!」


 言い分も聞かず、ユエさんは小走りに詰め寄ってきた。


 そのまま正面からぎゅっと抱きついてきて、僕の身体をゆさゆさと揺さぶる。


「わたしの裸を見たくせに、どういうこと!? わたし、あれが初めてだったのに……!」


「へー、初めてを奪ったんだー。やるじゃん、少年」


 さっちゃんさんが口元をにやりと歪める。


「奪ってません! からかってきたユエさんが、勝手にポロリしただけです!」


 下世話な笑みを浮かべるさっちゃんさんに向かって、僕は全力で否定した。


 それがまた、ユエさんは気に食わなかったようだ。


「それでもー! 男の人に見られたの、あれが初めてだったのー!」


「自爆したのはユエさ――って、この臭い……まさかお酒呑んでるんですか!」


「お酒、初めて飲んじゃったー」


 問い詰めると、ユエさんはあっさりと白状した。鼻につくような甘いアルコール臭が、言葉より先にその事実を物語っていた。


 この妙な絡みかたにも、ようやく得心がいった。


 別に二十歳を越えているのだから、咎められるようなことはしていないが……でも、どうしてこんなことになったのか。その理由をまだ聞いてない。


 視線を上げると、さっちゃんさんが代わりに答えてくれる。


「昨日、お風呂でルナちゃんと意気投合してねー。その流れで、私のお部屋で朝までコース」


「あー、そうだった――って、ルナちゃん?」


「バレちゃった、テヘ」


 目線を下に戻すと、ユエさんがあざとい角度で小首を傾げる。


「……まあ、ユエさんがそれでいいなら、僕は構いませんけど」


「それでね、可愛い子拾っちゃったって、ツバメくんのこともぜーんぶ話しちゃった」


「ユエさん!?」


「テヘ」


「テヘ、じゃないですよ!」


 悪びれもせず可愛い子ぶるユエさんを、ベッドに放るようにして寝かせる。子どもみたいに「きゃははは!」なんてはしゃぎながら、そのまま大の字となった。


 恐る恐るさっちゃんさんに顔を向ける。


「聞いたわよー、推しが世界の真実に目覚めたんだって?」


 思わぬ角度から、弄りの矢が飛んできた。


「どうどう? 推しが頭にアルミホイルを巻き始めたとか、どんな気持ち?」


「他人事だと思って……」


「いや、だってさー。親や芸能人が目覚めた、って話はまあ聞くけど、Vチューバーが世界の真実に目覚めるって、字面がもう爆笑ものじゃない」


「推してる側からしたら、たまったもんじゃありませんよ……」


「それでそれで、どこの誰が世界の真実に目覚めたのよ」


「……言っても、どうせ知らないでしょ」


「いやいや、わかるって。私、それでご飯食べてるんだから。中堅どころまでなら、だいたい頭に入ってるし」


「それって、どういう……」


 答えたのは、ベッドで寝転がっているユエさんだった。


「さっちゃん、Vチューバーなんだって」


「えっ、そうなんですか?」


「Vチューバー好きで私を知らない奴はモグリね」


 さっちゃんさんはこれでもかと胸を張った。……それが軽く揺れたものだから、つい目のやり場に困る。


「それでそれで。誰が頭にアルミホイル巻いちゃったの?」


「……ひじりん」


 観念して、推しの名前を口にした。


 するとすぐに『ああ、あのひじりんかー!』と笑い声が返ってくるかと思いきや、室内を満たしたのは静寂だった。


 さっちゃんさんは、作り損ねた笑みのまま尋ねてくる。


「えっと、ひじりんって……土方凛子?」


「誰ですかそれ?」


「誰だろうね……」


 我に返ったような声を出しながら、こめかみを押さえるさっちゃんさん。


「じゃあ、ひじりんって……どこのひじりん?」


「どこのって……Vチューバーでひじりんって言ったら、ひとりしかいないでしょ」


 本当にこの人はVチューバーなのかと疑いながら、僕は深い息をついた。


「聖純セインですよ」


「待って……」


 一拍の沈黙のあと。


「待って待って待って待って。そりゃ、あの炎上はきつかったし、世界のすべてが敵に見えるくらい追い詰められたのは認めるけど……私、そんなものに目覚めた覚えないんだけど」


「ん? なんでそこでお姉さんの話になるんですか」


「いや、だからさ」


 さっちゃんさんは顔を引きつらせながら、自身に人差し指を向けた。


「私が……セインなんだけど」

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百合の間に挟まるな! ~脅迫NTRもの展開を阻止した結果、百合の間に挟まれた件~
並行して連載しておりますので、こちらもお目通し頂ければm(_ _)m
― 新着の感想 ―
身バレの山w しかし、推しは世界の真実に目覚めていなかったのか。 最初の不幸が無かったら、その後の3つの不幸も…… 無かったことにはならなかったかな。
あっ、乗っ取りかぁ…? 引退しててアカウント管理してないならそうなる…?
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