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初日-大命降下

午後二時八分分、衆議院本会議場。

「右の結果・・・。」

(わーわー、がやがや)

「・・・君を、衆議院規則第十八条第二項により、本院において内閣総理大臣に指名することに決し混乱しているました。」

「えっ!?」

(拍手)

「この際、暫時休憩いたします。」


午後二時十五分、衆議院本会議場前。

「混乱しているところ悪ぃが、ちょっと来てくれるか?」

「あなたは・・・?」

「マスコミの連中に囲まれる前に動きたいんだ。さっさと行くぞ。」

「は、はい・・・。」


午後二時半、参議院御休所。

「つれて参りました。」

「ありがとうございます。」

「滅相もございません。

 ささ、陛下にご挨拶を。」

「え?あ、こんにちは。」

「そうじゃねぇだろう。まあ、いい。」

「こんにちは。

 まだ混乱されているようですね。それも仕方のないことかもしれませんが。

 今日のことは、みなさんがいろいろと動いてくださって、国難を乗り越えるためにひとつになろうと画策してくれたのですよ。」

「はい?」

「挙国一致内閣ということだ。あんたをかついで与野党の壁をなくしてこの国を立て直そうということだ。」

「私が?」

「お前ぇさんだってこの国をよくしたくて政治家になっているのだろう?それに、トップを目指しているんだろう。ちょうどいいじゃねぇか。ここで一旗揚げろ。」

「私からもお願いします。」

「それにしてもなんで?」

「大命降下っていうやつだよ。」

「それは旧憲法下の慣習でしょう。」

「国難を乗り切るにはこの国がひとつにならなきゃならないんだ。そのためには国の象徴の下に集うのが早いだろう。そういうことだ。

 では、陛下、お願い申し上げます。」

「きわめて儀式的なことですが。せっかく元老役を務めていただきましたしね。それでは・・・。

 このたび、あなたに内閣総理大臣として組閣することを命じます。お願いできますね?」

「はい、謹んでお受けします・・・?」

「これで大命拝受だ。詳しくは承知していないが、参議院の方も問題なくやってるだろう。両院ともあんたを指名したはずだ。よろしく頼むぞ。」

「でも、なんで・・・?」

「それではまた後ほど宮中の認証式で。今はお忍びでこちらに来ているだけですので、早く戻らねばなりません。」

「はい、お気をつけて。」

「陛下、わざわざありがとうございました。どうしても儀式的なことにこだわりたかったものですから。」

「私はお願いした身です。できることは協力させてもらいますよ。」

「もったいなきお言葉痛み入ります。」


午後三時、都内某ホテル和食レストラン個室。

「みんな悪ぃな。ここはいろいろと融通が利くし、こっそりと出入りできるんで便利でよく使わせてもらってるんだ。

 マスコミも混乱しているうちに組閣本部を作る前の下相談をしておきたくたね。」

「それにしても、よくこんな大それたことを成し遂げましたね。」

「大御心とあらばなんとかするのが臣下の勤めだ。」

「じゃ、まずはあんた。次の総理なんだからしゃきっとしろ。これからこいつらを従えて国を引っ張ってもらわなきゃいけないんだから。一言なんか言うかい?」

「よ、よろしくお願いします。」

「ま、いいだろう。

 今回の内閣は挙国一致内閣だ。与野党の壁を越えて奏結集でこの国を救う内閣を作りたい。トップはこいつだ。

 具体的な人事は総理の専権事項ということだが、今回の経緯も踏まえて、俺の方からいくつか注文をつけさせてくれ。大御心を忖度してな。

 まず、与野党の区別なく、当選回数の多寡を問わず、もっとも能力があると思う人間を大臣に登用してほしい。民間大臣もありだ。そして、与野党のバランスなんか考えなくてよい。人物本位だな。とはいえ、今回の立役者だから、この二人は入れてもらいたいかな。財務相と防衛省あたりでいいか?

 二つ目。そうは言っても、こういう形の内閣は立ち上げが大変だろう。人を決めてから基本政策の方向性をぎっちり話し合わないといけないからな。で、それまではどうしても空白期間ができてします。そこで、官房長官だけはそのままスライドさせてくれ。あいつと官僚がいれば現状維持はできるだろうからな。

 それから。現憲法かでは一切の政治的な権能は持っていないということだが、そうはいっても今回の挙国一致内閣の寄って立つべき柱だ。陛下にはこまめに政情を奏上した方がいいと思ってる。そこでだ。内閣府特命担当大臣で皇室・宮内庁担当の大臣を置いてほしい。事実上の内大臣として常に陛下のおそばに控えてもらうようにしてもらいたい。これに加え、何かあれば陛下から諸事を相談遊ばされる相手がほしい。そこで、宮内庁長官は事実上の枢密顧問官の役割が果たせる人物を当ててもらいたい。

 これで最後だ。もうこうなってるんだ。衆議院の任期満了まで、不信任案決議も解散もなしでいこうや。この4年間で国を立て直そうや。

 以上だ。何か言いたいことがあるか?」

「私は承知いたしました。喜んで御協力しますし、御要望あれば大臣の候補者も推薦できると思います。」

「私の方も異論はありません。うちは野党ではありますが、実力的には大臣の有資格者もいるでしょう。お求めがあれば推薦します。」

「まだ実感はないですが、ちょっと考えてみます。といっても、そんなに時間はないでしょうから、頭の整理だけ。とにかく、よろしくお願いします。

 で、組閣本部ってどこに置けばいいですかね?」

「官邸で部屋を用意しましょう。官房長官に言っておきます。」

「ありがとうございます。それでは、いよいよ船出ですね。不安しかないですが、この大命、しかと果たしたいと思います。」

「後はよろしく頼むぜ。老兵は去るのみ。俺はこの内閣の行く末を見届けてから今期をもって引退するつもりだ。でも、この後は口出ししない。お前ぇさんらに任せたぜ。」


午後五時、首相官邸会見室。

「それでは、ただ今より、本日発足しました・・・」

(がやがや、ざわざわ)

「・・・の閣僚名簿を発表いたします。

 内閣総理大臣・・・」


To be continued?

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