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前々日-権謀術数

午後五時、JM党本部幹事長室。

「やはりだめか。」

「個別に政策協議は重ねていますが、まさに是々非々ですね。全体的に乗れるような感じではありません。結構大きなところで意見の相違があるので、そこをごまかしておいうのはなんとも・・・。」

「意外にしっかりしているな。だからこそ今回の躍進かもしれないが。

 切り崩しの方は?党全体でみんながみんな同じ意見というわけではないでしょう。」

「それが・・・。向こうの主要議員は前回政権交代時にそれなりのポストを経験済みなので、あまり響かないのですよ。この後もっと高く売れるという見込みもあるのでしょうが、そう簡単に食いつきません。

 一方、今回初当選したような連中ですが、教育がしっかりと行き届いているのか、こちらもだめです。そもそも、野党としても決して規模が大きくないKM党の候補者選定にわざわざ応募して候補者になったような人たちなので、党のビジョンに心酔しているようですよ。当然直接コンタクトを取ったわけではないですが、取りつく島もなさそうで、現在は初当選議員向けの研修の名のもとに党本部に囲い込まれているようですよ。

 正攻法でダメならダメですね。切り崩し先はほかを当たるしかないです。」

「報道されている情報でも、その裏を取ってみて、やはり野合はなさそうですね。だとすれば、首班指名を乗り切ることだけを考えれば続投は可能でしょうね。ただし、少数与党だからいかんともしがたい。是々非々で政策協議と言っても、そのたびにお土産を用意したししないといけないわけか・・・。これで予算が通せるのだろうか?」

「非公式に接触してみてわかりましたが、KM党はRM党にはもっと冷たい態度のようです。いわば離婚した相手ですからね。馴染みもあるが恨みもあるのでしょう。」

「結局やつらにキャスティング・ボードを握られるのか。まさに思惑どおりということでホクホク状態か。であれば、なおさらこの手の話にはのってこないな。」

「そうですね。首班指名は首班指名で乗り切って、その後のことはじっくりと、という戦略しかないかと。」

「しょうがない。総理にもそういう調整状況だとお伝えするしかない。自分が行くとかなんとかいうかもしれないが、この期に及んでは時間いっぱいということで、少数与党で行くということで了解してもらいますかね。」

「もともと党人派というわけでもないですし、どのみち空中戦しかできないのでそれがベストかと。そもそもよくよく互いに知っているRM党ですら党首会談は成立しなかったわけで。」

「通常は総理が頭を下げて、ということであれば受けるが、そういう感じでもないね。あれが令和の政治スタイルになっていくのだろうか?私のようなオールドスタイルの政治屋はもう引退するしかないのかもしれないね・・・」

「幹事長、そんなこと言わずに。

 ルールが変わっているわけじゃないんですよ。今がたまたまそういう特殊な状況なだけで。自分たちをいかに高く売るか、自分たちの政策をいかに実現するか。そういう価値観は不変で、それに対する最適解が特殊階になっているということじゃないですかね。ここまで見事にキャスティング・ボードを握れる状況が来ることなんてなかったでしょうから。」

「そういうことかもしれないな。

 これからの国会運営を考えると頭が痛いが、特殊な状況だということでその場その場で最良の判断をしていくしかないんでしょうね。引き続きよろしくお願いします。」


午後七時、RM党本部。

「少々テクニカルだがあれしかないか?党内はもつのか?」

「大連立を追及するというところで合意は取れています。実際の投票行動はよけないことを考えないように直前に指示するしかないでしょう。」

「私ももう年なので、ここらで若い世代にゆだねることも必要なんだろうね。もとは仲間だ。彼に期待しよう。

 それで、他は大丈夫なのか?」

「離反が出なければ頭数はそろう見込みです。彼らも直前に投票先を聞かせられればびっくりするでしょうが。」

「KM党のせいにしておけば、大連立の大義名分の下で党内も抑えられるだろう。何より、ここでふったび政権交代を実現するのが重要。それだけを考えていこう。」

「代表、念のため伺いますが、最後までKM党には知らせなくてよいのですね?」

「これらが予期しない出来事が起きて混乱のうちに丸め込むことが大事だ。彼らは我々に歩み寄る気がないし、決して彼らの傘下に入るわけではないのだから。」

「前代未聞のだまし討ちですね。」


午後八時、JM党本部総裁室

「総理、只今御説明しましたように、首班指名は少数与党で乗り切るしかありません。ぜひ御理解を。その後も政策協議を重ねる中で事態の改善を図るほかありません。」

「それは理解しましたが、野党がwなお動きは?」

「こちらがつかんでいる情報では、KM党を除いて野合の合意は取れているようです。とはいえ、KM党はすでに底には与さないと表明していますので、数的にはこちらが有利。離反者が出ない限りは問題ありません。」

「離反の可能性は?」

「こういう状況だとどっちにつくのがいいのか簡単に判断できないので、リスクを取ろうとする者はいないと考えています。現状維持が最良の作戦のはずです。」

「わかりました。私も直接口説きに行ってもよかったが、それは政権を発足させてから考えましょう。」

「とりあえず続投いただきますが、これからの政権運営はいばらの道ですぞ。今までのように日程闘争だけでは乗り切れないのです。政策の中身で折り合いをつけていくことになりますから、それも踏まえて人事をまた御相談させてください。常任委員会の委員長ポストも適性を見ないといけないと思っています。」

「私としてはそれはむしろ政治としては正しい姿のような気がしますが、よくわかりました。これから死ぬ気でがんばります。」


午後九時、議員宿舎。

(いやあ、ついにここまで来ちゃったなぁ。これで本当に大丈夫かなぁ。コウモリだと総すかんになるけど、どちらの勢力からも距離を取って我が道を行っているんだからついてきてくれる人はいるだろう。

 それぞれ変な動きをしているとは聞いているけど、今のところ、読みどおりのはず。うちがぶれなければ少数与党として現政権が続くはずだ。あとはそこにどう打ち込んでいくかをしっかり考えていかなきゃ。ますます気が抜けないな。

 それにしても、立場があるからかっこいいこと言い続けてきたけど、うちの党が本当にキャスティング・ボードなんて握れるんだろうか?立場的にはそうだけど、新人も多いし、能力的に問題があるよなぁ。でも、ここが正念場で、この役割をきちんとこなせれば、悲願であるに党勢が実現できるかもしれない。左系には退いてもらったうえで、リベラルと捕手との対決。それが国にとって良いはずなのだ。

 そのためには、保守を辞任するJM党とは当然距離を置くべきだし、リベラルを語りながら左系に支配されているRM党とは決別しなくてはならない。むしろ、RM党の中のまともなリベラル派を糾合しなくては。そのためにも我々が存在感を示し、着実にキャスティング・ボードとしての役割を果たさなくては。初当選組向けに研修をしてもらっているけど、そういうのをさらに充実しないとダメだろうなぁ。個別政策の勉強会とかも。今の少数精鋭体制でできることは全部やろう。

 まあでも、ここまでうまくことが運ぶからなぁ。あの時思い切って飛び出してよかったし、ついてきてくれた仲間にもこれで顔向けができる。)

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