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青い糸  作者: 小田虹里
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1-4

 教育学部棟は、西側にある。ちょっと古い建物で、薄暗いイメージがある。透明のガラスドアを開けて中に入り、三階がボクたち、生物科のフロアになっている。階段上って右手側が生物科。左手側が物理科と分かれていた。僕たちは右手側に歩いていく。第二実験室というのが、ボクたち一年生の控室だった。

 中には既に、人が集まっていた。ボクたちを含めて十人。これが、生物科一年生の人数だ。

 男子が六人、女子が四人。服装はスーツだったり、ちょっとカジュアルな服だったり、色々だった。でも、流石にダメージジーンズはラーメン屋の彼以外居ない。

 ボクたちは、初めましての顔合わせで、みんなで自己紹介と、ライム(会話のやり取りができるアプリ)交換をした。終わったタイミングで、教授がひとり入って来る。ちょっと小太りなそこまで背丈の大きくない、若い准教授だった。小木曽先生といって、魚を研究対象にしているそうだ。四年生になると、ゼミに入らなければならないから、それまでに自分が研究したいテーマを決めないといけない。この岐阜東大学理科教育生物科には、二人の教授と二人の准教授が居た。ひとりが今黒板の前に居る小木曽先生。魚が研究テーマ。もうひとりの准教授が松原先生。薔薇とリンゴの研究をしている。あとは、年配の高木教授が植物。山本教授がアリの研究をされていると説明を受けた。

 今日はオリエンテーションのみで、みんなの前で改めて自己紹介をし、前期の講義一覧表と申し込み表など、説明を受ける。まずは、みんなの自己紹介だ。適当に座っていたため、窓際に座っていた男子生徒とから順番に、前に出て自己紹介をすることになった。名前と高校、将来の夢について簡単に話す。

「石山勇気! 岐阜県立各務原西高校出身です。夢は高校教諭っす! よろしく!」

「土野綾乃です。愛知の清州出身です。将来は小学校の先生になりたいです。よろしくお願いします」

「竹田美歩。浪人していたので、みんなよりひとつ年上です。愛知から来ました。将来は高校の先生になりたいです。よろしくお願いします」

「桜井誠。岐阜県立大垣A高校出身、将来は中学教師になりたいです。よろしく」

「横沢さやか。福井出身です。将来は小学校の先生になりたいです。よろしくお願いします」

「長野由希です。高山出身です、将来は高校教諭目指しています。よろしくお願いします」

「水代拓。愛知出身です。将来は何かしらの教員になりたいです。よろしく」

「山南英二。岐阜県恵那市の高校出身です。将来は……僕も何かしらの教師になりたいです。よろしく」

 続いて、ようやくボクの番が回って来た。みんなの自己紹介を聞いても、すぐにはフルネームは覚えられないかもしれない。後でライムをしっかり見直そうと心に決めながら、テテテと黒板前に立った。実験室の前の方に、みんな座っている。

「えっと、楠井零斗です。加茂B高校出身、将来は小学校の教師になりたいです。よろしくお願いします」

 パチパチパチと拍手が鳴る。最後を飾るのは黒い髪の気に青い瞳の例の彼だ。僕はまだ、彼の名前も知らない。彼だけは、ライムの登録を拒んだからだ。誰も彼の連絡先を知らない。

「徳永一夜。愛知出身。将来のことは考えてません」

 ぺこっと頭を軽く下げ、彼、一夜くんは席に着いた。

(一夜くんっていうんだ)

 ボクは暢気にそんなところに感動していたけど、他のみんなはちょっと腑に落ちない……そんな顔をしていたらしい。確かに今思えば、将来先生を志望していないのに、教育学部に入るなんて、ちょっと可笑しな話だよね。

 

 ――思わず自分の左隣に座ったキミに目が行くボクは、既にキミの虜だった。キミがこれからどんな人生を歩むことになろうとも、構わない。ボクにとってキミは、既に特別だったんだ――


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