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9 そっくり、さん?

「そういえば、ゲドナ国の王は建国祭に来れないと聞いていたのですが?」

「ええ、なんでも乗馬中の落馬だとか。国王は負傷されましたが、今回は代役に王太子と第二王女が来られています」


ゲドナ国。ハリエドの友好国で、確かあそこは王族は存在するが、実力がなければ王族の座を返上されるほど厳しいと聞いた。まだ国王が現役の間に王太子が選ばれるなど、余程の実力がなければ難しいはず……やっぱり、2メートル位吹っ飛ばすくらいの強い人なのだろうか、王太子殿は。


「私も実は会うのが初めてなんですよね〜強そうな人ですかね〜怖い人嫌だな〜」

「イザーク様、性格ひん曲がってるから早いうちに殴られそうですもんね」

「私王子だから、令嬢一人位どうとでも出来るんですよね〜」

「イザーク様素敵ー!!!」


そんなこんな話していると、会場の扉前に真紅色の正装姿で立つギルベルトがいた。誰かと話している様で、その人物がゲドナの王太子なのだろうか?私達はそのままギルベルトの元へ進んでいたのだが………その人物の顔を見た時、私は思わず止まってしまう。ギルベルトはこちらに気づいて振り返り微笑んだ。


「兄上にシトラ、丁度よかった。紹介したい方がいるのですがよろしいですか?」

「………は、い」

「大丈夫ですか?……彼はゲドナ国の王太子で、ルーベン殿下です」

「お初にお目にかかります。ゲドナ国王太子、ルーベン・フォン・ゲドナと申します」




長い美しい金髪で、エメラルドの瞳を持つ青年。……昨日の前夜祭で見た、ダニエルに瓜二つの青年が目の前にいた。あまりの驚愕で固まってしまった為、ダニエ、じゃなくてルーベンは首を傾げる。ギルベルトは苦笑いをしながら横から彼の説明をする。


「最近王太子になられたばかりで、我が国へ来た事が初めてだそうです。まだ13歳ながら軍事采配もされているそうですよ」

「………へぇ」

「……二人とも大丈夫ですか?」


ギルベルトは怪訝そうな表情でこちらを見る。ん?二人とはどう言う意味だと隣のイザークを見ると、彼も目を大きく開いて固まっていた。……もしかして、自分はまだ第一王子なのに、自分より遥か年下が王太子な事にショックなのだろうか?しかし、自分よりも背の高く、大人っぽい印象だからかてっきり年上かと思っていたが、まさか二つも年下だったとは……うん?てことは私が、アイザックによって蘇生された時に生まれたってこと………。


「もうそれ完全にダニエルじゃん!!!」


私は大きく叫んでしまったので、ギルベルトとルーベンは驚いて目を開いている。私は思わず叫んでしまった事を恥ずかしくなり、再び頬が赤くなっていく。すぐに収まることがないほどに赤くなってしまったので、私はそのままルーベンを見る。


「……えっと、聖女シルトラリアと申します。初めまし……て?」

「存じております建国の聖女様。お会いできるのを心待ちにしておりました」

「………はい、私もです」


あああ〜〜〜ダニエルの顔で微笑まないで〜〜〜ダニエルの声でそんな事言わないで〜〜〜!!!私は更に赤くなる頬を隠す様に下を向く。その時ようやく意識を戻したイザークが、やや硬い表情でルーベンへ微笑む。


「イザーク・フィニアスです。ハリエド国の第一王子兼、教会の大司教をしております」

「よろしくお願いいたします。イザーク殿の聖女に関する論文は全て拝読しています。教会には精霊も在籍しているとか?」

「ええ、気まぐれですがよく働いてくれますよ」


流石王子なだけあって、先程まで同じく固まっていたとは思えないほどに流暢に話す。そのまま二人はイザークの発表した論文や、精霊の事について話しており、それを呆然と見ていると横からギルベルトが小さな声で話しかけて来た。


「シトラ、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫です。すいません大声を出してしまって」

「それはいいのですが……今は時間もないので、また後で詳しく教えてくださいね」

「はい……」


私が掠れるような声を出しているからか、ギルベルトは心配そうにこちらを見ている。ギルベルトは何かを私に告げようとしたが、その時後ろからスキップをする足音と、「娘〜〜〜〜〜〜〜!!!」というディランの明るい声が近き、そのまま後ろから強く抱かれた。藍色の正装を着崩す事もなく着こなすディランは、そのまま私に頬擦りする。


「我が愛娘よ!ああなんて可愛らしいんだ!!もっと顔を見せてくれ!!」

「おい馬鹿精霊、独り占めするな俺にも見せろ」


ディランの後ろから騎士団服を着るウィリアムが、若干苛立ちながらこちらへ来ている。いつもは白の騎士団服も、今回は藍色の騎士団服に変わっている。遠目から見れば聖騎士と同じような服装だ。っていうかそう言えばなんで騎士団服着ているんだ?


イザークもギルベルトも、二人の精霊の態度には慣れてしまっているので気にしていないが、ルーベンは目をまん丸にして驚き、金色の瞳を持つ精霊を見つめている。その目線に気づいたディランとウィリアムはルーベンを見て、ルーベンと同じく驚きの表情を浮かべる。暫くしてディランは震える唇を動かす。


「……………宰相か?」

「えっ?」


ルーベンはその問いかけに、理解できていないのか呆けた様な声を出す。ウィリアムはそんなルーベンの元へ勢いよく駆け寄り、険しい表情をしながら彼の顔を凝視する。そのあまりの威圧感にルーベンは後ろに下がり顔を引き攣らせているが、ウィリアムはゆっくりと口を開く。


「……ダニエル。今更何の用だ?まさかシトラを奪いに来たのか?」

「えっ?……あの、誰かと間違えていませんか?」

「間違えるわけないだろうこんな間抜け顔」

「まぬっ!?……えっと、私はダニエルではなく、ルーベン・フォン・ゲトナと申します」


ルーベンは、やや顔を引き攣らせながらも懸命に表情筋を整えて、微笑みながらウィリアムを見上げる。その態度にウィリアムは更に険しい表情を浮かべながら無言で凝視する。


「……つまりは、宰相のそっくりさんか?」


その様子を見ていたディランは、顎に手を添えながら閃いたように言葉を出すが、それには私もウィリアムもディランを睨みつけた。


「私が間違えるはずがないでしょ!!」

「こんな間抜け顔間違えるわけないだろう!!」


私達の怒声に、ルーベンはどうしたらいいのか分からず、顔を引き攣らせながら笑っていた。


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