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2 脱出をしましょう

金髪碧眼の物語の王子様のような美少年王子。

その隣には銀髪のこりゃまた美青年。青年は優雅に私の手を取り口づけをした。…一瞬美しすぎて景色が歪んだがそこはどうにか耐えた。



「彼は私の従者兼護衛で、名前はアイザック。風の精霊でどこでも入り込めるんです」

「初めてましてシトラ様。こんなんでも上位精霊をさせていただいています」

「…精霊」


この世界には人間の他に精霊も存在する。ただそう滅多にお目にかかれる存在ではなく、とてもきまぐれなので人間と行動を共にすることはまずない。

だが目の前には明らかに人間とは思えない美しい青年…確か精霊は人間と同じような姿のものもいると聞いたことがある。それでも精霊は皆、金色の瞳をしているという。アイザックの瞳はそれはそれは美しい金色の瞳。…だめだ見ていたらまた景色が歪みかけた。


そうこうしている内にアイザックは人差し指からつむじ風のようなものを出してそれを牢屋の扉へ向ける。するとガチャン!と音を出し扉が開いた。


「アイザック様すごい!こんな簡単に扉が開くなんて!」

「鍵穴に鍵が差し込まれた時のように鍵穴を動かせばいいのです、こんなの簡単ですよ」

「全然よくわからないですけどすごいことだけは分かります!」


これが精霊が使えると噂の魔法!なんと素晴らしい!と食い気味で褒めるとアイザックは耳を少し赤くした。


「いやーこんなに褒められるのそうそうないから、照れますねぇ」

「…アイザック、シトラ嬢。早くここから出ますよ」


少し鋭い目線を向けたギルベルトが先に出て私たちを見ていた。…確かに急いで脱出しなければ、お父様が暴れて舞踏会をメチャクチャにしてしまうかもしれない…嫁ぎ先が本当になくなってしまう。





私たちはこっそりと牢屋から出て地下からの出口へ向かった。周りで牢屋に入れられていた人たちは驚いていたが、「助けを呼んできます」と伝えると生気を失っていた目にかすかに光が宿った。


地下牢から出る時に何度か男爵の使用人に会うが全て声を出す前にアイザックが気絶させて行った。その度に小声で褒め称えるとアイザックは照れながら微笑んでくれた。…くっ、美形すぎる…!!!

そんな私を知ってか知らずかギルベルトはジロリと私を見つめてくる。…いやいや、流石に精霊様を取ったりしないですよ!



地下牢から無事に出ることができた私たちだったが、近くの部屋から男爵が使用人を罵倒する声が聞こえてきた。



「まだ王子の売り飛ばし先とは連絡がつかないのか!?いつまで待たせるんだ!」

「申し訳ございません!何度も連絡をしておりますが全くつかず…!」

「これではわざわざ王子を生きて捕らえた意味がないではないか!おまけに邪魔な公爵の娘まで…これも全てお前たちのせいだ!」


どうやら王子を生きて捕らえたのにも理由があったらしい。確かにギルベルトほどの美少年なら高値で売れそうだ…と思っていると、アイザックが楽しそうにしながらギルベルトを見る。


「いやー殺人じゃなくてなんで誘拐だと思ったら…なるほど。ギルベルト様いくらなんでしょうかね?」

「気持ち悪いことを言わないでください。早く行きますよ」



楽しそうなアイザックを尻目にギルベルトが先に向かおうとしていたときだった。部屋からガラスの割れる大きな音が聞こえた。


「リアム!なんだその顔は!?また罰を受けたいのか!?」


ギルベルトの後ろから追いかけようとしていた私の足が止まった。…リアムって、さっきの黒髪の少年のことだよね?


「す、すいません」

「謝ったら済むと思っているのか!?」


どうやら男爵が花瓶か何かをリアムに投げつけたらしい。その後も暴力を振るっているのか、殴る音が聞こえた。流石にギルベルトたちも顔を顰めた、ように見えた気がする。



気がする、と言うのも、私は気づいたら部屋のドアを思いっきり蹴って入ったのでしっかり見ていないからだ。



いきなり捕らえているはずの娘が扉を蹴って入ってきたのに驚愕した顔をしていた男爵の前に、倒れているリアムの前に立ちはだかる。服が着崩れ倒れているリアムは、やはり虐待をされていたのであろう無数の傷と痣が見えた。


「やめなさい!!!」


実の子供に対してなんて恐ろしいことを!すでに怒りが頂点まできている私は、先ほど割れたのであろう花瓶のかけらを持ち男爵へ突き立てようとした。男爵もいきなり小娘が登場してきたので怯んでいる。今がチャンスだ!だが、私が男爵に突き立てる前に突風が現れ男爵と使用人は気絶した。驚いて扉のほうを見ると、アイザックが盛大なため息を吐きながらそこにいた。せ、精霊様〜〜〜〜〜〜〜!!!


アイザックを無視して部屋に入り込んでいたギルベルトはそれはそれは恐ろしい顔をしながら私の手に持っている花瓶のかけらを取り上げ床に投げ捨てる。こちらを睨んで何かを言おうとしたが、思いとどまったのか苦い顔をした。


「……無事でよかった。行きますよ…」

「あ、はい」


物凄い適当な返事をしてしまいギルベルトの顔がさらに険しくなる。…何も言えない。勢いよく出てしまったが故に王子たちまで危険な目に遭わせてしまった…。


このままでは何かしらの罪に問われるのではと考え始めたところで、遠くから馬車と音が何台も聞こえ始めてきた。窓から見るとそこには城の騎士団とハリソン家の紋章をつけた馬車がいた。



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