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17 国王陛下とのお話

この城の中へ来るのは、12歳の時以来だろうか。

今日は国王主催の舞踏会であり、私の平穏な人生の終止符が打たれてしまうかもしれない日でもある。城の中は教会と作りは似ているが、こちらの方が豪華さのレベルが違う。本当に帰りたい。流石に一人で行くのは嫌だとギルベルトと流石に宰相の事について説明するのは無理なのでアイザックについてきてもらっているが、それでも冷や汗が出てくる。

陛下が来るまで待たされている広い応接室では、テーブルの上に何故か私の好きな下町のケーキ屋のフルーツタルトが置かれているが、緊張で手が出せない。そんな私を見てギルベルトとアイザックは苦笑いをしている。


「シトラ嬢、今回はただ話を聞きたいだけですから」

「そうですよシトラ様。そんな食われる前の子ウサギみたいな震え方しなくても」

「おお、私はシトラ嬢に怖がられる存在だったのか」

「三人とも陛下に頻繁に会っているからそんなことが言えるんですよ!……ん?三人?」


いつもの声の他に、聞いたことのない男性の声が聞こえていた。驚いて聞こえた方、自分の横を見ると、そこには金髪碧眼の、ギルベルトによく似た男性がにっこり笑っていた。



「久しぶりだねシトラ嬢。何年か前にハリソン公と挨拶に来てくれたのを覚えているかい?」



この国の国王、ジョージ・フィニアスがいた。胃の中のものを吐き出しそうになったがどうにか止めた。






「さて、まずは今まで貴女に12年前の真実を伝えずに申し訳なかった。貴女を安楽の地から再びまたこの世界へ連れてきてしまった」

「い、いいえ、そんな、まったく」

「私たち、いや殆どアイザックのせいだが、また貴女を危険な目に遭わせてしまっている。アイザックに代わって私から謝らせてほしい」

「いえ、そんな、ぜんぜん」


陛下は私の手を取りながら潤んだ目で言葉を告げているが、緊張と恐怖と陛下の美しい顔にどうにかなりそうで、さっきから同じような言葉しか言えない。


「それで、その宰相の呪いとは一体どんなものなんだい?」

「魂の融合です。…もう離してあげてください陛下」


それにはアイザックが答えながら、私の手から陛下の手をひっぺがした。ギルベルトも陛下をジロリと睨んでいる。ありがとう!君たちがいなかったら私はただの同じことしか言えないロボットになっていた!


「魂の融合?そんな呪いは聞いたことがないが」

「「運命の糸のおまじない」と言えば知っているでしょう?全ての命あるものは生まれ変わりますが、まじないにかかった対象者と必ず同じ時代に生まれ変わる事のできるものです。…ただ、今回のシトラ様にかかっていたものは、命を代償にしているものですから、恋人同士がやるおまじないとは訳が違う」

「…それはなんと、まぁ」


陛下は少し気まずそうにこちらを見る。わかっていますよ、国王様。私はきっと宰相にめちゃくちゃ恨まれてるんですよね?わかってますからそんな「うわぁ…」みたいな顔しないでください。

すると今ままで黙っていたギルベルトが小さくため息を吐いて口を開く。


「…通常の遊びのようなものではなく、シトラ嬢と同じ時代に確実に生まれ変わり出会い、前世の記憶まで引き継ぐことのできる。…なるほど、確かに「呪い」ですね」

「今回は俺がシトラ様を蘇生した12年前に、必ず転生しているはず。シトラ様の記憶が戻りつつある今、何をしてくるかわからないのです」

「それであれば尚更、世間にシトラ嬢が建国の聖女であることを伝えた方がいいな」


陛下は少し考えながら告げる。私は慌てて陛下の方を見て進言する。


「ま、待ってください!何故私が蘇ったことを伝えるんですか?」


私の方を見た陛下は、微笑んで頭を優しく撫でてくる。


「500年前の聖女シルトラリアは、その力で戦争を止めたとされる人物だ。記憶こそないが貴女はその伝説の聖女。そしてシトラ嬢、貴女はこれから昔の敵と対峙することがそう遠くない未来で起きる。…その時に、貴女が力を出しても周りが混乱しないために準備が必要なんだよ」

「…私は聖女の力は何も使えません」

「もちろん、火種になるし私たちもそうであってほしいと思うがね。でも未来はわからない。もし貴女が力の使い方を思い出して使ったときに、今の状況の貴女は最悪の場合死刑だ」

「ジョージ!!!」「父上!!!」


ギルベルトとアイザックが立ち上がり陛下を睨む。…確かに、陛下の言うとおりだ。私は今「力の使えない聖女」だから普通の日常を暮らせているわけで、これが実は力が使えるとなったら、それを他の貴族へ黙っていたとなれば。今住んでいるハリソン公爵家に迷惑がかかる。そして自分もただでは済まないだろう。こんな事も考えられなかった、恥ずかしい。

二人に怒鳴られた陛下は気に求めずに、ゆっくりと私の頭から手を離す。陛下は変わらず優しく微笑んでいる。


「私はね、シトラ嬢の事はかなり気に入っている。ギルベルトをここまで表情豊かにしたのも、アイザックが本音で話すようになったのも全て君のおかげなんだ。…だからこそ、貴女の事を守りたい。例えそれが貴女の望まない事だとしても」


ここまで陛下に言われてしまえば、もう公表したくないなど言えない。私は少し小さい声で「はい」と伝えると、陛下は嬉しそうに目を細めた。そして立ち上がり。自分の手を一回叩く。


「さぁさぁ!じゃあシトラ嬢の了承も得た事だし!貴族どもを黙らせるためにも彼女を完璧な聖女様にしてやろうじゃないか!」


手を叩いた音が部屋に響いたすぐに、城のメイドたちが数人現れる。そして考える暇もなく、その中のやけにマッチョなメイドに私は俵担ぎをされていた。本当に気づいたらされていた。何が何だかわからず呆然としていたギルベルトは意識を戻し慌てた様子で陛下を見る。


「何やってるんですか!!!」

「え〜?シトラ嬢を完璧な聖女にするんだけど?何か問題でも?」


悪びれもなく言う陛下を見て、全然顔が似ていないのに大司教を思い出した。似てる!陛下あの大司教に似てる!!!うっわ殴りてぇ!!!


「シトラ様!!」


アイザックが助けようとするが、私はそのままムキムキメイドに連れられて行くのだった。


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