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11 大司教のお願い


聖女シルトラリアを祀り、彼女だけでなく歴代の王族の遺物を保管し、そして研究をする。精霊の存在と精霊との対話を可能とした功績もある、国の核となる場所、それが教会。

その教会の頂点にいる存在、それが大司教。私も何度も教会へ行ったことはあるが大司教には会ったことがない。教会から出ないしなんなら教会の職員ですら滅多に見ないと言われる大司教。


「わざわざ大司教が来るなんて、検査、そんなに受けさせたかったのでしょうか」

「そうだとしても拒否するだけだ。シトラ、大司教との対面中は必ず俺の後ろに必ずいるんだよ」


検査をしたとしてもいつも通り何も出ないと思うのだが…。父が不在のため兄が代わりに一緒に大司教のいる正面玄関へ向かう。大司教はすぐ終わるのでここで待っている、とエントランスで待っているらしい。


エントランスに着くと、そこには私と同じ焦茶色の長髪の男が立っていた。服装が教会の祭服なのでおそらく大司教だろう。うちのメイドとこちらに背を向けて話している。


「こ、困ります大司教様、わ、私は公爵家のメイドで…」

「困るだろうが言わせてくれ、僕は君のその美しい瞳に心を撃ち抜かれてしまったんだ」


……あれ?この大司教うちのメイド口説いてない?

兄は慌てて「大司教殿!!!」と叱責した。するとそれに気づいて長髪の男はこちらを見る。焦茶色の長髪をゆるく結び、穏やかそうで美しい顔の男性だ。教会職員の着る白の祭服がとてもよく似合っている。


…大司教の目は、珍しい、血に染まったような赤い目だった。





『×××、君の世界の名前はとても難しいね』





見たことがないが懐かしい景色が脳裏に浮かび、驚いて頭を触ってしまう。

それを見ていた大司教は微笑む。


「いやぁ申し訳ない。美しい方がいたものですから」

「我が家のメイドに手を出さないでください。連絡もなしにいきなり来られるとは、御用は何でしょうか。妹の検査の話はついているはずです」


不機嫌さを隠しもせず兄が言い放つ。…一応、教会の大司教は公爵家と同等くらいの立場なのだが。

対する大司教は「その話じゃないですよ」と手をひらひらさせながら言う。


「今日はシトラ様に教会の遺物管理のお手伝いの相談に来たのです」


遺産管理、とはどんな事をするのだろう?兄の方を見るとこちらを見ないまま「聖女と歴代の王族の遺物の管理記録をつけることだ」と物凄い無愛想に応えてくれる。対する大司教は、祭服の長い袖から何やら手紙を出してそれを兄へ渡す。ーーー兄はそれを受け取り手紙の内容を見ると、苦虫を噛み砕いたような表情になる。


「国王陛下からハリソン公爵家に、シトラ様へ命令が出ています」


ははーんなるほど、外堀を埋めてきたわけか。


「…その遺産管理の手伝いとは、何故私が?教会の職員の方では駄目なのですか?」


疑問に思っていた事なので、兄の後ろから大司教へ質問する。すると大司教は手をパン!と一度叩いて「そうなんです!」と笑顔で答えた。


「歴代の王達の遺物はいいのですが、聖女シルトラリア様の遺物、これがまた恐ろしい品物ばかりでして!普通の人間が触れると聖女の能力に当てられて、体調不良者が後を立たないのです。…しかし、聖女の遺物は国の宝、毎年体調不良を出しながら記録をしておりまして」

「え、それなら尚更何故私が」

「それは、シトラ様が聖女だからです」


こちらにバチコーン!と片目をつぶって美しい顔を向けられているけれど、そもそも私は聖女なのか疑問なくらいなのだが…。


「シトラ様には能力は全くありませんが、過去の検査で、体はしっかり聖女の器と結果は出ておりますので、シトラ様はシルトラリア様の遺物に触れても何も起きませんよ」

「うわ心読まれた…」


流石に兄も国王陛下からの命令は拒否できないらしい。無言のまま手紙を破きながら悔しそうにしている。お兄様よ、国王からの手紙を破くな。



大司教はというと、「ではまた日取りが決まりましたら連絡します」とだけ言って公爵家を後にした。



滞在時間10分もない。本当にすぐに帰って行ってしまった。あの大司教が全くお目にかかれないのも、あの性格故なのだろうと思った。

私は悔しそうにしている兄と、おそらく心配しているのであろう友人達にどう説明しようか考えて、大きくため息を吐いた。今回のこと、ギルベルト様は知らなかったのだろうか…。





…あれ、そういえば、大司教の名前ってなんだっけ?


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