2022年2月15日放送 フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日 八巻和行の七転び八巻 妄想【愛の劇場】#23 雪
サクソフォン奏者八巻和行さんのラジオ番組
こうのすFM フラワーラジオ
フラワーラジオ ポストメリディアン火曜日(午後4時~午後6時)
八巻和行の七転び八巻
というラジオ番組の投稿コーナー
妄想【愛の劇場】
毎週パーソナリティ八巻さんから出題される【作品のテーマ】を小説風に書いた作品を投稿するコーナー。
小説の書き方を知らないシロウトが投稿コーナーに参加。
そのコーナーに投稿した作品をこちらに投稿しています。
妄想【愛の劇場】のコーナーで、絶賛!妄想仲間を募集中!!
こんな感じで大丈夫なので、コーナー投稿に興味がある人がいてくれると嬉しいです!
《番組への参加方法》
①フラワーラジオが聴けるように、ListenRadioのアプリをダウンロード
フラワーラジオを選局して、お気に入り登録
②パーソナリティ八巻さんのX(旧Twitter)をフォロー
③毎週日曜日の夜に、八巻さんのX(旧Twitter)から【作品のテーマ】が発表
④八巻さんのX(旧Twitter)のダイレクトメールから投稿
※番組放送当日の火曜日午後6時頃までに投稿できれば、コーナーの時間に間に合います。
※何故か八巻さんが初見で読むルールのようなので、漢字には「ふりがな」をふって下さい。
小説の書き方を意識しながら文字おこしをしています。
文章はできるだけ、投稿当時のままにしています。
言葉が二重になるのが気になるところは、手直しをしています。
サイト投稿回数 第22回目の今回は………
2022年2月15日放送。
妄想【愛の劇場】#23 雪
八巻と杏シリーズ第一回目。
「こういう時に限って天気が悪いな」
八巻は珍しく電車に乗って移動していた。
車窓から空を見上げる。天気予報は、昨日の夜から関東地方へ住む人間に大雪への警戒心を煽っていた。
夜を迎え空は深い鈍色をひろげている。雲が低い。今にも雨か雪が降ってきそうで重い。
車内に居るのであまり感じないが、空気も肌を刺すように冷たいのだろう。
早く帰宅の途に着きたい。
そんな気持ちが八巻の心をはやらせる。しかし、電車の方は規則正しく決まったペースを崩さずに車内の乗客を輸送していく。
「八巻くん…?」
とある駅から電車に乗り込んだ女性に声を掛けられた。
髪の毛をおだんごヘアの様に纏め、黄色いバレッタでとめている。
少し恥ずかしそうにしながらも、声はしっかりとしていた。年齢は八巻と同じくらいだろうか。
しかし、八巻には見覚えがない。
返事を躊躇っていると「ごめんなさい」という表情をした。
「覚えてないよね。私、山吹杏。小学校は一緒だったけど、同じクラスじゃなかったから分からないわよね」
ヤマブキ アン…?
「あっ!」
八巻は場所を構わず声を上げた。
山吹杏は、八巻が小学六年生の時に初めてバレンタインにチョコレートをくれた女の子だ。
「山吹さん!? も、もちろん、覚えてるよ!!」
「フフフ。気を遣わなくてもいいのよ」
先ほどまで恥ずかしそうにしていた杏だったが、柔らかい笑顔で静かに笑った。
「いつもこの電車なの?」
「仕事の都合で今日はたまたま。山吹さんはいつもこの電車?」
「私、この沿線に勤めてるの」
再び杏は静かに口元だけで笑った。
「仕事って聞いてもいいの?」
「幼稚園で先生をしてるの。八巻くんは?」
「サックスを吹いてるよ」
「そうなんだ。凄いね!」
杏の一言に八巻は気分が良くなる。
「仕事の打ち合わせだったんだ」
「そうなの。忙しくしてるのね」
杏は、八巻の話を興味深く柔らかい笑顔で聞いていた。
いつもと違い電車で移動した日。
いつもと違う天気だった。
そこで、子供の頃の思い出の女の子に偶然出会った。
思い出の中の笑顔は、恥ずかしそうにハニカンでいたが、大人になった今は柔らかい笑顔をしている。
八巻はこの偶然を喜んでいた。
山吹さんはどうだろうか。
同じように喜んでくれてるだろうか。
それとも、声を掛けて失敗したなと思っているだろうか。
八巻が電車を降りる駅が近付いてきた。
「山吹さん。オレ、降りるから此処で……」
「八巻くんに会えて嬉しかったわ。また、会いましょうね。またね!」
柔らかい笑顔の中に少し寂しそうな表情が見えたのは、気のせいだろうか。
電車のドアが開く。
一気に肌を刺すような冷たい空気が、車内に流れ込んでくる。それを押し出すように、車内から人が停車駅へと流れていく。
八巻もその流れに乗って停車駅を降りた。
駅に降りて、電車を振り返る。
杏が手を振っているのを見付け、八巻もつられて手を振った。
八巻は改札を出て、最寄り駅から外へ出た。
深い鈍色の低い空から、白い花びらが音もなく舞い降りていた。
雪がいつの間にか降り出していたのだ。
杏と話している時には気が付かなかった。
白い花びらは静かに舞い降りながら、アスファルトにジワリと消えていく。
自宅に向けて八巻は歩き出した。
空気は肌を刺すように冷たいが、八巻の心はほのかに温かかった。
そして、こころなしか足の運びも軽やかだった。
また、彼女に会えるだろうか。
再び訪れるかもしれない未来へ、心踊らせる八巻を祝福するように、白い花びらは八巻に向けていつまでも舞い降りていた。
ありがとうございました。
次回もラジオ番組の投稿コーナー
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妄想【愛の劇場】#25「ショッピング」
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