不機嫌
無事に戻った3つの卵達。元通り部屋の中で大切に保管されている。幸い卵の中の天使達は無事だった。
ある日のこと。リラはミカエルが美しい女神と話しているのを目撃してしまった。恋人は自分なのに、思わず柱の影から見てしまう。
正直、ミカエルはかなりモテる。100人中98人は惚れるだろう。しかも、天界には美しい女神が溢れ返っている。リラは気が気でない。モヤモヤした気持ちを抱えながらもリラはミカエルに誘われ、会っていた。
2人はガーデンへ来ていた。神の力により造られた濃紺色の空に無数の星々。足元には星明りを浴びて美しく煌きらめいている花々が可憐に咲き誇る。
星空を眺めながらミカエルはリラの手に触れた。
「美しいな」
「はい、とても」
繋がれた手はしっかりと固く結ばれている。
「天界がある限り私は君の隣にいよう。どんな時も君を守ろう。私は君を愛している。結婚しよう」
無数の星々の輝きに見守られながら、ミカエルは微笑んだ。
「私も! ミカエル様を愛しています。嬉しいです! 夢見たい!」
ミカエルはリラにそっと口付けようとする。
「あ!」
「何だ?」
リラの声にミカエルは動きを止める。
「あの女神様は良いのですか?」
「あの女神?」
「この間、親しそうに話してました」
リラはふくれっ面をしている。
「この間?」
「水色の髪の美しい女神です」
「ああ……」
ミカエルは顔をそむけるが、すぐに訂正する。
「あれは違う! 近々話すから信じてほしい」
「……分かりました」
リラは納得しきれていないが、信じることにした。
「リラ。機嫌を直してくれるか?」
「はい。私はずっとミカエル様の傍そばにいたいです」
「リラ……」
ミカエルはリラの頬を優しく撫なで、羽のような口付けを交わした。
時が来て、卵から無事に天使が誕生した。
愛と調和と希望の天使達。それぞれ皆元気に飛んでいる。リラは天使の赤ちゃんの子守を交代で任された。
「あ、待って! そっち行ったら危ないよ!」
リラがどこかへ行こうとする赤ちゃん天使をつかまえていると、別の赤ちゃん天使が泣き出す。
「ああ〜、待って。どうしたの? 眠いのかな?」
幸いもう1人はすやすや眠っている。
1人でいっぱいいっぱいになっていると、ミカエルが様子を見に来た。部屋に入って来たミカエルに赤ちゃん天使は飛んで行く。ミカエルは赤ちゃんをキャッチする。
「とても愛らしいな」
「そうですね」
ミカエルは赤ちゃん天使を抱きかかえている。
「私達の間に子が産まれたら、さぞ可愛いことだろう」
「はい、そうですね」
ミカエルは顔色1つ変えずにさらりと言うが、リラは赤面してしまう。
「子守が終わったあと用はあるか?」
「いえ、特には。この子達の子守もあと1時間位です」
「そうか。それなら一緒に行きたい所がある」
「どこですか?」
リラは首をかしげる。
「神前だ」
ミカエルはリラの手を優しく握る。
「神前?」
「そうだ」
子守が終わりミカエルとリラは、創造主の住む城へ向かった。創造主は城の最上階に住んでいる。
城の中へ入るとリラは女神に別室へ連れて行かれ、まばゆいピンクゴールドのドレスに着替えさせられる。メイクもほどこされしばらくすると、ミカエルが白いタキシード姿で現れた。