決着
ギギギと木がきしむ音を立てながら扉は勝手に開いた。魔王は赤いカーペットの先にある王座に優雅に肘をかけ、座っていた。
青白い肌に切れ長の瞳の恐ろしいほどに美しい男だった。
――ミカエル様の方がカッコいい!
リラはそんなことを思っていた。
卵は魔王の手元にある。ミカエルは決闘ではなくひとまず話し合おうとするが、リラは魔王の魅了の魔力にかかってしまう。魅了には異性を魅了させてしまう力がある。
リラはふらふらとした足取りで、魔王の元へ歩いて行く。ミカエルが止めようとしても無駄だった。
「リラ!」
ミカエルはリラの手を掴むが、魔王の魔力のせいで進んで行ってしまう。リラは魔王へ近寄ると腕を伸ばし抱きつき、唇へキスをした。
「リラ! 止めろ! 魔王!」
ミカエルは穏やかではいられなくなり、神の聖なる剣を取り出した。
神の聖なる剣は神のエネルギーで出来ている。聖なる光そのものだ。ミカエルは魔王へ剣を一振りした。まばゆい閃光が走る。
「くっ!」
少なからず魔王に届いたようだ。リラにも神のエネルギーが届いたお陰で、リラにかけられた魅了は解けた。リラはそのすきに隅へ移動した。
魔王は負けずにミカエルに呪いのエネルギーをぶつける。どす黒いエネルギーがミカエルを襲う。
「ミカエル様!」
「任せろ!」
ミカエルは神のエネルギーで魔王の呪いを切り裂いた。そして魔王に再び神の光をぶつける。
「ぐあああ!」
魔王は膝から崩れ落ち、床に両手を付いた。深手を負ったようだ。
「……私の……負けだ。ミカエル。とっととそれを持って消え失せろ!」
リラは安心しミカエルに駆け寄った。
「ミカエル様!」
「リラ」
「良かったです! ミカエル様と卵が無事で」
「当然だ。私を誰だと思っている?」
「最強のミカエル様です!」
「そうだな、帰ろう」
「はい!」
ふっと微笑むとミカエルはとリラの頭にポンッと触れた。
天界へ戻った2人はガーデンに来ていた。
リラは元気がない。いくら魅了にかかっていたとはいえ、自分から魔王にキスしてしまったからだ。
美しい花々が心地よい風に揺らされている。
「リラ?」
「はい……」
「どうした?」
「私……自分から魔王に……」
ミカエルは突然リラを抱き寄せた。
「何も言うな。リラ、君は魅了にかかっていたんだ。君は悪くない! リラ、よく聞いてくれ。私はいつも君を見守っていた。これからは傍そばで守りたい。君が好きだ! 私と……付き合ってくれるか?」
「ミカエル様……」
――夢見たい……。ずっと憧れていたミカエル様が。
「嫌か?」
リラは首を横に振る。
「いいえ、いいえ。私もミカエル様が……好きです。よろしくお願いします」
リラは嬉しいあまり舞い上がり過ぎてくらくらして来た。
――あれ? 意識が……。