魔界へ
「Tamago.buji.kakuho」
「良かったー! ん? Okinoerabu……?って書いてある」
リラは安心して浮いたまま卵を抱え飛ぼうとした時、手が滑り卵を落としてしまった。
「あ!」
そこへカラスが光り物めがけて飛んでくる。
「ダメー!」
その瞬間、リラの目の前を金色の光が霞かすめた。
「ミカエル様!」
ミカエルは無事に卵とカラスを抱えている。カラスに“お前が触れて良いモノではない!”と叱っている。ミカエルをはリラを見ると近寄って来た。小さくため息をつき、「気をつけてくれ」と優しく叱った。
「……ごめんなさい」
しょんぼりしているリラに
「無事だったのだから大丈夫だ」と頭をなでた。
「残りは1つ。ここに調和の天使の卵がある。アランの所に希望の天使の卵。愛の天使の卵は……」
「あ!」
「どうした?」
「反応してます!」
「どこだ?」
リラが持っている機器を覗き込むようにミカエルは、顔を寄せて来た。
――わっ。どうしよう! 近すぎて顔が熱くなって来た!
リラが固まっているのもお構いなしに、ミカエルと共に覗き込んだ機器に映し出されたのは、日本列島ではなく、どんよりとした全体的に暗くて重い空気を感じる場所だった。
「魔界だ!」
ミカエルは眉をしかめる。
「魔界?」
「ああ……リラ。君は危ないから天界に戻っていてくれ」
「え? 私も一緒に行きます!」
「駄目だ! 危険すぎる!」
ミカエルの瞳は心配そうに揺れている。
「でも……何も出来ないかもしれないけど、私も卵を取り戻しに行きたいんです!」
ミカエルはリラを見つめると諦めたような顔をした。
「……守っている余裕はないかもしれないぞ」
「はい!」
「分かった。共に行こう」
2人は一度天界へ戻り卵を返したあと、魔界へ向かうことになった。
天界でガブリエル達4大天使に会い、魔界へ行くことを止められたがリラ達は2人で魔界へ行った。
リラとミカエルは魔界へ辿り着いた。一瞬で魔王城へ瞬間移動をする。天界の者にとって魔王城はとても居心地が悪い。蜘蛛の巣が張っていて薄暗くじめじめして、体が重く感じる。ずっといたら気分が滅入りそうだ。
「大丈夫か? リラ」
「はい……ミカエル様は?」
「私は大丈夫だ」
大天使程ともなるとパワーが強いため、魔界のエネルギーにはビクともしない。
魔王城の中にはあまり魔界の者がいない。
時々悪魔がいるが、ミカエルの光に怯えている。魔王のいる部屋へすんなり辿り着くと、扉の中から声が聞こえた。
「ようこそ、天界の者達!」