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新米天使リラの恋  作者: 宮守 美妃
5/10

少年

「え? 今の何?」

 光った方へ視線を向けると一軒の家がある。2階建ての家へゆっくり近づいて行くと、2階の部屋の窓から少年が見えた。

 少年は一人で部屋にいて卵を見つめ、嬉しそうに笑っている。


 リラは窓へ近づきコンコンとノックをする。少年は一瞬驚いた様子を見せたものの、次の瞬間窓へ駆け寄ってくる。

「天使!」


「しーっ!」

 リラは人差し指を自分の口へ当て、少年に静かにしてもらう。

「何で? どうして天使が? 凄い! ボク、ずっと天使に会いたかったんだ!」


 静かにするのは無理なようだが、声は抑えてくれている。


「ねぇ、君私が見えるの?」


「うん!」


――普通の人間には見えないんだけど……。やっぱり子供だから?


「あのね……その卵素敵ね。どうしたの?」


「うん! 拾ったんだ!」


「拾った?」


「そう。あそこの海の砂浜に落ちてたんだ! 危なかったんだよ。もう少しでカラスがもって行く所だったんだ!」

 少年は砂浜を指差して話してくれた。


「そう! 助けてあげたんだね!」


「うん!」


 すごいでしょ?と言いたげに少年は胸を張る。

「ありがとう! それね、天界の落とし物なの」


「え?!」


 少年の顔に動揺が広がる。


「だから、返してもらえるかな?」


「イヤだ!」


「え?」


「これはボクが拾ったんだ! だから、ボクのだ!」

 少年は離すまいと卵をギュッと抱きしめる。

「……そんなに気に入ったの?」


「うん!」


「分かったわ」


 リラはひとまず天界へ帰る。天界にいる職人。あらゆるモノを作り出せる。天界のモノ、人間界のモノ、本物そっくりのレプリカ。見分けることは難しい。


 天界にそびえ立つ塔の中に職人はいる。リラは職人のいる階まで飛んで会いに行った。


「すみませーん!」


「はい?」


 宙に浮かんでいると中からメガネをかけ、茶色いエプロンを着けた、ひょろリと背の高い焦げ茶色の短髪の男性が出て来た。


「突然すみません、私天使のリラなんですけど、今地上に無くなった卵を探しに行っているんです。少年が持っていたんですけど、卵を気に入ってしまって返したくないと言うんです。だから、あの卵と同じようなモノを作れませんか?」


「良いですよ」


「本当ですか?」


「お安い御用です」と彼は笑った。


「ありがとうございます! どの位の時間がかかりそうですか?」


「そうですね……2、3時間ですね」


「早いですね! ありがとうございます!」


 リラは待っている間、塔から見えるビーチを眺めていた。太陽はないけれど、天界にある太陽に似た光が天界を照らしている。海水は透き通ったエメラルドグリーンだ。砂浜は白く海水のエメラルドグリーンが美しく映えている。


――はぁ……綺麗。


 天界はあらゆる所全てに創造主の光が届いている為、地上の数百倍も輝いていて美しく見える。温かく爽やかな風が吹いている。


 あっという間にレプリカは完成し、リラは少年の元へ持って行く。再び窓をノックする。少し日が沈みかけて薄暗くなり始めている。

「あ、天使!」


「ごめんね、何回も」


「ううん。あ、それ」

 少年はリラの抱えている卵を指す。


「そう。そっくりでしょ?」


「うん!」


「これと交換してくれる?」


「うん! 良いよ!」


「ありがとう!」

 リラはホッとしながら少年にお礼を告げた。リラが翼を広げ飛び立とうとした時、機器に連絡が入った。アランからだ。

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