恋に落ちて
大天使達は集まり城の一室で話し合いが行われた。
「どうやら盗んだのは新米天使らしい」
ガブリエルが話し始める。ガブリエルは中性的な美しさで、青い髪にターコイズブルーの瞳を持っている。
「何?! どういうことだ!」
「洗脳されたジルという新米天使が盗んだようです」
「悪魔の仕業か!」
ミカエルは拳を力強く握りしめる。
「俺が魔界へ行く!」
ミカエルは魔王に戦いを挑もうとする。
「待ってください!」
「何だ?」
「今は卵を取り戻すことが先です」
「……そうか。そうだな」
「では、新米天使に頼みましょう」
そう言ったのは金髪に茶色い瞳のウリエルだ。
「新米天使に?」とミカエル。
「ええ。先日3人の新米天使が誕生しました」
「そうか」
「もっとも、1人は洗脳されていますが、残り2人がいます。リラとアランです」
「……リラとアラン」
ミカエルはつぶやく。
「洗脳を解くのに力が必要なら貸しますよ」
「ラファエル」
ラファエルと呼ばれた天使はオレンジの髪に緑の瞳をしていて優しそうだ。
「ああ、そうだな。頼む」
2人の天使は大天使ウリエルに呼ばれ事情を説明されていた。
「そんな! ジルが……?」
「アイツ、なんてことを!」
「洗脳されてしまったのです。彼は悪くありません」
ウリエルはアランをたしなめる。
「だけど!」
「アラン、洗脳されたんじゃしょうがないよ。私達、ジルの友達じゃない? ジルがそんなことする天使じゃないことはアランだって解っているでしょ?」
「……まぁ」
コホンと咳払いをしてウリエルは2人に向かって話す。
「色々複雑な心境は察しますが、頼めるのはあなた達だけなのです。頼めますね?」
「はい!」
リラとアランは返事をする。
「では、よろしく頼みます。アランとリラ」
「はい!」
「分かりました!」
リラはミカエルに憧れていた。あれは天使の講義の帰り道。アランとジルと別れた後のこと。
リラは大事な天界の身分証明書を落としてしまった。
「ああ〜! どうしよう〜!」
教員に“絶対無くすな”と言われていた講義を受けるのに必要な身分証明書。
――再発行してもらえると思うけど……。絶対叱られる!
天界の花々が咲き誇り甘い香りが漂う、色とりどりの花畑の小道を、半泣きになりながら探し回っていると、光り輝くミカエルが現れた。
「探し物はこれか?」
ミカエルはリラに白い花柄のついた透明で小さなカードケースを差し出す。
「はい、そうです!」
カードケースには身分証明書と書かれていた。
それは偶然だった。いや、神の思し召しかそれともいたずらか……。
「ありがとうございます!」
リラはミカエルに深々とお辞儀をする。
「いや、偶然拾っただけだから。気をつけろよ、リラ」
「へ?」
「名前、リラだろ?」
――そうだけど! いきなり呼ばれたらびっくりするよ! しかも、ミカエル様に。
「そうです」
ミカエルは赤くなっているリラを見て、クスッと微笑むと頭に大きな手を乗せ、くしゃくしゃと髪をなでた。
「またな」
「……はい」
――何、今の?
リラはドキンドキンとないはずの心臓が脈打っているように感じた。
――どうしよう! ミカエル様と喋っちゃった!