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新米天使リラの恋  作者: 宮守 美妃
2/10

新米天使の誕生

「つい、先程まであったんです」

 

 見張りの天使は青ざめた顔でミカエルに伝える。


「見張りはどうした?」


「僕の他にもう1人いました。僕はちょっと外していたので」


「分かった。急ごう!」


 リラとアランは慌ただしく動く見張りの天使と、ミカエルを見ていた。


「卵が消えたって聞こえたけど……」


「だよな……一体どうなってるんだ?」


「大変だよね……あの天使の卵が無くなるなんて」


「地上の救世主のような存在だからな」


「うん。愛と調和と希望の天使。あの産まれながらの天使が悪魔から地上を守る為に、これから地上に光を与える……んだよね?」


「ああ。ったく、誰だよ! 盗んだの!」


 産まれながらの天使は、産まれつき翼が生えた生粋の天使。試験は受けずに勉強するだけで天使の仕事が出来る。そのような天使は今まで数えるほどしかいない。リラ達は人間で言う15歳位だ。


「同じ卵から生まれても彼女達は別格だからね。まぁ、天使は人間をサポートするのが仕事だけど。アラン、ちょっと落ち着こうよ。ところで、ジルは?」


「ああ、ほら、用があるとかで先行っててって言ってたじゃん」


「あ、そうだね。用って何なんだろうね?」


「さあ? 好きな子にでも会いに行ったとか?」


「そうかな? ジルが? そんな話聞いてないけど……」


「仲良くてもなんでも話すとは限らないだろ?」


「そうだけど……」


 天界に朝や夜があるわけではないけれど、時計はある。その日、時計の針が23時を回ってもジルは帰って来なかった。




 翌日、天使の試験が行われ3人は無事に受けることが出来、その場で合格者が発表された。


「では、合格者を発表します! まずは……リラ!」


「はい!」

 リラは元気に返事をし、教員の前へ歩み寄る。

「よく頑張りましたね! これからしっかり人間をサポートするのですよ」


「はい! 分かりました!」


「では、背を向けて」


「はい!」


 リラはくるりと教員に背を向ける。教員が背中に手をかざすと純白の翼が生えて行く。キラキラと輝きながら美しい翼がびっしりと生え終わった。


「天使の証です」


「ありがとうございます!」


 教官は笑顔でうなずく。


「次は、アラン!」


「はい!」


アランは勢いよく動こうとした為、足がもつれてしまう。

「うわ!」


「大丈夫です」


 教員がその場で手をかざすと、翼が生え一瞬のうちにアランは宙に浮いた。


「大丈夫? アラン!?」とリラ。


「……あ、ああ」


「おめでとう」と教員天使は伝える。


「ありがとう……ございます」


 アランはゆっくり降りて来ると、教育の前へ進む。

「そそっかしいのは気をつけて」


「はい」


 アランはかすかに赤くなる。

「さて、次は……ジル!」


「はい!」


 ジルは一歩一歩を踏みしめるように進んで行く。

「おめでとう。あなたは一番しっかりしているから、あの2人を頼むわね」


「はい」


「では、背を向けて」


「はい」


 ジルの背にもしっかりと美しい翼が生えた。こうして3人の新米天使が誕生した。

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