卵
赤いレンガ造りの塔の中にランプで灯され、科学ではなく神の力で保たれた部屋がある。卵は静かに脈打っていた。
この部屋には3つの卵がある。全長30センチ程で虹色に輝いている。ここは天使や神、女神の住む世界。
この卵達にはこれから産まれてくる3人の天使達がそれぞれ息づいている。
温かく温度設定も最適。ぬくぬくと心地よい環境でその時が来るのを待っていた。卵は厳重に管理されていて、その部屋には限られた者しか入れないようになっている。
卵は柔らかいクッションのような布地に包まれ、1つ1つクリスタルの台座に置かれていた。
「卵の様子はどうだ?」
大天使ミカエルが現れ、部屋の扉の前にいる見張りの天使に尋ねる。
「はい! 変わりありません!」
背筋をピンと伸ばし彼は答える。
「そうか。ご苦労だな」
「はい!」
天界の城の1つの部屋で講義が行われていた。
「今日の講義はこれで終了です。明日の試験、頑張って下さい!」
女性の教員天使が3人の候補生を見渡す。
「ありがとうございました!」
3人の候補生は天使になる為の講義を受けていた。天使として地上の人間を助ける為に講義を受け、試験に合格した者だけが天使として働ける。
「リラ、今日の講義難しかったな」
金色の短髪にオレンジの瞳の彼がテキストをバッグにしまいながら話す。
「うん、本当。覚えきれるかなぁ〜」
金髪にくるんくるんうねっている天然パーマのあごくらいの長さのショートボブに、ブルーの瞳の女の子が答える。
「大丈夫だよ、2人とも。自信持とう?」
彼はストレートの金髪で肩くらいの長さの髪に、薄緑の瞳を持っているとても真面目で優しい男の子。
「ジル、ありがとう!」
「まぁ、ジルは余裕だよな」
「そんなことないよ、アランだって大丈夫だよ」
「皆でぜーったい、合格しようね!」
リラは2人に満面の笑みを向ける。
「おう!」
「うん! あ、そうだ。僕、ちょっと行く所あるから2人とも先に行ってて」
彼らにまだ翼はない。天使の試験に合格した者だけが与えられる。
「大変だー!」
1人の天使が城の中を走っている所を、ちょうどリラとアランは目撃していた。
「何事だ」
そこへ大天使ミカエルが現れた。彼はとても凛々しく体つきもたくましい。金色に輝く瞳に光をまとったような金髪。女神や天使の憧れの的だ。もちろん、リラも憧れている。
「それが……」
「どうした?」
「卵が……消えました!」
「何?!」






