第118話 何でも言うこときく女にされたメ〇ガキ皇帝
「わぁぁぁぁーん! ごめんなさぁーい!」
ペチペチペチペチ!
自主規制中――――
(諸事情によりお仕置きシーンが自主規制されました)
「うあぁん、ふざけてないです。これは私のスキルなんです。男を堕とす魅了催淫スキルなんですぅううっ!」
さっきまでの生意気メスガキ風な喋り方から一転、元の喋り方に戻ったトゥルーデが謝っている。ナツキにお仕置きされて改心したのだ。
根は真面目な子かもしれない。
「えっと、あれってスキルだったんですか?」
そうナツキが言うのも無理はない。全く魅了も催淫もされておらず、それどころか逆にお仕置きで躾けてしまったのだから。
「ううっ、おかしいなぁ。男を堕とすテクは、あんな感じが良いって同級生が言ってたのに……」
多分、その同級生は間違っている。メスガキ風な挑発で堕とせるのは一部の男だけであり、その他の男は危なくてスルーされるか、逆にわからせされてしまうだけだろう。
少し考えていたナツキが仮説を立ててみた。
「魅了催淫スキルって、精神系魔法の一種なのかな?」
「そうだと思います」
「もしかして、それでトゥルーデさんは洗脳されなかったのかも。精神系魔法防御が優れていたのかもしれませんよ」
ナツキを洗脳しかけたギュンターの魔法だが、トゥルーデには効かなかったようだ。
「なるほど……。何度か彼に洗脳魔法をかけられましたが、かかったフリをして難を逃れてきたのです。おっぱいぷるんぷるんとか言って」
「お、おっぱ…………」
おっぱいと洗脳魔法に何の関係があるのか分からないが、ナツキはトゥルーデのことを『ちょっと変わった子なのかも』と思い始めていた。
そんなトゥルーデだが、ナツキにお仕置きされて二人の距離が縮まったように見える。本当にミアの話が正しかったのか。
「つまりスキルの相性ですよ。これもじゃんけんのように能力の特性で三すくみ状態なのかもしれません。私>ギュンター>ナツキさん>私といった感じです。あっ、でもナツキさんは最終的にギュンターの魔法を打ち破りましたけどね」
「そうなると、ボクの姉喰いスキルがトゥルーデさんには特別に効くことになりそうですね」
ナツキが余計なことを言い出した。
それは危険だから止めておけ。
「姉喰い……とは聞いたことの無いスキルですね」
「年頃のお姉さんを喰って深く繋がるスキルですよ」
「何かエッチです」
「ええっ、そんなことは……あるかも……」
純朴なナツキでも少しは心当たりがあるのか顔を赤くする。結婚するまでエッチは禁止だと主張していたはずなのに、最近では姉たちと密着する度に興奮でドキドキしっぱなしなのだから。
「わ、私に使ってみますか? んっ♡ べ、べつに変な意味は無いですよ」
明らかに下心が見え見えのトゥルーデだ。この小娘、おませさんである。
「あっ、でも姉喰いは年頃のお姉さんタイプの女性でなければ効かないと聞いたような? トゥルーデさんは年下だから効かないはずです」
「さっきから私を子供扱いして失礼ですよ。こう見えて、私はレディーなのですから。見た目は小さくとも大人の女です」
ロリ巨乳の小娘が言うと冗談にしか聞こえないが、実際にこのトゥルーデは姉属性だった。
いや、姉と言うよりママ属性か。
内から溢れ出そうな母性で男を包みたい性格をしているのだ。そう言う意味では姉属性でもありママ属性でもある。
普段の落ち着いた雰囲気と、魅了催淫モードのメスガキ感に加え、中身はママァな属性という複雑な乙女心をしていた。
「そうですね、少し試してみましょうか」
何の気なしにスキルを使ってしまうナツキ。本人も、まさか効くとは思っていなかったのだ。
ズキュゥゥゥゥーン!
「ぴぎゃああああああああああ~ん♡」
再び諸事情で自主規制されました――――
◆ ◇ ◆
話を追えてナツキが姉妹のところに戻る。
ただ、行きと違うのは、同行していたトゥルーデが、まるで事後のように気怠そうな顔と色っぽい溜め息をついていることだろう。
「んあっ♡ ふぅ♡ ナツキさん……凄かったです」
「トゥルーデさん、大丈夫ですか?」
誤解を生みそうな発言をするトゥルーデとは対照的に、ナツキの方は全くの通常運行である。
そもそも、エッチの知識も豊富なおませガールのトゥルーデとは違い、当のナツキは性知識に疎い純情童貞ボーイなのだから。
「話は終わりました。トゥルーデさんが停戦協定に協力してくれるそうです」
真面目な顔でそう話すナツキだが、横のトゥルーデは少しだけ姉妹を挑発するかのようにメスガキならぬメス顔である。
そんな状況である為か、大事な戦争終結よりも密室で二人に何があったのかの方が気になってしまう彼女たちだった。
「ナツキぃ! も、もしかして……この子と?」
愕然とした顔でフレイアが呟く。
「どうかしましたか? フレイアさん」
「どど、どうかしたって……ごにょごにょ」
口ごもってしまうフレイアだ。年上好みのナツキが、まさか年下に手を出すとは思えないのだから。
「トゥルーデさんと話は付いていますから、速やかに戦闘の中止と武装解除に移ります。ルーテシア帝国軍も、これ以上の攻撃は止めるように。捕虜の返還と合わせて交渉を」
蕩けているトゥルーデと、嫉妬と疑惑の目を向ける姉妹を他所に、ナツキはテキパキと今後の対応を話し続ける。
通常の場合、停戦交渉にはお互いの国の利害や思惑が絡み難しい問題であるのだが、今回はナツキの姉喰いペンペンで躾けられ、トゥルーデが何でも言うこときくメスガキにされてしまったのでスムーズに進んだ。
ただ、何でも命令して欲しいトゥルーデとは違い、ナツキの方は大真面目で、速やかに停戦を実現したいだけである。
エッチな気など微塵も無いのだ。
「ネルねぇ」
「は、はいなんだナ」
突然ナツキに声をかけられ、ネルネルが驚いたように顔を上げる。
「ボクは極東に向かいますから、ネルねぇたちは停戦処理をお願いします」
「そ、それは構わないゾ。わたしに任せるんだナ。そ、それと……」
「何かありますか?」
「な、何でもないんだナ」
何か言おうとしたネルネルだが、結局何も聞けなかった。本当は密室で何があったのか気になるのだ。
次にナツキがロゼッタの方を向く。
「ロゼッタ姉さん、ボクと一緒に極東に行ってもらえませんか?」
「えっ、ええっ! 私が一緒にかい?」
ロゼッタも蕩けているトゥルーデが気になっていたのだが、ナツキが自分を指名したことでテンション爆上げとなった。
「む、むはぁ♡ わ、私と二人っきりでかい? も、もちろんさ。キミと一緒なら何処までも行っちゃうよ♡ ふんすっ!」
ムチムチの恵体を躍動させながら応えるロゼッタの顔が紅潮する。
「疲れているかもしれませんが、今すぐ出発しましょう。マミカお姉様が心配です」
「そ、そうだね、すぐ行こう。私は頑丈だから大丈夫さ。で、でも、ナツキ君の方が疲れているはずだよ。途中で休息をとらないとね」
「分かりました。極東は遠いですから途中で宿は取りましょう。でも、ロゼッタさんのスピードが必要なんです。出来るだけ急いでください」
「りょ、了解だよ! スキル、肉体超強化! 神速超跳躍走法! うおおおおっ!」
ズドドドドドドドドドッ!
ビュゥゥゥゥゥゥウウウウウウゥゥゥゥ――――
ナツキを背負ったロゼッタが超加速し、一瞬で宮殿から飛び出し見えなくなった。
その光景を見送った女たちは茫然と立ち尽くすのみである。
「えっ、あれっ? ナツキ……」
我に返ったフレイアが口を開く。
「ちょっと待って! 私って、おいてけぼり? それに、この小娘とは何があったの? いやいやいや、そんなことより、さっきナツキが私のこと『彼女』って言ったわよね! 絶対言ったわよね! や、やった、やったわ! ついに彼女よ♡ きゃああああっ♡」
彼女候補1号から彼女1号に昇格したフレイアが大喜びだ。候補の時は許されなかった一段上のエチエチが、今の彼女ならば許されるはずなのだから。
「フレイアうるさい。彼女は当然私。神話の時代より紡がれてきた永遠恋愛神話のヒロインは、そう、私なのだから」
フレイアの妄想に水を差すように入ってきたのはシラユキだ。彼女も当然ナツキとのラブラブ妄想で頭がいっぱいである。
「はあ!? なんですって、シラユキ!」
「ふっ、エッチも解禁。ふへっ、ふひひっ♡」
「ぐううっ、この変な笑いがムカつくわね」
そんな、フレイアとシラユキが争っているところに、よせば良いのにトゥルーデが参戦する。
「ナツキさんの彼女は私ですね。密室で愛を誓い合ったのですから。そうですとも、私は心が広い女ですから、側女の一人や二人は許します。他の女が霞むくらいに、私の魅力とテクでナツキさんを堕とし――って、あれ?」
そこまで言ってから、トゥルーデがハッとなった。世界を震撼させている隣国の大将軍が、殺気のこもった目で自分を睨んでいるのだから。
「へえ……この小娘、勇気あるわね」
「極刑! ナツキを狙う小娘は極刑!」
「ふっ、ふぇええええ~ん! ご、ごめんなさぁーい! ちょっと調子に乗りましたぁ。ホントは何もありませぇん。ナツキさんに叱られただけですぅ」
本当に極刑にでもしそうな世界最強魔法使いに挟まれ、借りてきた猫みたいになったトゥルーデがが泣きそうだ。まさに凶悪な真紅の悪魔と冷酷非情な白銀の魔女に捕まった姫状態である。
「冗談はそれくらいにするんだナ。子供相手に大人げないんだゾ」
一番ヤバそうな女なのに意外と常識的だったネルネルによって事なきを得た。
実際に何もなくても、NTR匂わせは危険なのだ。NTRダメ、絶対!




