潜潜話
レビュー執筆日:2020/5/8
●ある程度個性は感じられるが、曲同士の区別が若干付きづらいか。
【収録曲】
1.脳裏上のクラッカー
2.勘冴えて悔しいわ
3.居眠り遠征隊
4.ハゼ馳せる果てるまで
5.蹴っ飛ばした毛布
6.Dear. Mr「F」
7.こんなこと騒動
8.眩しいDNAだけ
9.ヒューマノイド
10.グラスとラムレーズン
11.正義
12.優しくLAST SMILE
13.秒針を噛む
ボーカルの「ACAね」とは一体何者なのか、ソロアーティストなのかグループなのか、様々な事柄が謎に包まれているアーティスト、「ずっと真夜中でいいのに。」の初のフルアルバム。そんな彼女(達)の特徴としては、「軽快なピアノのフレーズ」と「ACAねのハイトーンで言葉数多めのボーカル」という点が挙げられるでしょう。『脳裏上のクラッカー』や『秒針を噛む』ではイントロから印象的なピアノの旋律を聴かせてくれますし、『蹴っ飛ばした毛布』ではサビの後半から流れるような演奏になる点が興味深く感じられます。ACAねのボーカルに関しても、ただ単に言葉を並べ立てていくだけではなく『ハゼ馳せる果てるまで』の「おいでって おいでって」や『正義』の「近づいて遠のいて 探り合ってみたんだ」等、色々と耳に残るフレーズを聴かせてくれます。歌詞全体の雰囲気としては、あえて文脈を無視して文章を組み合わせたような感じで、「まとまらない感情を吐き出したようでありながらも、所々で頭に引っ掛かるような言葉を残す」というスタンスが印象に残りました。
ただ、曲同士の雰囲気が若干似通っている点が気になりました。ボーカルとピアノのみのバラードナンバーである『Dear. Mr「F」』やヒップホップの要素を取り入れた『眩しいDNAだけ』のような楽曲はあるものの、アップテンポでまくし立てるように歌う曲がほとんどですし、明確なストーリーやメッセージを持たない「曖昧」な歌詞も相まって、曲同士の区別が少し付きにくくなっているように思えます。個人的には、曲のバリエーションをさらに増やしたり、もう少し歌詞を分かりやすくしたりした方がもっと面白くなりそうな気も。ある程度「個性」は感じられるので、それを活かしながらどんな音楽性を見せてくれるのかが今後の彼女(達)を占う鍵となると言えるでしょう。
評価:★★★★




