表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
10.プリンセスのガーディアン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/129

2.嫌な予感(テル)

 「おはようございます!」


 俺たちに気付き、手を振りながら挨拶したのはのは『リウム』だ。


 俺が教えてる中等部で最年少。小柄なのに、一番やる気もあって気も強い。

 孤児だからゼルと同じようにこの学校の寮で暮らしている。それもあり、いつも俺より早く扉の前で待っている。


「おはよう。今日も一番乗りだな」


「はい!もうストレッチは終わりました!」


 リウムは模造刀を背中に担ぎながら、ニコニコとその場で屈伸して見せた。


「おはよう。今日から私も一緒に参加させて貰います。よろしくね?」


 俺の後ろに隠れるように立っていたシュウが声をかけた。

 リウムは全く気付いていなかったみたいで、声をかけられた瞬間に目を丸くして、慌ててお辞儀している。


「すみません!テルさんが大きくて、全く見えませんでした…」


 シュウは気にしないで?と、手を振りながらリウムの隣りへと歩み寄る。

 カチコチに固まってしまったリウムを少しでも和ませようと、笑顔で「大きいよね?」と同意してる。


「ほ…本当ですよ!!どうやったらそんな大きくなるんですか?」


「それさ…さっきも言われた」


 俺の上着を羽織っているシュウをチラリと見る。

 視線に気付いたシュウは、にっこりと微笑みながらリウムの肩に手を置いた。


「よく食べて、よく寝てたんだって?」


「!!そんなことで、こんな巨大化します?」


「待て待て。人を化け物みたいに言うなって」


「ね?…絶対に無理だよね?」


「…まぁ…二人が仲良くなれそうで良かった。昨日話してた『天使族の子』ってリウムのことだから…」


 リウムの背中を叩きながらシュウに伝えた。


「テル君から治癒魔法を教えてあげてって言われたの。よろしくね?」


 リウムは青い瞳をまん丸に見開いて、色白な顔を赤く高揚させながら大きく「はい!」と、返事をした。


 リウムは幼い頃イーターに親を殺されてしまったから…。自分の出生が良く分からないことも話していた。


 聖力も少なく治癒魔法を使うと、すぐに疲れてしまうし、あまり得意ではないようだ。

 治癒魔法を使うことは、聖力を増加させることに繋がる。


 イーターとの戦いを望んでいるリウムは、その為に治癒魔法を使えるようになりたいと前に話していた。


「テルさん僕の話したこと…覚えてくれたんですか?」


そっち(治癒魔法)は良くは分からないから。シュウに教えてもらえばいいよ。すごいから」


 そんな話しをしていると、残りの中等部の子達も集まり始めた。


「うわっ!!美女がいる!!」

「あの時のっ…!!また来てくれたんですね!」

「やったーー!」


 シュウを見つけて大声で叫び始めてしまった。


「コラ。真剣にやらないといけないだろ?もうすぐ剣術試験もあるんだから」


 騒ぎ立てるみんなを何とか収めながら、練習ルームへとみんなで入って行った。



***



 リウムがシュウと治癒魔法の特訓をしている最中に、俺は他の人達の剣術指導を行う。

 そしたら、リウムにどうしてもタイムラグが生まれる。


「私がリウム君の剣術指導もするよ?」


シュウがそう言ってくれて助かった。


「よろしくお願いします!!」


 リウムも目を輝かせてシュウに頭を下げているし。


「じゃあ、任せるよ」


 たった一日でシュウとリウムの距離はかなり近くなった。こっちが妬いてしまうくらいの手取り足取り。朝練の最中シュウはリウムに付きっきりだった。

 それもあってか、朝練が終わる頃には2人は打ち解けていた。


「リウム君すごく飲み込みが早いよ。次も、頑張ろうね」


「ハイ!よろしくお願いします!!シュウさんが来てくれて良かったです」


 リウムは深くお辞儀をして、みんなと一緒に出て行った。シュウも、リウムの背中に微笑みながら手を振っている。


「ありがとう。シュウが来てくれたおかげで助かった」


「私もいい気分転換になった。…ありがとう」


「それなら……良かったよ」


(やっぱりいい気分はしないよな…)


 24時間誰かに見張られているって思ったら、いい気分はしないよな。そんなことを考えながら、時計を見上げた。


 大会の朝練が始まる迄には少し時間がある。


「少し休憩してからフィールド訓練に行こうか?」


 と、隣りにいるはずのシュウに声を掛けたけれど返事は無かった。

 気付くとシュウは、何故かルーム内の武器ロッカーへと向かっている。そしてそこから、二本の剣を取り出した。


(…嫌な予感がする)


「剣なんて取り出して…どうしたんだ?」


「私…狙われてるんだよね?お父様が24時間の監視をつけるくらいに。だから、私にも剣術の手合わせをして欲しいの」


「……さすがに生身の剣でやるのは危ないだろ?」


 俺が剣を取り上げようとするのを、首を振って阻んだ。


「怪我をしてもいいって思ってるよ。だから…本気でやりたいの」


(気を抜いてた……)


 警備の厳しい家からも脱走するような、シュウが俺に大人しく護られてるはずも無かった。


 俺を見つめるシュウの視線は真っ直ぐで、強い意志をもっているような…覚悟を決めているような…そんな表情だった。


「…分かった…」


 差し出された剣を受け取り立ち上がる。

 そんな俺に、シュウは「ありがとう」と微笑んで剣を合わせた。


 結局俺はシュウには甘い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ