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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
9.新たな依頼

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6.試してみる(ユリア)

 「試してみようか」と言って降ろされたベッドの上で、啄むような軽いキスを受け入れている。

 レイが何を試そうとしているのかはイマイチよく分からないままだけれど。どうでもいいくらい、頭の中はとろけてしまっていた。


「…もう少し口…開いて…」


 艶っぽい瞳で見つめて、おねだりされるから…。私はレイの言いなりで口を少し開いた。

 レイは口の端で笑いながら唇を重ねると、舌を吸って口内を弄った。

 その感触が心地良くて、レイの背中に手を回した。時々漏れ聞こえる息遣いにゾクゾクする。

 そのままレイを受け入れる。また『魅了』になるんじゃないかと思わなかったわけじゃないのだけれど。

 それでもいいと思って、覆い被さるレイを受け入れて意識を白く飛ばした。


 身体はレイの魔力が流れ込んできて温かいなんて、心地よい気持ちでベッドに倒れこんでしまった。


***


 次に目を覚ました時にはベッドの上で…私は身体を起こして身の回りを確認した。

 服はしっかり着せられていて、おまけにブランケットまでかけられている。


(…また…意識とばしてた…)


 魔力吸収の後は意識が飛びやすいのか…。それともただ単にレイとの()()が気持ち良すぎるのかは分からないけど…。


 ベッドの上でぼんやり考えていると、水を手にしたレイが微笑みながら部屋に戻って来た。


「おはよ…。まだ声は出さないでいいよ」


 戸惑う私の額に唇を落とすと、ベッドの傍らに座った。ボトルを持つレイの人差し指には、くっきりと歯形が付いている。


「……っ!!」


 レイにその傷を残したのは私で、傷付けてしまった理由は声を出さないように、レイが私に指を噛ませたからだ。

 傷の残った指にそっと触れて口パクで「ごめん」として見せた。


「…あぁこれ?気にしなくていいよ。可愛いかったから…。何ならくせになりそう…」


(癖になりそう!?!?)


 やめてという意味も込めて、顔を真っ赤にしながら、潤んだ瞳でレイを見上げた。


「…エッロ……。何?もう一回していいの?」


 もう一回なんてさすがに無理。テルが帰ってくるし。声を出さないでいられる自信ない…。


(レイの魅了はダメだ…死人がでる…)


 激しく首を振る私に、レイは「じゃあ試そうか?」と、呟いて肩を抱き寄せた。


「今から魔力のコントロールの仕方を教えるよ」


 確かにそれを教えると言っていた気がする。


「目を瞑って?視界が無い方が集中できるから。それと両手は重ねてお腹の上に置いて。触れているところは温かいし、集めるイメージしやすい」


 言われた通りに目を瞑り手を重ねた。レイはその手の上に手を重ねてくれた。耳にレイの吐息がかかる。


「俺の重ねた手に意識を集中して…。体の中で魔力の流れを感じ取れる?」


 そう言われて意識を集中させた。下腹部の暖かさと心臓の鼓動…それに合わせて循環する血液の流れ。

 それとは別に私の中を流れる、熱い熱の流れを感じて小さく頷いた。


「良かった。今度はそれを下腹部に当てた手の下に集めて…なるべく多く」


 そんな事を言われても、いまいちどうすればいいか分からない。


「イメージすればいいよ。熱を集める感じ」


 もう一度頷くと熱を手の下に流そうとイメージしてみた。

 だんだんと体が熱くなる。背中かじっとりと汗ばんだ。イメージするのって以外と難しい。

 それでも、徐々に把握出来るようになってきた。


「…集まったらそこに留める。少しも漏らさないように…強く念じてみて」


(……少しも漏らさない!)


 意識してみるけどそれが難しい。熱がぼやけて体内にまた流れ出してしまう。離散させないように集めると、身体に力が入る。

 魔力を読んで魔法を使うって…こんなに体力使うなんて思わなかった。

 集中すればする程体が熱くなる。ひたいから汗が伝いポトリと手の上に落ちた。

 汗を拭おうと手を動かすとレイに強く握って止められた。その瞬間、集めたはずの熱は身体の中に散ってしまった。


「ダメ…。もう一度初めから。慣れればスムーズにできるから…」


 言われるままにもう一度イメージしてみる。「集まってきている」と、レイが呟いた。

 私の体の中に流れている自分の魔力を、レイは感知できているようだった。


「うんいい感じ。それを留めて?形は丸でも四角でもいい。イメージしやすい形で留める」


(丸い…球体…)


 形をイメージすると留めやすくなった。魔力の熱がくるくると毛糸玉のようになって留まった。


(…これを……少しも漏らさない)


 それがすごく難しくて、汗が全身から吹き出す。胸が上下する程息が荒く浅くなる。


「…辛いけど、その状態で五分耐えて」


 後から抱きしめるレイの腕の力が強くなる。重ねられた手は離れないように、指の間を絡めて握られた。

 少しでも気を抜くとまた振り出しに戻りそうだ。いつの間にか絡めた指を強く握りながら、肩で息をしていた。

 一瞬も気を抜けない状態。身体の中の球体がバラけないよう、必死に念じた。


「ユリアうまいし大丈夫。慣れたら楽になるから」


 初めは半信半疑だったけど、レイの言う通り。2~3分ぐらい経った頃から感覚は安定してきた。


「五分経った。チカラを抜いてみて?それでもその場所で留まってるなら、完璧だから」


 おそるおそる力を抜いてみる…。手の下にあるレイの魔力はそのまま体内の一箇所に留まっている。


「すごいな…留めるのは完璧」


 レイの手が頬に触れた。褒められて悪い気はしない。


「じゃあ応用。今度は俺の魔力をユリアの流れに合流させてみて?熱で飴が溶けていくように少しずつ…混ぜ合わせるんだ」


 合流できそうな量を解いて絡める。レイの教え方が上手いから、イメージだけで何とかなりそうだった。


「ゆっくりでいいよ?…他人の魔力なんて『毒』だから…苦しくなったらすぐにやめて?」


 レイの魔力が『毒』だなんて思えない。こんなに暖かくて柔らかいのだから。

 混じり合い私と一つになる感覚が心地よくて、さっきまでの辛さなんてどこかに消えてしまった。


(できた…?)


 魔力を吸収した後の違和感のようなものが無くなった。何となく声を出しても大丈夫のような気がして、レイを見上げた。


「…うん…。混じり合ってる。上手く説明できないけど、今ユリアに吸収された魔力は…無機物に魔力を込めた時に似てる」


 目を丸くしながら「ここまで出来るとは思わなかった」と、レイも驚いているようだった。


「…俺の魔力をユリアから感じるけど『微か』になってる。…いいよ?声、出してみて…?」


 多分大丈夫だと言ってくれるけれど、それでも不安で…。口を開いたままで固まった。

 

「心配しなくていいよ?…ここには俺しかいないし。魅了になったら魔力が尽きるまでユリアに注ぎまくるだけだろ?」


「!!っ…!!」


 恥ずかしげもなく涼しげな顔でそう言うから、こっちが真っ赤になった。


「むしろ本望。いいよ?何回でも絶頂に導いてあげる…」


 汗ばんだ私の髪に指を通しながら、レイは耳元で「名前を呼んで?」と、囁いた。

 やっぱりレイは優しい。臆病になってしまう私にそうやって声をかけてくれる。

 レイが大丈夫だって言うなら、大丈夫な気がして絡めた指を強く握った。


「……レ…イ…?」


 恐る恐る声を出してみる。目を合わせレイの頬がかっと紅くなった。それを隠すようにレイは顔を覆って俯いた。


(やっぱり…ダメ…だった…?)


「……やっぱり無理かも」


「…えっ…?」


 上手くレイの魔力を吸収できたし、暴発はしてないと思ったんだけど。自分が不甲斐なくて泣きそうになった。


「無理。…ユリア可愛い過ぎ。『魅了』状態じゃなくても、もう一回やりたい」


「…え…?ちょっ…レイ…魅了じゃ…」


「…魔力吸収は完璧だから安心して?」


「安心して…?じゃなくて…!!服脱がないで…!!」


 私は掴みどころのないレイに振り回されてばかりだと、大きなため息をついた。

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