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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
8.アンデット討伐

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3.合流(レイ)

 翼を持ったイーターは、サクの血をポタポタと滴らせながら駅の中に入って行った。

 お陰で見失うことはないけれど、多分この出血量じゃサクはもう助からない。

 もしもあのイーターが他の二人も喰らっているのなら…かなりまずい。


(フーディアまで喰われたら…もう勝てない)


 食糧を食べた直後だとイーターの肉体は強化される。傷の治る速度も上がるし、身体そのものの強度も上がる。

 特技を持っている場合はその特技の能力値も上がる。喰えば喰うほど強くなる。それがイーターだ。

 喰った人間がガーディアンなら、尚の事栄養価は高い。これ以上ガーディアン…しかも隊長クラスを喰らって、強化される状況は避けないといけない。


 そんなことを考えながら、駅構内に入ったその瞬間、レイスが大量に襲いかかってきた。


「うわーっ!レイ助けてくれよ!まだ死にたくないー!」


「退いてろよ。…邪魔っ!!」


 腕にしがみつくタイガのせいで、反応が遅れてしまった。


(くそっ!!)


「レイ!任せて!」


 反応の遅れた俺の代わりに、アスカが魔法を放ってくれた。お陰で足は止めずに済んだ。


「邪魔とか言うなよ!仕方ないだろ!さっきみたいなことになったら、俺死んじゃうじゃん!!」


「……はぁっ?」


(こいつ、何でプロガーディアンになったんだろ)


 タイガが俺の背中に隠れて叫んでいる。


「…それ聖なる武器だろ?レイスに効きます。戦って下さいよ。先輩」


「お、お前ゴミ虫でも見るような目で俺を見るなよ!イーターなんて、反則だろ?!今日の討伐対象は雑魚のスケルトンとレイスだって聞いていたんだ。それにレイが居るって聞いたから、参加することに…」


(…何だ…?)


 俺の視界の中に異変は無い。それなのに、叫び続けるタイガの背後からすごい殺気を感じた。


ーー攻撃が来る。


直感でそう思った。その瞬間にタイガを引き寄せた。

 氷の壁を自分達とティナ達の周囲に張り巡らせた。

 その瞬間、氷の壁にビシビシと銃弾が突き刺さった。


「…すごいな~。よく僕の存在に気づいたね?」


 前方の壁から声がする…。良く見ると壁が人の型となって浮き出た。


 両手に銃を持った手足の長いイーターが現れた。目をギョロギョロさせながら、血まみれの口でニタァとわらっている。


(…擬態出来るイーターか。二人を喰ったのはコイツだな…)


 でも、油断しまくっている。人語は話せるけれど、さっきの翼のやつよりは弱い。…気がする。


 すぐさま手を掲げて炎の魔法を放った。


「ギャっ」


 小さな叫び声と共に銃が一丁カシャンと落ちた。

 予想通り。油断していたイーターの腕に命中した。


(こいつなら、一人で殺れる…)


 更に追撃しようと手を掲げた途端に、また擬態して目の前から消える。


(…擬態の特技が厄介だな…)


 イーターが消えると同時にスケルトンやレイスが大挙を成して襲い掛かってくる。

 

 注意力が裂かれる。スケルトンは武器攻撃をしてくるし、避けたり防御したりしてイーターの気配に集中出来なくなる。

 レイスは雑魚だけれど、攻撃を受けてしまうと一瞬動けなくなる。


(まとめて焼き払うか?)


 ダメだな。駅構内は密閉されてて狭い。こんな所で広範囲の魔法を放つと味方も巻き込んでしまう。

 ティナもタイガも魔法をよける程のスキルがあるとは思えない。

 アスカに全員を炎属性にしてもらうか?その間にイーターが誰かを襲うだろうな。考えながらため息をついた。


(…面倒だ…。1人の方が楽だった)


「レイ!コイツらは私が倒すから。イーターをお願い!」


 そう言うと、アスカがウィップで的確にレイス達を狙い撃ちにする。

 炎の属性を付けた聖なるウィップは、アンデットへの効果は絶大だった。


「レイ君私も大丈夫!イーターに集中して!」


 ティナは純血の天使族。アンデット達は触れる事を嫌がり、近寄ることは無かった。


「言われなくても…っ!!」


 手をかざす。でも、姿は見えない。壁や天井へ視線を移しながら気配を探る。


(手負のはずだ…何か手掛かりがあれば…)

 

「無駄だよ。さっき人を喰ったばかりで、すごく調子がいいんだ。腕ももう再生したし。すごいなぁ…俺」


 動き回っているのか声が移動して聞こえる。レイスに気を取られている間に、落ちていた銃も消えている。


(もう再生したのか?…それなら炙り出すために範囲を広げて炎魔法を放つ…)


「うわぁぁ!やばいじゃん!レイ俺から離れるなよ!!」


 魔法を放とうとした腕をタイガが泣きながら掴んだ。


「っ!!」


(こいつ、狂ってるのか?)


 魔法の軌道がずれる。慌てて、掲げた手を下ろすと、その隙に弾丸が飛んできた。

 避けきれない。魔法を放とうとしても、その手をタイガが掴んでいる。


 当たると思った瞬間に、すごい力で背後に引かれた。銃弾は避けられたけど、バランスを崩して派手に倒れてしまった。

 天井を見上げる俺に向かって、また弾丸がどこからともなく飛んでくる。


「ユリア!」

「分かってる!!」


(…ユリア…?)


 聞こえたのはテルの声で…。それに応えて、俺の目の前で剣で弾き飛ばしたのはユリアだった。

 弾丸は見えない所から放たれたはずなのに。ユリアはまるで見えているかのように反応して弾き飛ばす。あらゆる方向から放たれた銃弾は、一発も当たらなかった。


(ユリアはセイレーン…。聞こえているのか。そんなことより、何でユリアがここに?)


 なんて見上げながら考えてしまった。

 ティナが「あ…ありがとう…」と、呆気にとられながらテルに向かって言っている。


「レイ苦戦してるな?大丈夫か?」


 俺に手を差し伸べたたのはテルだった。


「…お前のせいで、大丈夫じゃ無くなった」


 テルの手を不機嫌に取ると立ち上がった。


「助かっただろ?」


 立ち上がった俺に、テルはそう言って笑った。確かに、あれだけいたアンデットは消え去っている。


「さすがテル。助かったよ」


 アスカが声をかけている。どうやらテルは、レイスとスケルトンをものすごいスピードでなぎ払ったらしい。


「…嘘だろ?あの量のアンデットなのに、攻撃を一発も受けなかった。アイツ何者なんだ??」


 タイガが後ろから声をかけるが、時間が無い。それには答えず、テルに状況を伝えた。


「奥にもう一体イーターがいる。隊長が向かってるけど、全員そっちの応援を頼む。ここは俺1人でいい…。むしろ1人がいい」


 全て見抜いている。テルは分かったと頷くと、すぐさまみんなに向き直った。


「統制を取る。今から隊長は俺。ユリアとレイにここをまかせる。それ以外は、俺と奥のイーターを追う。行くぞ」


 ユリアは戸惑いながら俺の顔を見て頷いている。


「お前さ…俺の話し聞いてた?」


「見えないヤツとどう戦うんだ?広範囲に魔法放つとかはやめろよ。一般人も残ってる危険性もあるし。ユリアがいた方がいい」


 納得なんてできない。テルの魂胆が見え隠れしている。そんな場合じゃないのに。

 タイガも首を横に振って俺の腕を掴んだ。


「嫌だ!俺はレイと残る!死にたくない!!」


「大丈夫です。俺が守りますから行きますよ」


 テルは無理矢理タイガを引き離すと、俺の肩をポンと叩いた。


「何の魂胆も無いって。知ってるだろ?ユリアは耳がいい。見えないアイツとは相性がいいはずだ」


 それだけ言うとテル達は、血痕を追って地下へと降りて行った。

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