9.気になる(ユリア)
ベッドの上でゴロゴロと転がりながら、枕を抱いて考え込んだ。
レイを怒らせてしまったのは、私の言い方のせいだって分かってる。
(でも…しっかり説明してくれないレイも悪いよ…)
交わる理由が『魔力を抜く為』なら、もしかしたら今後も『仕方なく』交わるのかもしれない。
(…それは…やっぱり嫌だ…)
でも、ダメだと言ったら…?そしたらレイはまた魔力の暴発が起きてしまうのかもしれない。
それはレイに苦痛を与えてしまうことになるのかも…。
(…レイが苦しいのも嫌だ…)
助けるのは私でありたい。そんなことを思いつつ、私の『チカラ』を使うから、絶対にいい顔をしないってこともわかっている。
多分「それはダメ」って、キッパリ却下されそうだ。
もう夕方になってしまっている。このままだと眠れそうもないし。それに、せっかくの休みにケンカして会えないのは嫌だ。
そう思って震える指で、レイに連絡してみたけれど、電話に出てくれることは無かった。
(…無視ですか…。そういうつもりなんだ)
だんだんイライラしてきた。アスカに繋いでもらおうとしたけれど、まさかのアスカにもつながらないし。
「もう…知らない…!!」
大きなため息とともにベッドにどさりと倒れ込んだ。
(……とりあえず話はしないとな…)
枕に顔を埋めて、右手にスマホを握りしめたままで、どちらかからの連絡を待つことにした。
(どうしたら良かったのかな?…もう…分からない)
そのままの大勢で寝転んでいると、右手のスマホが震えて慌てて飛び起きた。
着信は『アスカ』からで、何となくホッとしてしまった。
電話に出ると、アスカは「電話にすぐに出られなくてごめん」と謝ってくれた。
寧ろ私の方が喧嘩に巻き込んでしまって申し訳無かった。
レイと喧嘩したことを話すと、アスカは言葉を遮ることもなく、私の拙い説明を聞いてくれた。
「…レイの事知りたかっただけなのに、知ったら知ったで不安になって。…結局怒らせちゃった」
『はぁ…。レイの悪い所だよね?』
魔力の暴発を止める為の手段なら、今も続いているのかな?って思うよね。そこをまず否定するべきだよ。
『言葉足らずな兄でごめんね』
私を全肯定してくれるアスカに、ブンブンと縦に首を振った。
「レイが悪い訳じゃないよ?聞かない方がいいって言ったのに、私が話してって言ってしまったから…」
『そっか。うん、分かったよ。家に帰ったらユリアが話したいって言っておくね?』
「アスカ…。ありがとう…」
まだ家に帰っていないのに。私の着信に気が付いて、かけ直してくれたアスカの優しさにウルっとなった。
『…んっ…あっっ……っと待って…っ!!』
アスカの甘い声が漏れると同時に電話口を塞がれたのか、音が遠くなった。
(ん??…)
『何するの!?』
『…あまりに綺麗な横顔だったので。食べちゃいたくなりました』
電話の向こうで聞こえる声は、聞こえにくいけれど絶対にゼルの声だ。
(…え…?…ゼル君何したの?!)
「…ご、ごめんね。すぐに切るね!」
『ユリア!ちょっと切らないで!』
慌てているアスカの隣でクスクスと、可愛い笑い声はやっぱりゼル君だ。
『とりあえず、レイにはすぐ折り返すように言うから待っててね!』
「あ…。う、うん!!待ってる!」
『怒ってるアスカさんも綺麗ですね』
私とアスカの会話の途中で、ちょいちょいゼル君の明るい声が聞こえてくる。
『ごめん、ユリア!気にしないで。じゃあ、また学校で!!』
いきなりブツっと電話が切れてしまったから、スマホを手に固まってしまった。
「…うん…?」
(アスカとゼル君一緒にいるんだ…。そうなんだ)
色々と情報量が多い電話だった。なんて思いながら、もう一度ベッドに寝転んだ。




