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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
7.親睦会

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5.そう言うこと(ユリア)

 朝、目を覚ましたら隣で眠っていた筈のシュウがいなくなっていた。荷物もスマホも昨日と同じ場所に置いてあるのに、シュウの姿だけ見当たらない。


 慌てて飛び起きた私は、アスカにシュウがいなくなった事を伝えると、同じように青ざめて飛び起きた。


 二人で家中探しても見つからない。大声でシュウの名前を呼びながら探していたから、テルの部屋からゼル君が出てきてくれた。


「どうしたんですか?」

「シュウがいなくなっちゃって、今探してるんだけど…」


 ゼル君と話していると、レイも欠伸をしながら出てきた。


「テルもいないから…二人で出かけたんじゃない?テルに連絡してみたら?」


 テルがいないことに気付かなかった。レイに言われて急いでテルに連絡すると、予想通りにシュウが出たのでホッとした。


「何でテルと朝っぱらから二人でいないの?!」

「うるさ…。そんなの俺が知る訳ないだろ?」


 アスカは何故かイライラしながらレイに八つ当たりしている。

 そんなアスカをレイは軽く受け流して、私におはようと言ってからソファーに座った。


「おはよう…?」


 知らなかったけれど、レイは朝が弱いみたい。起きてきたのに、リビングのソファーにもたれかかってまた眠そうにしている。


 シュウの居場所も分かったし。少し落ち着こうとコーヒーを淹れた。


「テルさんと一緒にいるなら安心ですね?」


「そうだけど…」


 ゼル君は私が淹れたコーヒーを、みんなの為に運んでくれている。

 コーヒーを受け取ったアスカは、一口飲んで呟くとボーっとカップを見ている。心無しか元気がない。それに、なんとなくいつものアスカじゃない。


「そう言えば、シュウさんとテルさんは付き合ってるんですか?テルさんは好きだって伝えたっていってましたけど」


 テルはシュウのこと好きなんだろうなって思っていたけれど、好きだと伝えていたとか、そんな空気には気付かなかった。


「そうなんだ。私は何も知らないけど、テルが一方的にシュウのこと好きなんだと思うよ?」


「違うよ」


 私とゼル君の会話を聞いていたアスカが、いきなりそう呟いた。


「…最近シュウの雰囲気違うなって思ってた。小さな時からずっと一緒だから…分かる」


「…何が…?」


「シュウもきっとテルのこと気にしてる」


 思わず真顔になってしまった。私にはその変化は分からなかったから。

 アスカはシュウとずっと一緒にいたから。きっとシュウの微妙な変化に気付いたんだと思う。

 私は一番近くにいるのに、テルの微妙な変化なんて分からない。兄妹ってそんなもんなのかな。


(シュウが好きなんだろうなってことは、みんな気付いていたけどね。誰でもわかるか。あれは)


 そんなことをひとりで考えこんでいると、玄関から鍵を開ける音が聞こえた。


「シュウかも!!!」


 アスカはコーヒーカップを置いて、慌ただしく玄関へ向かって行ってしまった。

 その後をついて行くと、手を繋いで帰って来た二人を前にして、アスカが仁王立ちで立ちはだかっていた。


(アスカ、怒ってる!?!?)


「これだけ心配かけて2人で朝帰り?何?楽しい事でもあった?」


(やっぱり怒ってる!!)


「みんな心配かけてごめんね?」


 アスカのただならない空気に、シュウは謝っているけど、テルは全く気にしていない。


「別にシュウが謝ることじゃないよ。オートロックの説明忘れてたユリアと、朝トレしてること言ってなかった俺が悪かった」


(朝トレしてること、私も知らなかったんだけど)


 テルはシュウの髪を優しく撫でて優しい視線を向けている。

 シュウの手は握ったまま離さないし。シュウもそれを受け入れている。


「はい、これでこの話はおしまいね。シュウお腹空いただろ?」


「ちょっ!ちょっと、待って…。二人の距離が近くない?」


 勝手に話をやめて、シュウの手を引いて家に上ろうとするテルを止めた。

 さっきのゼル君の話しが気になる。シュウから返事は貰ってはいないはずなのに、二人の雰囲気は昨日と打って変わって《《恋人同士》》だ。


 焦る私の態度に、テルはわざとらしく考えこんで手を打った。


「ああ…。言ってなかったな。シュウに好きだって伝えて返事待ちだった。…で、

その返事をさっき貰ったんだ」


 そう言うとシュウの髪をもう一度愛おしそうに優しくなでて微笑んだ。


「…シュウ…俺と付き合ってくれるって」


「…え…?」


 目を丸くしながらシュウの顔をみると、照れながら小さく頷いていた。

 そんなシュウが可愛くて、アスカと顔を見合わせた。


「そう言うことだから…もう行こうか?」


 なんて言いながら、テルはシュウの手を引いてリビングに入っていく。残された私とアスカはもう一度顔を見合わせた。


「あんな顔のシュウ…初めて見た」


 そう呟いてアスカが呆然としている。


「なんか悔しい。テルにヤキモチだな」


 アスカはグッと背伸びをすると背を向けた。


「悔しいけど…お似合いだよ。テルなら任せてもいいかな?」


 アスカの表情は見えなかったけれど、その声はなんだか寂しそうだった。

 アスカは産まれた時からシュウとずっと一緒だったから。特別な存在だったのかもしれない。

 そんなことを考えていると、リビングからテルの怒鳴り声が聞こえた。


「レイ…部屋のベッド使って寝ろよな…」


 どうやらレイがソファーで寝てしまっているらしい。ゼルも何回起こしても、起きないと困り果てている…。

 アスカとユリアは顔を見合わせると、ため息をついてリビングに入った。

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