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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
7.親睦会

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3.パーティーみたい(ユリア/テル)

 他のみんなが買い出しに行っている間に、先に家に戻った私たちは部屋の片付けを急いで始めた。


「急げよ言い出しっぺ。あと数分でみんなが来るぞ?」


「今やってるよ!」


 私は朝食を食べたままのお皿を食洗機に入れながら応えた。その間に、テルはリビングに掃除機をかけたりして整えている。

 二人共似たような帰宅時間。さらに、テルは国王に呼ばれて、深夜にモンスター討伐の『アルバイト』にも何度か行っている。

 疲れ切った二人しかいないこの家は、散らかり放題になっていた。


「やっと片付ける気になった…」


 ソファーの上に置きっぱなしになっていたブランケットを畳みながら、テルはそう呟いた。


「うん。いい機会だったよね…?親睦会やるって言って良かったでしょ?シュウも乗り気だったし…」

「まぁ……そうだな」

「可愛い妹を褒めてくれてもいいんだよ?」

「うるさいな。口じゃなくて手を動かせよ」


 いつもより和やかな空気感が二人の間に流れてた。笑いながら軽口を叩くのだって久しぶりだ。


 そうこうしているうちに、チャイムがなった。玄関の扉を開くと、みんなが大きな袋を抱えて立っていた。


「遅くなってごめんね?」

「みんなお腹空いちゃってさ。ピザにしよーって買ってきちゃった」

「ジュースもお酒も用意しましたよ?」


「え…?」


 ゼル君がにこやかにそう言って、テーブルに飲み物を並べていく。大人びて見えるけれど15歳だ。


「買ったのは俺だけどな」


 お菓子の袋を私に差し出して、レイが呟いた。


「そうです。こっちの方が重かったから持って来ただけです。なので安心して下さいね?僕の方が力が強いので」


「そういうこと。悪魔族より力があるから気を使ってくれたの。ありがとう、ゼル?」


「アスカさんが僕にお礼を言ってくれた…嬉し」


「………楽しそうだね?」


「ゼルはジュースだからな。」


 そう言いながら、テルがテーブルにピザやチキンを並べていく。

 いつの間にかシュウも取り皿やコップを並べて、もう食事の準備を整えてくれていた。それを見つめるテルの視線が優しい。

 あの空間を今邪魔しちゃいけないことくらい、鈍感な私でも分かる。

 

「さぁ、みんな食べようか?」


 サイドメニューも沢山あって、なんだか今からパーティーが始まるみたい。大勢での食事は久しぶりだったから、疲れていることを忘れてはしゃいでしまった。


***


「ここは片付けておくから、ユリアはお風呂に入って早めに休んでね」


 シュウは食事の後片付けをテキパキとすすめてくれる。


 その言葉に甘えて、ソファーから起き上がろうとすると、その手をレイが取った。


「一緒に行こうか?」


 一瞬何を言われているのか分からなくて、固まってしまった。


「何で!?」


「何考えてるの?ユリア、放っておいていいよ。一緒に行こう?お風呂用のアロマキャンドル買ってきたんだー」


 アスカはキャンドルを見せながらレイに舌をだして私の手を引いた。

 

 (さすがにみんないるのに、一緒にお風呂なんて入れない…)


 もちろん一人で入ったお風呂は、アロマキャンドルを浮かせた効果で、凄くリラックス出来た。


***


 久しぶりの長風呂から上がると、シュウとアスカの着替えを準備してなかったことに気づいた。


(服を貸してって言われてたんだった)


 みんな同じくらい疲れているんだと、急いでリビングにいる二人にそれを手渡した。


「ユリアありがとう。アスカ先に入って?」


「ありがとう。じゃあお風呂借りるね」


 アスカが手を振りながら階段を降りて行った。


***


 アスカがバスルームから出ると、次はシュウが入りに行った。

 シュウがリビングからいなくなると、テルは眠そうにしているレイを連れて、部屋に行ってしまった。


「ユリア良かったね?レイを連れて行ってくれて」

「そんなことないよ。レイは疲れてたから甘えたになってただけだし」


 私の隣に座って肩にもたれかかったり、眠そうに欠伸をしていたりしていたレイはいつもと違って可愛かった。


(これ言うとアスカはきっと呆れるけれど…)


「まぁ、レイは魔力消費が多いからね」


 アスカはさっきまでレイが座っていた私の隣りに座るとそう言った。サテン地のルームウェアが似合ってる。身長はアスカの方が高いから、全体的に少し短めかも…。


「アスカさんの写真撮っていいですか?」

「いいわよ。そのかわりゼルとは金輪際口きかないから」


「…じゃあ諦めます」


 しょんぼりとしているゼルがすごくかわいそう。


「アスカ…ゼル君泣きそうだし…。撮らせてあげなよ?」


「…ユリアはゼルに甘すぎ」


 アスカがため息吐くと同時に、バスルームからの呼び出し音が鳴り響いた。


「どうしたんだろ?」


 不思議に思いながらバスルームへ向かうと、脱衣室の鏡の前で困り顔でシュウが立っていた。


「…ユリア…。せっかく用意してくれたのにごめん。服無理かも…」


 恥ずかしそうにそう言うシュウは、渡した服の胸のボタンが止まってなかった。服が胸に引っ張られて、細いウエストがチラリと見える。


(スタイルいいじゃなくて!これは…ダメだ!!)


「ごめん!もっと大きめの服で何か用意するね!」


 大きな服っていってもクローゼットの奥底に沈んでる。あんな格好のシュウをいつまでも待たせるわけにはいかないし。


(こうなったら…背に腹は変えられない)

 

 覚悟を決めてテルの部屋の扉をノックした。


「何?」


 私だと分かった途端、面倒くさそうにテルが部屋から出て来た。


「服を貸して欲しいんだけど…私の服がシュウに合わなくて…」


 テルは一瞬目を丸くさせてから、失笑して分かったとだけ言って部屋へ戻って行った。

 絶対に私とシュウを比べて、バカにした。すごく腹が立つけど言い返せない…。


 部屋の前でテルを待っていると、1階からアスカの呼ぶ声が聞こえてきた。

 何かの止め方がわからないと言ってる。


「テル、ちょっと行ってくるけど、脱衣室は絶対開けちゃダメだよ!」


 それだけ叫ぶと急いで階段を降りた。


***


(シュウに着せるってことだよな?)


 黒いショート丈のプルオーバーを選んで部屋を出たけれど、さっきまでいたはずのユリアが見当たらない。


(そういえば脱衣室って叫んでたな。バスルームに置いとけってことか?)


 ーーなんて思った俺がバカだった。


 脱衣室の扉を開けると、下着姿のままで立っているシュウと、鏡越しに目が合った。


 ほんのり赤く染まった白い肌。溢れんばかりの豊満な胸。上気してうっすらピンクに色付いた頬。同じように潤んで紅く色づいた唇。濡れた髪が張り付いた白いうなじ。かろうじて履いていたショート丈のパンツから露わになった太腿。その全てが艶っぽい。


「テ…テル君!?」


 シュウの驚いた声にハッと我に返った。


(…ガン見してた)


 赤くなった自分の顔を手で覆い、すぐさま服を差し出した。


「悪い!ユリアの説明が…」


 何を言っても嘘くさくなってしまう。服を渡すとすぐに後ろ向きになった。


「ごめんね?っ!すぐに服着るからっ!」


 背中越しに話しかけるシュウに返事が出来ない位動揺してしまっている。

 そうこうしているうちに、完全に脱衣室を出るタイミングを失ってしまった。


(何焦ってるんだ…?)


 落ち着けと自分に言い聞かせて、深呼吸をした。


「もう着替えたから…」


 何とか落ち着いたところで、シュウに肩を叩かれて振り返った。

 俺の服は華奢な身体のシュウには大きすぎるし。シャツの裾からチラリと覗く太ももが、逆に艶めかしい。結局直視出来なくて、また顔を覆った。


「驚いたよね…?」


「いや…。驚いたのは俺じゃなくてシュウだよな?そんなつもりじゃ無かったんだ」


「大丈夫。天使族は治療の為に、服を脱がせたり、練習で脱いだりするから…」


「……ごめん。俺は慣れてないから…」


「!!そうだよね!?テル君は天使族じゃないよね!?」


 俺と同じくらい動揺しているのかと思うくらい天然なシュウの発言に、また変な空気になってしまった。


(決めた…後でユリアを殴る…)

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