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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
7.親睦会

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1.予選会の詳細(ユリア)

 放課後やっと帰れると思った途端に、イリーナ教官が私達に声をかけた。


「大会に選出されたメンバーは残ってね?予選会の説明をするから」


 と、いうことで選出されたA、Bチーム合わせて12人はみんなが帰った後の教室に残った。

 そう言えば本戦の前に予選があると、この前みんなと話をした時に聞いたきがする。


 (どんなことするんだろ…)


「実戦大会、初めてじゃ無いんだよね?予選ってどんなことをするの?」


 隣に座っているレイに聞くと、毎年変わるから参考にはならないかもと前置きしながら教えてくれた。


「一昨年は宝探しで去年は鬼ごっこだった…」


「宝探し…?鬼ごっこ…?」


 実戦的な大会だっていうから、もっと殺伐としたものかと思っていたけれど以外と楽しそう。


「ユリアが考えているような楽しいものじゃないから」


 ほんわかしていた私に気づいたレイはそう言うと顔を歪めた。

 それ以降レイは黙り込んでしまうから余計に怖い。私の不安な表情に気付いたシュウが、苦笑いを浮かべながら答えてくれた。


「ルールは遊びそのものだよ?だけど、ガーディアンに必要な洞察力とか対象人を護る能力を見る為に、本物の武器を持った『鬼』が襲ってくるの」


「武器を持った鬼!?!?」


 確かに、私の知っている鬼ごっこしない。

 シュウは苦笑いを浮かべながら、その続きを説明してくれた。


 予選会の場所は毎回同じ。Sクラス級のモンスターがあふれている島。『ディープミストマウンテン』で行われる。

 予選会では護衛能力を見るために、必ず護衛対象がいて、その『対象人』を守らないといけない。

 鬼ごっこの時は対象人は決まっていて、その対象人を傷つけないようにゴールに連れて行くというものだった。

 無差別に攻撃を繰り出すモンスターや、対象人を狙って攻撃する『鬼』はプロのガーディアン。


「攻撃を仕掛けるのは2ndレベルの人だから、すごく強いの」


「待って、ガーディアンのクラスって何?」


「…なんでお前はそこからなんだよ」


 私の問いかけにシュウは「編入したばかりだもんね」と言って微笑んでくれているけど、テルは大きなため息を吐いた。


 プロガーディアンは3rd、2nd、1stってクラス分けをされている。

 なりたてのガーディアンは3rdクラス。Sクラスモンスターや、イーター以外のアンデット討伐に参加できる…いわゆる一般兵。

 次が2ndクラス。このクラスはモンスター討伐に向かう際に、小部隊の隊長を任される。ここまできて初めてイーターと戦うことが出来る。

 最上級は1stクラス。このクラスになるとイーター専属で戦いを行い、イーター戦では部隊長となり指揮を取る。

 そう言うシステムだとテルは説明してくれた。


「じゃあ…パパは…?」


 そう聞くと、テルは苛立ったような見下す視線を向けて黙り込んだ。


「ガイアさんは1stの上だよ。国王軍の部隊長だから。イーターの討伐の指揮を取れる位強い人…」


「シュウ、バカな妹に説明してくれてありがとう。…でも、話し戻していいから」


(バカな妹……)


 シュウはテルに言われて頷くと、予選会の話しに戻してくれた。


(ちゃんとバカじゃないよってテルを諌めてるシュウ…優しい…)


「対象人を攻撃するのはガーディアンとモンスターだけじゃないよ?他のチームも対象人を狙ってくる」


「他のチームも?それって…対象人を私達が攻撃してもいいって事?」


 今度はアスカが頷きながら話をしてくれた。


「それは『あり』なルールなの。だから自チーム以外は全員敵になる」


 勿論、自分達も他チームの対象人を攻撃して傷付けるのは『あり』。

 対象人はゴール時点で少しでも傷が残っていたら失格となるから、わざとゴール付近で待ち伏せて、攻撃するチームも毎回いるらしい。

 それはそれで戦略として認められている。因みにゴール前であれば、天使族が対象人の傷を治癒魔法で治すことも、ルールとして認められている。


 そして予選を突破して、本戦に参加出来るのは各国で上位2組。


「早い物順だから、みんな死に物狂いだよ。だから殺伐とした空気感なんだよね」


 話しを聞いているだけでその空気が分かってしまう。遊びの名前を付けるべきじゃないと思わずにはいられないほどの、酷い内容な『鬼ごっこ』だった。


「対象人物護るとかさ…レイに出来るのか?」


 テルは真顔でレイを煽っているけれど、レイは視線を逸らすだけで言い返さない。


「テル、よく分かったわね?そうなの役立たず」


 図星だったみたいで、アスカもシュウも苦笑いしている。


「…何をしたの?」


「…宝探しの時、モンスターと襲ってくるガーディアンに苛立って、広範囲の炎魔法を放ってさ、宝を焼き尽くしたの。だから予選失格だった…」


 アスカがため息と共に言う。


「あれは、チームのスペックが低すぎ。戦略も下手くそだったし。早くに見つけたせいで他のチームからの攻撃を受け続けてた」


「そういえば、レイ君が怖いって相談されてた…」


「俺を怖がってる奴がリーダーなことが一番の問題だろ?」


 なんてレイはムスッとして言い返して黙り込んでしまった。

 拗ねてる姿が以外で、思わず吹き出してしまった。


「何となく分かりました。襲ってくる奴らをボコ殴りにすればいいってことですね?」


 ゼル君が可愛い顔で恐ろしいことを言いながら、にっこりと笑ってる。


 そんなゼルにみんなが静まり返っていると、イリーナとBチーム指導教官のトム教官が現れた。


「明日からの予定表を配るわよ?そこにも書いてあるけれど、予選会は『かくれんぼ』。」


 教室に入った途端、イリーナは予定票を配った。


「ルールは簡単。ブルームンの紋章の光るバンクルをつけて隠れている対象人を一人見つけ出し、ゴールに連れて行く」


 受け取った予定票には明日からの訓練内容がびっしりと書かれている。

 大会まで放課後は1時間、実戦ルームでのフィールド訓練。それに合わせて本戦に向けたバトル訓練も並行して行う予定となっている。

 Bチームのファリスは、予定表を見ながら「キツイ」と呟いている。その気持ちがなんとなく分かる。


「毎年同じだけど対象人はゴール時に傷ついてたら失格となるから、天使族は少しの傷も見逃さないように」


 イリーナ教官に言われたファリスは、気まずそうに「はい」と呟いた。


「隠れてる対象人は10人。ガーディアンのクラス2ndだ。先着順で2チームが勝ち上がる事になるからスピードも大事ね。参加チームは40チーム計240人。だから、戦略も大事だな。そのつもりで訓練するように」


 イリーナ教官の言う通り、争奪戦になることは目に見えている。それに加えて、モンスターや対象人を攻撃するガーディアンもいるらしい。


「因みに大会に選ばれた人は期末テストは免除されるから。明日から頑張りましょう?」


それだけ言うと教官達は足早に去って行った。

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