1.ガーディアン養成校へ①
“ブルームン国立ガーディアン養成校”
“あらゆる戦闘能力を身につけ、イーターとの戦いに望んで貰います。その他モンスターの駆除や、傭兵として世界中で大活躍!聖なる武器も卒業時にお渡し!皆さんも、是非その一員になりませんか?”
生徒募集要項の表紙には、謳い文句が書いてある。
私『ユリア・フォレスト』は今からこの学校に編入試験を受けに行く。
双子の兄『テル』と一緒に。
地下鉄に揺られながら辺りを見渡した。休日の電車の中は人がまばらで、喧騒から切り離されたような空間だ。
手に持っていた募集要項の表紙を開いた。
「試験項目が筆記…選択5科目…。ねぇ、テルはどう思う?」
「?何が?」
「筆記試験…なんで必要なのかな?」
テルは呆れた顔で言った。
「本気で言ってるのか?チームにお前がいたら絶対死ぬな」
少しも笑ってない。真顔でいつもバカにしてくる。テルは前の学校でも主席。実技も剣術、槍術、体術などは学年で1番だった。
それに比べて私は…。短剣、剣術の実技は優秀だって太鼓判を押されたけど、筆記はだめ。何とか進級できるくらい。双子なのに何でこんなに違うんだろ。
「ガーディアンは実技重視だから大丈夫だろ。選択科目は種族学を選んだんだろ?この世界にはどれだけの種族がいるか。大きくわけて何種だ?」
「え?何?いきなり」
「いいから答えろよ」
狼狽ながら、テキストの内容を一生懸命思い出しながら指を折った。
「えーと…6種族?」
「…何勉強してきたんだよ。5種族だよ!大体何が入って6種族なんだよ。」
「天使族、悪魔族、精霊族、獣術族、神族…」
絶対に間違えてないはず…と、もう一度指を折りながら答えていく。
「まて。神族は末裔が少ないから、何年か前にノーマルに含まれることになっただろ?」そう言うとテルはため息をついた。
「じゃあ、残りはノーマル?」
「正解。この4種族に属する者の血を引いてない者のことだな。細かくわけると悪魔族にアンデッドも含まれたりするけど…もういいか…」
テルはまたため息をついてユリアの額を指で弾いた。
「いいか?その5大種族だけ書ければ多分20点はとれるだろ。まぁ、20点でうかるかどうかは微妙だけどな」
テルはニヤッと意地悪な笑みを浮かべた。痛いなぁと、額を抑えながらも全然答えが出てこない自分にため息をついた。
肩を震わせながら笑っているテルを睨んでいると、ヒソヒソと周りから話し声が聞こえてきた。
「モデルかな?顔小さいしこの辺で見ない制服着てるもん。撮影?」
「めっちゃカッコいい!絶対どこかで見たことあるよ!声かけて来てよ!」
車内を見渡すと、斜め前に座っている女の子達がテルを見ながら盛り上がっていた。
(…もう慣れたけど)
パパ譲りの綺麗なシルバーアッシュの髪。鼻筋の通った端正な顔立ちに、母に似た青みのかかった瞳。おまけに筋肉質で長い手足…羨ましい程の高身長。両親のいいとこ取りだ。
「隣の女なに?釣り合ってないよね」
「本当私だったら、恥ずかしくて隣に居れないよ」
「逆に、勇気あるんじゃない?」
わざと聞こえるように言って、大声で笑ってる。
(…やっぱり始まった)
パターン化してる私への攻撃が始まった。彼女ではなく妹です。と心の中で反論してみるけど、面倒だから直接は言わない。
確かに、髪の色はブロンドで違うけど顔は結構似てると言われるのに…。
横目でテルをチラ見すると、聞こえないフリを決め込んで、読む必要のない参考書を開いていた。
『次はガーディアン養成校前~』
アナウンスが流れるとテルは荷物を全部置いて席を立った。
「ちょっ!鞄持ってよ!」
テルは叫び声に絶対聞こえていたのに、無視して降りてしまった。
「~~!!」
この年で鞄持ちをさせられるなんて思って無かった。ユリアは二人分の鞄を背負って養成校駅に降り立った。