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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
5.中間試験

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4.実戦ルーム

 テスト前日は緊張して眠れなかった。


(大丈夫…。いつものテストより自信あるから)


 テストまでの1週間は普段より楽しかった。レイやシュウに勉強を教えてもらえたし。アスカとは分からないを共有することができた。今回のテストには凄く自信がある。


(テルは相変わらずバカにしてきたけど)


 そして今日は筆記テストの最終日。長く気の重かった毎日から今日ようやく解放される。


「やっと終わったぁ~」


 終了のチャイムと同時にグッと背伸びをしたてさけんだ。クラスのみんなも同じように緊張していたみたい。あちらこちらから同じような声が聞こえてくる。


「みんなお疲れ様ー。でも気を抜いちゃダメよ?明日は実技のテストだから」


 答案用紙をまとめながらイリーナ教官は釘を刺した。


「各々自習するなり実戦ルームでモンスターと戦うなり好きにしてね。今日は無制限に解放されてるから。明日の方が大事だし」


 頑張ってねーと、ひらひら手を振りながら教室を出ていった。解放された気分が一気に台無しになった。

 机の上にペタりと突っ伏しながら、少し休憩してから実戦ルームに行こうかな?なんて考えてた。

 そんな私とは違って、レイは帰り支度をしている。


「レイは…実戦ルームには行かないの?」


「悪魔族よ場合は瞑想をすることで、魔法の精度を上げるから。モンスターと戦うより、試験だしそっちの方が効率的だし」


 レイはイヤフォンを付けて、瞑想ルームへと向かった。


「…そっか…」


一緒に来てくれるのかと思った。なんて、心の中でがっくりと肩を落とした。


「あまり張り切り過ぎるなよ。終わったら、連絡して?迎えに行くから」


「…え?…うん!する!連絡!」


 帰りは一緒に帰ってくれるんだ。口の端が自然に上がる。ニヤニヤしながら頷くと、自分の武器ロッカーに向かった。


「魔法の精度あげなくても充分だよね?」


 ロッカーから武器を取り出したタイミングでアスカが話しかけてきた。隣りにはシュウも武器を準備している。


「アスカはどっちに行くの?」


「私は実戦ルームに行くよ?シュウも行くって。ユリアも一緒に行かない?」


「あ、俺も行く!」


 私が『行く』と返事をする前に、後ろからテルが叫びながら走ってきた。


「悪い。また今度埋め合わせするから」


 なんて一緒にいた人達に謝りながら、武器ロッカーを開いて大剣を取り出しているし。


「テルなら実技大丈夫だろ?」


「お前狙いで来る子も多いし、途中参加でもいいからこいよ!」


 騒いでいる人達にテルはもう一度謝るとこちらに向かって「行こうか?」と、声をかけた。


(逃げる為の口実だな…)


 テルを盗み見ると視線に気付いて「何?」と、苛立ちながら睨んできた。


「みんなで行こうか?テル君がいたら、強いモンスターにも挑めそうだし」


 シュウが不穏な雰囲気を察知してくれたのか、テルと私に向かって笑顔を向けてくれた。

 そういうところがすごく好き。シュウは優しくて、いるだけで癒されてしまう。

 テルもそう思っているんだろうなって思う。シュウに向ける視線が優しい。

 

「天使族も実技のテストあるんだろ?」


 なんて言いながら、スマートにテルがシュウの鞄を肩にかけた。シュウが戸惑いながら「ありがとう」なんて言っている。


「実戦大会では天使族も戦うことになるから」


「へー…。戦闘向きの能力じゃないのにな」


「身を守る為にも『戦える』ことって重要だよ?治癒魔法だけの天使族はただの足手纏い。そうなるのは嫌だから…」


 さっきまで、和やかだったシュウの雰囲気が不意に悲しそうになってしまった。テルは思わず「ごめん」と謝っている。

 アスカは聞こえないふりをして私に「行こうか?」なんて手を取った。


(触れてはいけないことだったのかな?)


「天使族がテストで戦うモンスターの最高クラスってCクラスなの。ちゃんと考慮はされてるよ」


「それなら尚更一緒に行かないと。シュウは無理するから」


テルはシュウの手を取って走り出した。


「!!無理はしないよ?自分の力量は分かってるから…」


 シュウの声が遠のいていく。


「そうよ。私もいるし。シュウなら普通にAクラス級ならいけるんだから」


「…アスカちゃんもう行っちゃったよ…」


アスカが振り返った時には、2人は教室から出てしまっていた。


「…テルさ…何なの?」


「さぁ?私もよく分からない」


***


 アスカと実戦室の更衣室に向かったけれど、そこにシュウの姿は無かった。


「もう入ってるのかな?」


「多分ね?連絡しても、返事ないし」


 アスカはテルに対して苛立ちを隠せていない。さっきからずっと眉間にシワを寄せている。「シュウに怪我させたら許さない」なんて怒りながら更衣室を出た。


「うわぁ…すごいね。ここ、本当に敷地内?」


入り口を潜った途端に風景ががらりと変わってしまった。


「驚くのも無理はないよね?そうよ。学校の敷地内」


 実戦ルームはガーディアン養成校の敷地に作られている。約500坪の敷地に、たくさんの木が植えられていて、川や岩場などモンスターの生息しやすい環境になっている。

 途中にドリンクショップや救護室などもあり、一応は安全面の考慮もされているようだ。

 普段は危険なので24時間の警備がされているし、使う時には必ず許可が必要となる。

 テスト期間や大会期間には出入りが自由となり、必ず入る前と後に指紋認証を行う。さらにはGPS付きのバンドを手首に巻かないと入れない。徹底的に管理された場所のなっている。

 実戦ルームの使用時間は1時間以内。その時間を過ぎても出て来ない場合、すぐに警備員が探しにくる事になっている。

 更に手首に巻いたバンドには、ヘルプボタンが付いており、怪我をして動けない場合は、それを押して助けを呼ぶこともできるらしい。

 説明を受けながら辺りを見渡す。確かに、警備員の数も多い。それに何人もの天使族が救護員のバッチをつけて、待機しているのがわかる。


「すごい、徹底してるね…」


「そうね。…無理するなって言っても、襲いかかってくるモンスターは選べないから。一緒に行動しようか?その方が安心して戦えるでしょ?」


 アスカの提案に頷くと双剣を装備した。


「奥の方が強いモンスターになっているから、さっさといこうか?」


「そうだね…」


 2人で話しをしている時にも、ゴブリンなんかが襲いかかってきた。それを余裕で薙ぎ払いながら、奥へ向かって突き進んで行った。

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