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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
5.中間試験

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2.出会えて良かった

 体温少し高いんだ。なんて思いながら、レイの胸に顔を埋めた。レイの熱が伝わって身体が温かい。背中に回った手の感触も…少し早い心音も全部が心地よくて、ずっとこのままでいたい。と、レイの背中に腕を回して目を閉じた。


『テストも近いし…静かな教室を探そう』


(……ん?……)


目を閉じると、聞こえてきたのはテルの声だった。耳がいいから聞こえてしまう。あらゆるノイズの中でも、知っている人の波数の声は聞き取りやすい。


『防魔室なら静かでいいよね?自習室いっぱいだし』


『そこでいいか…』


それに続いてシュウとアスカの声もした。試験勉強をするのに、人のいない教室を探しているみたい。


そして、私達がいるのは…その『防魔室』。


(……いや、いいよ?いいんだけど……。勉強しろって怒られる…)


「レイ…。テル達がここに来るかも。話し声が聞こえた」


「さすが…耳がいいんだな」


 普通はそんなこと言われても信じないと思うけれど、レイは名残惜しそうに腕を緩めた。私のことを信じてくれたことが、更に嬉しいくて、腕を背中に回したままレイの顔を見上げた。


「…何?…その物欲しそうな顔…」


「!!…ご…ごめん…!!離れるっ!離れます!」


照れて口元を隠しながら、そう言うレイに赤面してしまった。レイの顔も隠してるけれど赤くなってるし。2人して照れてしまった。


(顔が熱い。絶対に耳まで赤くなってる)


「…とりあえず、勉強してた体にしとこうか?」


咳払いをしながら、レイが近くの机を向かい合わせに動かした。大きなため息を吐いて机を動かしているレイを見て、クスッと笑ってしまった。


「…何笑ってるの?」


「拗ねてるなぁって…」


「…拗ねてるよ?もっと2人でいたかった」


「!?」


机の上にテキストを並べながら、レイはシレッと言ってのけた。


(心臓が持たない…)


その一言にドキドキしてしまう。更に赤くなった頬を手で覆って顔を隠した。


「…可愛い顔してないで座って?」


口の端を少し上げて、意地悪な笑みを浮かべている。反応見てからかってる?なんて、思ったけれど、レイの耳も赤かったから…。本心で言ってるんだって思った。


「…す…座る。座ります」


どもりながら、とまどいながらレイの向かいに座った。その数秒後に教室の扉が開いた。


「うわっ!ビックリした。居たのかよ?」


始めは驚いていたテルだったけれど、2人を見て何かを察したようにニヤけている。


「テル君どうしたの?…あれ?」


「…え?待ってなんで2人で…?」


続いて入ってきた2人も、目を丸くしている。


「な…何も!…べ…勉強しようかなぁと」


肝心なところでどもるし…なんだか凄く嘘くさい。レイは不機嫌そうにテルを睨んでいる。今度はアスカがからかうようにユリアの肩に手を置いた。


「…ユリア…?顔が赤いけど?何かあった?」


バレバレだよね?えへへと照れ笑いを浮かべていると、レイは分かってるだろ?とアスカに言って椅子を立った。


「ユリアに好きって伝えたから。邪魔だし帰れよ」


3人は驚いてレイのことを見ている。声も出ない感じ。


「…え…?これのどこがいいの…?」


テルは真顔でレイに詰め寄ってるし。無言で睨みつけると、テルはベッと舌を出して笑っている。


(…っ…ムカつくな…)


「ユリアでいいんじゃない。ユリアがいい。ずっと好きだった。出会えて良かった…。そう思ってる」


レイの真剣な表情に一同が静かになった。そんな風に言ってくれるなんて嬉し過ぎて、顔が更に真っ赤になった。


「なんか…幸せそう」


 シュウがニッコリと笑ってユリアに良かったねと声をかけた。コクンとうなづくとレイを見た。まだ日も浅いのに、そんな風に思ってくれてるなんて、やっぱり嬉しい。

 今度は観念したようにテルが両手を挙げて分かったと小さく呟いた。


「…ユリアちょっと来い。兄妹の話しがあるから」


 テルはユリアの手を引いて教室の外へ出た。少し2人で話がしたいと、みんなに言って扉を閉めた。教室から少し離れた廊下で立ち止まると、ユリアに向き直った。


「お前わかってるよな?レイにも絶対にバラすなよ。親父にも言われてるだろ?」


 テルの言いたいことは分かってる。自分の出生の秘密…。セイレーンとシヴァ神の血を引いているということを、誰にも知られてはいけない。

自分の秘密を知ってる人が増えれば、リスクも増えるということ。パパにも小さい時から、何度も念押しをされてきた。


「…分かってる。絶対に言わないよ」


 レイに隠し事はしたくは無いけど。万が一知られてしまったら、レイだけではなくみんなが危険に晒される。それが分からない程バカじゃない。テルはもう一度念を推すと、防魔室へ戻っていった。


(私だって知らないわけじゃない。今だに、ザレス国にセイレーンの力を狙われてること。血眼になって探してることを…)


「ユリア?どうした?」


廊下から戻らないユリアを心配したレイが教室から声をかけた。


「なんでもないよ。…良かったなって」


思わず嘘をついてしまった…。取り繕うようにレイに笑いかけて手を引くと、みんなの待っている教室に戻った。

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