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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
ガーディアン養成校

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18/129

6.実技の授業③

 電光掲示板に映された3組目の中にアスカの名前があった。


「私の番だ」


 ユリアにお先にと手を振り、ガラスルームに入っていく。アスカのことを気にしていたテルは、実戦を間近で見ようと立ち上がった。


「待って!私もいく!」


 そう言うとテルの後を追った。アスカは鞭の様な武器を手にしている。レイの妹だって言っていたのに何故『武器』を使うんだろう?と考えていると、遅れてレイがやって来た。


「アスカは武器で戦うの?」


「アスカは武器に魔法属性を付けることができるから…」


「属性を付ける?」


「ああ、見てれば分かるよ」


レイが指差すとブザーがなり、モンスターが投入された。


「集中して見てて?一瞬だから」


 そう言うと、ユリアを引き寄せた。何故か距離が近い。顔が近くて、耳に吐息がかかる。


(この状態で、どう集中して見ればいい…?)


咳払いをしつつ、気を取り直してアスカを見つめた。


 アスカはモンスターに向かって、武器を構えた。その途端ウィップを握る手元が薄ら光った。よく見ないと、分からない程の淡い光。


 攻撃しようと飛びかかる赤いマリモに当てると、マリモは弾け飛んだ。


「!?え?そんな強い攻撃じゃ無かったよね?」


「武器に『属性』をつけたから。水は火に強い。火は風で威力を増す。雷は土に打ち消される。水は電気をよく通す。そんな感じで、弱点の属性だと少しの攻撃でも大ダメージを与える事ができる。」


「そうなんだ…」


 話をしている間にも、鞭をうまく操作して青いマリモを倒していく。


「弱点をつけるにしても…早すぎじゃ?」


 さっきとは弱点の属性が違うはずなのに、流れるようにスピーディに倒していく。


「アスカは俺よりも魔力は低いけど、コントロールが異様に上手いんだ。それともう一つ…。生き物に流れる魔力を感じ取ることに長けてる」


「えっと…よく分からない」


「感じとれるんだって。近寄ると熱いから、この人は『属性・火』だなって」


「そうなんだ!」


「これは、分かりやすかった?」


「うん!ありがとう」


「あのさ、いつ突っ込もうかと思っていたけれど…。なんでそんなに距離近いんだ?」


 隣にいたテルが聞いてきた。自分でも不思議で見上げると、優しく微笑むレイと目が合った。その目に弱い…。意識しすぎて、また変なこと言ってしまいそう。


(ダメだ…。とりあえず、話題変えよ)


「あの…人にも属性ってあるの?」


 レイは優しく教えてくれるし、それが嬉しかった。


「そうだな。生き物全てに属性がある。水や火とか簡単な物じゃないけどな」


 話している内に、終了のブザーが鳴った。電光掲示板には『5分』とタイムが表示されている。


「残念。テルよりは早いと思ったのに」


 アスカが伸びをしながら戻ってきた。


「残念だったな?アスカの#それ____#他の奴の武器とかにも出来るとか?」


 テルが興味津々に、戻って来たばかりのアスカに話しかけている。普通校の時は見たことのない、キラキラした表情。何となくだけど、テルは#こういう__・__#ことが好きなんだろうなって思った。


「もちろん」


 アスカは自信満々に返事をすると、自分の能力について語り出した。


「私はレイより魔力が低い分、探知能力とコントロールの強化に力を入れたの。だからモンスターでも、人でもその『属性』が分かっちゃうんだよね」


 アスカはユリア達が驚くと思って話をしたけれど、2人のリアクションの薄さに「え?」と呟いた。


「それは、さっきレイから聞いて知ってる」


「何で、言っちゃうかな?まあ、良いけど」


 テルが答えると、アスカは少し頬を膨らませた。


「もういいや。シュウのところに行こう。ユリアの番になったら、呼んでね?」


 そう言うと、アスカは薄ら血の滲んだ腕を押さえて救護室へと向かった。


***


 中盤に差し掛かった頃に、ようやくユリアの名前が映し出された。


「私の番だ…」


 程よい緊張感と共に立ち上がった。レイが「無理しないで」と、気を使って言ってくれたけれど、大丈夫と笑った。


 ガラスルームの入り口には、ユリアの武器『双剣』が透明な箱に入って準備されていた。

 手をかざすと『認証完了』と文字が浮かび上がって、箱が開いた。


(よし!頑張ろう)


 双剣を装備すると、ガラスルームの中へと入った。ユリアが入った途端に、ブザー音と『モンスター投入』と音が鳴る。

 みんなと同じように、4匹のマリモが投入された。ユリアは飛び回っているマリモの音を聞いた。

 風を切る音。小さなモンスターの息遣い。ユリアにはすべての音が聞こえた。魔法を使おうと一瞬止まって大きく息を吸う。その瞬間を狙い斬りかかる。しっかり捉えたつもりだったけれど、一撃では倒せ無なかった。テルは簡単に倒していたけど、ふわふわした見た目とは違い硬かった。

 斬りかかられたモンスターは魔法を使うのをやめて、傷を負いながらも剣から逃れた。


(私の力じゃ、1撃じゃ倒せないっ!)


 後ろでまた息遣いが聞こえた。身を翻して、魔法を避ける。

 放った後もモンスターは止まっている。その隙を見逃さない。壁を蹴り勢いをつけた。胸の前でクロスに構えた双剣を振り抜くと、緑のモンスターが弾け飛んだ。


(コツは掴んだ!)


 ユリアが止まったところに、炎が飛んできた。頭上スレスレで炎それをかわし、モンスターをギリギリまで引きつけて攻撃する。

 力のない分どうしても至近距離からの攻撃頼りになってしまうけれど、素速さには自信があった。


(この戦法なら、魔法も私に当たらない)


 コツを掴むと後は早かった。最後のモンスターを倒し終えると、『タイムは5分』アナウンスが流れた。


 やりきった達成感で、顔がニヤける。さっきまでの緊張が嘘のようだ。ガラスルームから出たところで、アスカが声をかけてきた。


「凄いじゃん!」


「アスカ、やめとけよ?調子に乗るから」


 照れ笑いを浮かべていたのに、テルの余計な一言で台無しになった。


「耳が良いって言うのは本当だったんだな」


 レイの一言に慌ててしまった。セイレーンだと言うことは、秘密なのに。耳がいいとか話すと、そこからバレてしまう危険性があった。

 案の定、それを聞いたテルが睨んでるし。

「…あ!そうだ!シュウの様子でも、見に行こうっと!レイさんも行く?」


 あわてて無理やりに話を変えてみた。それに、珍しく食い付いたのがテルだった。


「シュウの回復術とかも見て見たいし俺も行く」


 何故かテルが先陣を切って歩いて行くし。絶対にシュウのことが気になってる。分かりやすくて笑ってしまった。


(わざとらしい)


 そんなことを思いながら、一角にある救護室に向かった。

 救護室では、シュウが4人の天使族を取り仕切っていた。怪我の深さなどを瞬時に見極めて、それぞれの能力にあった者に振り分けている。


「すごっ…」


 ふんわりした雰囲気のシュウが誰よりも素早く動き指示している。


「ジンの火傷は重度だから、私に回して。ミリヤは凍傷を見てあげて!」


 シュウは大声を張り上げている。あっけに取られながら救護室を覗いていると、シュウと目が合った。

 シュウはニコッと笑って手を振ったが、すぐに治療モードになって手当をしている。

 隣で見ていたテルが、何故か満足そうに微笑んでいた。…優しい表情。いつも、そんな顔しないのに。


「じゃま出来ないな?教室でレポートでもまとめるか」


 そう言うと救護室を後にした。レポートのことをすっかり忘れていた。待って!と言いながらテルの後を追いかけた。

 電光掲示板に映された3組目の中にアスカの名前があった。


「私の番だ」


 ユリアにお先にと手を振り、ガラスルームに入っていく。アスカのことを気にしていたテルは、実戦を間近で見ようと立ち上がった。


「待って!私もいく!」


 そう言うとテルの後を追った。アスカは鞭の様な武器を手にしている。レイの妹だって言っていたのに何故『武器』を使うんだろう?と考えていると、遅れてレイがやって来た。


「アスカは武器で戦うの?」


「アスカは武器に魔法属性を付けることができるから…」


「属性を付ける?」


「ああ、見てれば分かるよ」


レイが指差すとブザーがなり、モンスターが投入された。


「集中して見てて?一瞬だから」


 そう言うと、ユリアを引き寄せた。何故か距離が近い。顔が近くて、耳に吐息がかかる。


(この状態で、どう集中して見ればいい…?)


咳払いをしつつ、気を取り直してアスカを見つめた。


 アスカはモンスターに向かって、武器を構えた。その途端ウィップを握る手元が薄ら光った。よく見ないと、分からない程の淡い光。


 攻撃しようと飛びかかる赤いマリモに当てると、マリモは弾け飛んだ。


「!?え?そんな強い攻撃じゃ無かったよね?」


「武器に『属性』をつけたから。水は火に強い。火は風で威力を増す。雷は土に打ち消される。水は電気をよく通す。そんな感じで、弱点の属性だと少しの攻撃でも大ダメージを与える事ができる。」


「そうなんだ…」


 話をしている間にも、鞭をうまく操作して青いマリモを倒していく。


「弱点をつけるにしても…早すぎじゃ?」


 さっきとは弱点の属性が違うはずなのに、流れるようにスピーディに倒していく。


「アスカは俺よりも魔力は低いけど、コントロールが異様に上手いんだ。それともう一つ…。生き物に流れる魔力を感じ取ることに長けてる」


「えっと…よく分からない」


「感じとれるんだって。近寄ると熱いから、この人は『属性・火』だなって」


「そうなんだ!」


「これは、分かりやすかった?」


「うん!ありがとう」


「あのさ、いつ突っ込もうかと思っていたけれど…。なんでそんなに距離近いんだ?」


 隣にいたテルが聞いてきた。自分でも不思議で見上げると、優しく微笑むレイと目が合った。その目に弱い…。意識しすぎて、また変なこと言ってしまいそう。


(ダメだ…。とりあえず、話題変えよ)


「あの…人にも属性ってあるの?」


 レイは優しく教えてくれるし、それが嬉しかった。


「そうだな。生き物全てに属性がある。水や火とか簡単な物じゃないけどな」


 話している内に、終了のブザーが鳴った。電光掲示板には『5分』とタイムが表示されている。


「残念。テルよりは早いと思ったのに」


 アスカが伸びをしながら戻ってきた。


「残念だったな?アスカの#それ____#他の奴の武器とかにも出来るとか?」


 テルが興味津々に、戻って来たばかりのアスカに話しかけている。普通校の時は見たことのない、キラキラした表情。何となくだけど、テルは#こういう__・__#ことが好きなんだろうなって思った。


「もちろん」


 アスカは自信満々に返事をすると、自分の能力について語り出した。


「私はレイより魔力が低い分、探知能力とコントロールの強化に力を入れたの。だからモンスターでも、人でもその『属性』が分かっちゃうんだよね」


 アスカはユリア達が驚くと思って話をしたけれど、2人のリアクションの薄さに「え?」と呟いた。


「それは、さっきレイから聞いて知ってる」


「何で、言っちゃうかな?まあ、良いけど」


 テルが答えると、アスカは少し頬を膨らませた。


「もういいや。シュウのところに行こう。ユリアの番になったら、呼んでね?」


 そう言うと、アスカは薄ら血の滲んだ腕を押さえて救護室へと向かった。


***


 中盤に差し掛かった頃に、ようやくユリアの名前が映し出された。


「私の番だ…」


 程よい緊張感と共に立ち上がった。レイが「無理しないで」と、気を使って言ってくれたけれど、大丈夫と笑った。


 ガラスルームの入り口には、ユリアの武器『双剣』が透明な箱に入って準備されていた。

 手をかざすと『認証完了』と文字が浮かび上がって、箱が開いた。


(よし!頑張ろう)


 双剣を装備すると、ガラスルームの中へと入った。ユリアが入った途端に、ブザー音と『モンスター投入』と音が鳴る。

 みんなと同じように、4匹のマリモが投入された。ユリアは飛び回っているマリモの音を聞いた。

 風を切る音。小さなモンスターの息遣い。ユリアにはすべての音が聞こえた。魔法を使おうと一瞬止まって大きく息を吸う。その瞬間を狙い斬りかかる。しっかり捉えたつもりだったけれど、一撃では倒せ無なかった。テルは簡単に倒していたけど、ふわふわした見た目とは違い硬かった。

 斬りかかられたモンスターは魔法を使うのをやめて、傷を負いながらも剣から逃れた。


(私の力じゃ、1撃じゃ倒せないっ!)


 後ろでまた息遣いが聞こえた。身を翻して、魔法を避ける。

 放った後もモンスターは止まっている。その隙を見逃さない。壁を蹴り勢いをつけた。胸の前でクロスに構えた双剣を振り抜くと、緑のモンスターが弾け飛んだ。


(コツは掴んだ!)


 ユリアが止まったところに、炎が飛んできた。頭上スレスレで炎それをかわし、モンスターをギリギリまで引きつけて攻撃する。

 力のない分どうしても至近距離からの攻撃頼りになってしまうけれど、素速さには自信があった。


(この戦法なら、魔法も私に当たらない)


 コツを掴むと後は早かった。最後のモンスターを倒し終えると、『タイムは5分』アナウンスが流れた。


 やりきった達成感で、顔がニヤける。さっきまでの緊張が嘘のようだ。ガラスルームから出たところで、アスカが声をかけてきた。


「凄いじゃん!」


「アスカ、やめとけよ?調子に乗るから」


 照れ笑いを浮かべていたのに、テルの余計な一言で台無しになった。


「耳が良いって言うのは本当だったんだな」


 レイの一言に慌ててしまった。セイレーンだと言うことは、秘密なのに。耳がいいとか話すと、そこからバレてしまう危険性があった。

 案の定、それを聞いたテルが睨んでるし。

「…あ!そうだ!シュウの様子でも、見に行こうっと!レイさんも行く?」


 あわてて無理やりに話を変えてみた。それに、珍しく食い付いたのがテルだった。


「シュウの回復術とかも見て見たいし俺も行く」


 何故かテルが先陣を切って歩いて行くし。絶対にシュウのことが気になってる。分かりやすくて笑ってしまった。


(わざとらしい)


 そんなことを思いながら、一角にある救護室に向かった。

 救護室では、シュウが4人の天使族を取り仕切っていた。怪我の深さなどを瞬時に見極めて、それぞれの能力にあった者に振り分けている。


「すごっ…」


 ふんわりした雰囲気のシュウが誰よりも素早く動き指示している。


「ジンの火傷は重度だから、私に回して。ミリヤは凍傷を見てあげて!」


 シュウは大声を張り上げている。あっけに取られながら救護室を覗いていると、シュウと目が合った。

 シュウはニコッと笑って手を振ったが、すぐに治療モードになって手当をしている。

 隣で見ていたテルが、何故か満足そうに微笑んでいた。…優しい表情。いつも、そんな顔しないのに。


「じゃま出来ないな?教室でレポートでもまとめるか」


 そう言うと救護室を後にした。レポートのことをすっかり忘れていた。待って!と言いながらテルの後を追いかけた。

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