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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
ガーディアン養成校

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5.実技の授業②

 アスカに手を引かれて、レイの入った部屋の前に行くと、1番前の見やすい場所を陣取ることが出来た。と、言うかほぼ全員がテルの入ったルームの前に群がっている。


「レイの場所は空いてるね」


「あぁ…レイの戦い方は、真似できないから。参考にならないと言うか。…

観てればわかるよ。ほら、テルが始まるよ?」


 同時に戦うのかと思ったら、テルかららしい。ここからでも、テルの様子がちゃんと見える。さすがアスカだなと感心しといるとアナウンスが流れて来た。


『モンスターを投入します。構えて下さい』


 ゆっくり天井の扉が開き、拳くらいのマリモのようなモンスターが飛び出してきた。

 マリモは個体ごとに色が違う。素早く動きまわり、何匹いるのかも分からない。ビュンビュンと動き回りながら魔法を放っている。


(私も同じモンスターと戦うんだ。ちゃんと、見ておかないと!)


 気を引き締めて、大剣を構えるテルの様子を観察した。

 テルはマリモが放つ魔法を剣で受けたりかわしたりしている。あらゆる方向から魔法が放たれるのを、凝視しているとだんだんと目が慣れてきた。

 モンスターは4匹。それぞれ、炎系、水系、雷系、風系の魔法を放ってくるようだ。


(ここまでは、動体視力で何とかなる)


モンスターは、魔法を打つ瞬間一瞬止まる。魔法攻撃自体はそこまで破壊力のあるものじゃない。


(テルは、その瞬間を狙ってる)


 思った通り。テルはその瞬間を狙って切り込んだ。斬られた赤いマリモが弾け飛んだ。

 次は氷の刃が真後から飛んでくる。それをジャンプしてやり過ごし、そのままの勢いでモンスターに剣を振り下ろした。青いマリモが弾け飛んだ。

 マリモは連携してるのか、次は風の刃がとんできた。テルは大剣でガードをすると見せかけて、そのまま弾き返した。モンスターに風の刃があたり、弾け飛んだ。

 残り1匹。テルは真ん中で立ち止まった。わざと隙を見せているようだ。そこをモンスターが狙って、魔法を放ってきた。

 雷の魔法を放ったようだが、当たる前にテルが斬りかかっていた。弾けると同時に、テルは大剣を背中に戻した。


『終了ね。タイムは3分よ』


 群衆から悲鳴にも似た歓声があがる。『すごい』とか『かっこよ過ぎ!』とか言われているのを聞いていると、自分のことのように嬉しくなる。


「…テルレベル高いね」


 アスカが目を丸くして呟いた。


「このモンスター、魔法攻撃の方が倒しやすいはず。それを剣技だけでこのタイム。…驚いた」


 アスカに褒められると、なんだか照れ臭い気持ちになった。


『次はレイ。準備はいい?』


 歓声も鳴り止まないうちに、どんどん授業は進んでいくようだ。


 アナウンスにレイは片手を掲げて応えた。部屋の中にモンスターが投下される。

赤いマリモが火炎魔法を放った。それと同時に、レイは右手をかざして氷の魔法を放った。氷は火炎を打ち消し、赤いマリモに当たった。


(もう、1匹倒したの!?)


 倒すとほぼ同じに、左手は緑のマリモに向けられた。マリモが風の刃を放ったが、それより早くレイの左手から炎の魔法が放たれる。

 レイの魔法は、モンスターの風の刃を取り込み更に炎を増し、緑のマリモに当たり、弾け飛んだ。

 無駄のない動きに息を飲む。一瞬たりとも目を離せない。


(そう言えば…レイ紋唱してない)

 

 今まで見てきた悪魔族は詠唱していたし、同時に別の魔法を放っている所は見たこと無かった。


「レイは魔法…唱えないの?」


 目を逸らせないと思いながらも、思わず隣のアスカに聞いてみた。


「レイは魔力のコントロールうまいから。詠唱は集中力を高める為のものでその言葉自体に意味はないの。ガーディアンを目指してる、悪魔族はほぼ唱えないよ」


 そんなものなんだ。種族が違うとやっぱり違うんだ。そう感心して聞いてるうちに、レイが最後のモンスターも倒し終わってしまっていた。


『さすがレイ。2分よ』


 アナウンスと同時に扉が開かれた。レイが部屋を出ようとした所で、テルが肩に手を回した。


「すごいなお前。何で片手ずつ違う魔法放てるんだ?」


 迷惑そうに眉間に皺を寄せると、レイが腕を振り払って言った。


「魔法使えないなら、そんなこと知ってどうするんだよ」


「悪魔族と戦う時の対策」


 笑って言うテルにレイはため息をついている。



『二人とも、出口でじゃれてないで、早く出なさい。後がつまるでしょ!』


 教官がみかねてアナウンスを流すと、ようやく2人が出て来た。出入り口には人だかりができている。


「テル君すごいね?体術とかも得意?」


「何でこんなにセンスあるのに、今まで大会とかも出てないの?」


「本当に実戦初めて?」


 2人の周りには人だかりが出来ている。というより、テルに群がってる感じ。質問攻めだ編入生だし気になるよね?と、遠くから傍観していた。


「…ユリアの兄、雰囲気柔らかいし。話しかけやすいから」


「そうかな…?レイさんの方が絶対優しいと思うけど」


「…さっきから思ってるんだけど。別人だって。それは…」


 2人でそんな話しをしていると、人混みから何とか逃れたレイを見つけて、大声で呼んでみた。


「やめなよ。無視されるから…?」


 アスカがいい終わる前に、レイがこっちに向かって歩いてきた。「何で!?」と、目を丸くしているアスカはひとまずおいといて、レイに「お疲れ様」と声をかけた。


「疲れる程、魔法使って無いけど」


 レイはイタズラに笑うとそう言った。こっちも釣られて「見てたよ」と笑って頷いた。


(ほら、こんな感じだよ?)


と、アスカはに視線を送ったけれど、アスカは言葉を失って固まっているようだ。

 

「すごかった!なんで別々の魔法を同時につかえるの?」


 


「…身体を流れる魔力を操作する。右は炎、左は水、それによって魔力を振り分ける。そんな感じ…だから紋唱する奴は絶対に出来ない」


 難しくてイマイチ理解が出来なかったけど、そうなんだ!と分かったふうに装ってみた。


「おい…どんな差別だよ」


 ようやく、人混みを逃れたテルが言いながらレイの背中を小突いた。


「差別じゃなくて、区別」


 しれっと言うレイにまたテルがじゃれつく。レイとテルは気が合うんだなと、微笑ましく見守ってしまった。


「テル君すごかったね。」


 後ろから、声をかけられて振り返ると、シュウが微笑んで立っていた。すごい出血だったと聞いていたけど、腕に注射の後があるだけで顔色もいい。


「シュウ!大丈夫なのか?怪我は…?」


 驚くテルにニッコリ笑って背伸びをしながら顔を近づけた。

「なんともないよ」と言うと、髪を上げて怪我した場所?を見せている。


(何…この、可愛いしぐさ)


 何となくだけど…テルの顔が高揚してる?照れ笑いして「良かった」なんて言ってるし。


(まぁ、そうなるよね?)


 体操服に着替えたシュウは制服の時よりも色っぽい。長い髪を束ねて白い首すじが露わになっている。胸はボリュームがあるのにウェストは細いし、足はスラッと長い。

 私でも見惚れるんだから、テルだって意識しちゃうよね。


(優しいしキレイだし…。本の中のお姫様みたい)


 シュウに見惚れていると、アスカが笑った。


「ユリア、心の声がダダ漏れ…」


 え?声に出てた?どこから?顔から血の気が引く。


「察しの通り、シュウはお姫様だよ?シュウのラストネームは『ブルームン』よ」


 頬を押さえて青ざめてるユリアにアスカはしれっと言ってのけた。ブルームン…ん?国の名前?


「え!この国のお姫様っ⁈」


「気にしないで!みんなそう言うとかしこまっちゃうから」


 固まるユリアにシュウは困ったように言った。まさか、こんな身近にプリンセスがいるなんて思ってもみなかった。

 焦るユリアを無視して、テルはシュウの手を取った。


「本当に大丈夫なのか?かなり、傷深かったけど?」


「大丈夫。編入初日に制服汚しちゃったね…。ごめんね?キレイにして返すから」


 シュウは顔の前で手を合わせる。その一挙手一投足が可愛すぎる。テルが何かを言おうとした時、遠くからシュウを呼ぶ声がした。

 授業が進んで、救護室に怪我人があふれてきたらしい。完璧に、今授業中だということを忘れてしまってた。


「救護室が大変な事になってるみたい。…もう行くね」


「無茶しないでよ?本調子じゃないんだから」


 アスカが言うと、シュウはニッコリ笑ってありがとうといった。4人はシュウを見送った。


「…かわいい」


 テルがボソっと呟いた。テルは私以外には優しいけれど、誰かを自分から「可愛い」なんて言っているのを初めて聞いた。

 何かが始まりそうな予感に、顔がニヤける。


「ユリア…分かるけど、授業中だからね?」


 そのアスカの一言で現実に戻された。

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