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聖なる歌声の守護人  作者: 桃花
ガーディアン養成校

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4.実技の授業①

 初めは緊張したけれど優しく頷きながら話を聞いてくれたり、ときどき前の学校のこととかレイの方から聞いてくれたり。

 時間を忘れるくらい色々話した。レイは自分のことはほとんど話さなかったけれど、私の話しは飽きずに聞いてくれていた。


「もう直ぐ、午後の授業が始まるな」


 レイは時計を見ながら呟いた。慌てて時計を確認すると急いで席を立った。まだ移動教室も分からないし、早く教室に戻らないといけない。


「ごめん!話しすぎちゃった」


「大丈夫。戻ろうか」


 そう言うとあの日と同じように手を差し出してきた。


「…え…?」


「迷子になったら困るだろ?」


「ならないよ!!」


 反論してみたけれど、自信が無い。ここに来るまでレイのことばかり考えていて、正直どこを通って来たかなんて覚えていないから。


「手を繋がないなら、全力で撒くけど?」


「何で?!」


 ユリアの困った顔を見て、レイは笑いながらもう一度手を目の前に差し出した。


「どうする?」


 完全に遊ばれてる。端正な顔立ちで、挑発するように見つめられると、やっぱり照れてしまう。さっきまで優しく話しを聞いてくれていたのに、何このギャップは。絶対にレイには敵わない。

 スカートで手をゴシゴシ拭くと、差し出された手に、恐る恐る手を重ねた。


「気にしすぎ」


 レイはまたしても、顔を隠しながら笑っている。


「気にします!」

 

 自分が周りの人が魅了される程の美しさだって普気付いていないのかな?なんて思わずにはいられない振る舞い方。遊ばれているだけでドキドキしながら、レイに手を引かれて防魔室を出た。


***


 教室へ向かって歩いていると、正面からアスカとテルが歩いてくるのが見えた。


「…え?…何があったの…?」


 その姿を見て絶句した。ブレザーは着ていないし、真っ白だったシャツは胸の部分から真っ赤に染まっている。レイも気が付いて目を丸くしているようだ。


「どうしたの?…それ」


「ユリアこそ…なんで手を…?」


 青ざめているユリアと同じくらい、アスカも驚いてそれだけ聞くと固まってしまった。視線は繋がれた手に釘付けになっている。それはそうか。


「あっ!これは、迷子にならないようにって…リードのような感覚だと思って貰えたら…」


 チラリとレイを見たけれど、アスカの言うことは耳に入っていないようにしれっとしている。

 顔を引き攣らせながら説明しているユリアをよそに、レイはテルに血痕のことを聞いている。

 テルとも話すんだ。なんてアスカはまた驚きながらも、テルの血まみれのシャツを指差した。


「これね…実は…」


 アスカはさっきの出来事をかいつまんで教えてくれた。どうやら、テルは絡まれたようで、それを止めに入ったシュウが、相手の攻撃を受けて怪我をしてしまったようだ。


「と、言うことで、テルは何も悪く無いから。悪いのはセイヤの方」


 アスカはそうは言ってくれたけど、テルも挑発したんだろうし。それだけ出血

のある怪我をしてしまったシュウも気掛かりだ。


「怪我人がシュウなら大丈夫だろ。こんなの怪我のうちに入らない。」


 心配そうにしているユリアにレイは言う。嘘でしょ?血でシャツが真っ赤になるくらいの出血なのに、怪我のうちに入らないとか、そんなことありえない…はず。


「とりあえず、これ着替えないと」


 テルは血まみれたシャツを見ると、レイの肩に手を回した。


「更衣室、案内しろよ」


「面倒だから嫌だ」


 レイはテルに冷たく言い放って、腕を払いのけようとしている。いつの間にか、繋いでいた手を離してレイは教室へと入って行った。そんなレイを、テルは待てよと追いかけて入って行く。なんだかんだ、テルとレイは仲良くなりそうだなって思ったり。


「行っちゃった…」


「そんなことより、シュウ!本当に大丈夫?」

 

「心配しなくて大丈夫。シュウだから」


 そう言ってアスカはユリアに笑いかける。天使族のことは分からないけれど、傷に強いのかな?と考えていると、アスカが時計を見てやばっと呟いた。


「次は実技室での授業になるから私たちも行こうか?」


 ユリアはアスカに手を引かれて、実技室へと向かった。実技の授業は、全員同じ場所で同じ課題モンスターを倒すという内容だ。

 更衣室で運動服に着替えると実技室に入った。6つの部屋に仕切られたガラスルームの中で戦い、終わった後に戦い方と弱点をレポートにまとめて提出という形だ。 

ちなみに、天使族は戦い向きではないので、救護室で怪我の治療を行うらしい。

 アスカの話しではモンスターと戦う順番は設置してある電光掲示板に映し出されるらしい。

 すごい施設だなぁと感心していると、アナウンスが流れてきて、みんな指導室と書かれたガラス張りの部屋の前に並んだ。


「1番始めは不利だから、魔法部門と体術部門から1人ずつ手本となる人を選ぶわね」


 アナウンスはイリーナの声だ。どうやら、実技の授業はイリーナ主導らしい。


「そうね。テルとレイ。あなた達2人で手本を見せてあげて。準備ができたら1番と2番の部屋に入ってね」


 周囲からどよめきにも似た声が上がる。確かに、一般クラスから編入してきていきなり見本として戦えと言われたら、面白く無い人もいるだろうし。普通指名された本人も嫌だろう。


(テルの性格だとそんなことないか)


 思った通りテルは返事をすると立ち上がり、その場で準備運動をし始めた。

 テルよりも気になるのはレイだ。やっぱり『見本』になる位なんだから、黒魔族の中でも、成績優秀なんだろうなと思う。

 いつもと同じと言わんばかりに、レイはガラスルームに入って行く。


「見やすいところにいこうか?」


 アスカが手を引いて、目の前まで連れて行ってくれた。ユリアは何故か緊張しながら、2人を見つめた。


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