表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/9

01 泉の間にて04

「殿下、まずは使徒様を王宮へ」

 このままでは埒が明かないと思ったのか、ブツブツ呟いていたガヤ集団とは更に後方王子側に立っていた、もう一つのガヤ集団中でも、ずっと落ち着いた態度を取り続けていた人物が声を掛けてきた。

 ちらりとそちらを見ると、顔は整っている方の、しかし体型はガチムチ系のいかにも騎士です、と言った男性で、恐らく百九十センチオーバー。中々でかく、近寄られるとちょっとした圧を感じる。


「あ、そうだね……では」

 その声かけにハッとした様子で王子は彼の方を振り向き、すぐさま私に改めて向き直ったが、

「ちょ、ちょっとお待ちください!神子様は神殿に……」

 と、先程まで団体でブツブツ呟いていたガヤ集団から、白くて長くて重たそうなローブを着た、福福としたお腹を持つおっさんが飛び出てきたので、そちらを振り向く羽目になった。


 はっ、なあに?王宮と神殿の権力争い勃発?あれだけネガティブ視線と発言かましてたのに?


「ヴェンデル猊下の管轄は女神イリシア様でいらっしゃいましょう。“ホウカ”様でしたらいざ知らず、ルーナ様のご対応は管轄外ではございませんか?」

 ガチムチ騎士は、福福司祭に、落ち着いた様子で、しかしガタイに任せた威圧を振りまいて牽制しているように見える。

「し、しかし……ハリアーフル様の神殿は王都外にしかなく、代行として……」

「でしたら、王宮側が対応の代行者となっても同じでしょう。しかも猊下は二人目の使徒様には随分と困惑しておられたご様子」


 王宮方も大概困惑してたし、胡散臭そうな顔してたと思うのに、ガチムチは素知らぬ顔で優位を取ろうとする。


 良い根性をしてるなぁ、このガチムチ。


 などとと、腕を胸の前で組みつつ思っていたら、

「マディル団長、神殿にお願いすれば良いではないですか」

 横合いから仲間を撃つ、ブレない妖怪イチャモンツケ。

「こら、エルマーったら!」

 と慌てて王子が銀髪従者の口を塞ごうとする。


 王子微妙に威厳ないし、従者相手に気安いな?


 ふとそう思って王子の頭の上を見ると、先程は気が付かなかった、妖怪イチャモンツケに対してオレンジ色の矢印が出ていることに気がつく。

(あれは親愛の色ね。親兄弟や友人に出やすいわ。彼と王子は乳兄弟だからとても親近感があるのね。まあ、でも、うふふ……)

 女神の声が頭の中に響く。

 思わずブワッと、寒気がした、ような気がした……。


 王子が妖怪イチャモンツケの口を塞ぐと同時に、ガチムチ団長は福福司祭へ向けた目をそらさずに、妖怪イチャモンツケの首根っこを掴んで押さえた。

「うぐっ」

 前と後ろから挟み込んで動きを止められ、妖怪イチャモンツケは苦しそうに呻く。


 ガチムチ団長、グッジョブ。


「恐らくですが」

 ガチムチは、一拍置いて重々しく次の言葉を言った。


「ルーナ様は、“ホウカ”様とは別の使命、そう、今一番困っている事を助けてくださるためにお越しくださったと思われます。その中心舞台は、王宮でしょう?」

「ま、まさか……」

 その言葉に、福福司祭はこちらをちらりと見てくる。

 その目をまたガチムチ団長に向け「し、しかし……」と呟く。

「王都外にある、ハリアーフル様の神殿はあまり大きくありません。東のメンデルであれば大きくはありますが、そちらでは遠すぎます」

「いっそそちらに行っていただいたら……痛いっ」

 妖怪イチャモンツケが横槍を入れた途端、ガチムチ団長が首根っこを押さえている手に力を込めたらしい。涙目になっている。


 その様子を見ながら、横目で他のガヤ集団を見る。

 福福司祭の後ろには、どうしたらいいのかわからないオロオロした三人ほどの司祭っぽいモブ的男性たち。

 ガチムチ団長の後ろには、成り行きを見守る帯剣した二人の騎士っぽい男性たち。


(ルーナ、“がちむちだんちょう”について行くと良いわ!)


 どうしたものかと考えながら成り行きを見守っていると、女神がそう(のたま)った。


「あー……、女神がガチムチ団長……ええと、王宮に行くように、と言っています」


 全員が、私の言葉にきょとんとした顔をして、こちらに振り向いてくる。

 代表するように、王子が質問してきた。

「“がちむちだんちょう”?とはなんでしょうか」


 私は、すっと手をあげて、人差し指以外を握りしめると、そっとガチムチ団長を指差した。


「そちらの、筋肉だ……男性のことです」


ここまでお読みいただきましてありがとうございますm(_ _)m。



ルーナは団長を”筋肉だるま”と言おうとしてごまかし、”筋肉男性”と答えたわけですが、実際に自動翻訳なんかで伝わってるとすると、翻訳できないところはそのままに聞こえているわけで、例えば英語に翻訳されてるのだとすると(他言語は苦手なので、イロイロ間違えてたらゴメンナサイ)、


「That Muscle DA... man」 

(What's Muscle "DA" man????) 


となると。


まっするだまん。

聞いた人たちはさらなる謎に包まれるんでしょうね、多分。


あと、ルーナは随分とやさぐれていてマナー違反バリバリカマしておりますが、本人判ってやっております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ